第二十六話
なぜか一日のPVがすごいことに……。
見てくださった方。ありがとうございます
「それでね! うちの妹酷いんだよ! 先生はただゲームしてただけだって説明してるのに、ずっと冷めた目で見てくるんだよ! 挙句には少しは休めって没収されたの! 酷くない! ねぇ酷くない!」
「酷くないしそれが常識的な考えだろ!」
レプラに出会った次の日、学校でせんせーの愚痴を延々と聞かされていた。授業中とかテンション低いと思ったらゲームできてなかったのか。
このせんせー毎日深夜までずっとプレイしていたらしい。それでいい加減キレた妹に没収されたと。せんせーの体のことも心配してくれてるしいい妹さんじゃないか。
アニーから聞いた話によると、攻略の前線の方でも話題に上がった事のあるプレイヤーだって話だし、この人一日にどんだけプレイしてたんだ? 一応始めたのは俺と同じ時期だったよな?
「せっかくメイく……辻君が転職して面白いことになってきたのに、先生だけ仲間外れしててずるい!」
「ずるくない。というか、まだ俺もそこまで進んでないですよ。レプラってプレイヤーと仲良くなって防具を手直ししてもらったくらいだし」
「レプラってあのエルフの? その人せんせーの魔法使い装備を作ってくれたプレイヤーだよ」
そうなのか? 確かにむさい男に作ってやる防具はないって言ってたけど、女性プレイヤーについては言ってなかったな。というか、この二人なら物凄い悪ノリしておかしな装備作りそうだ。性格合いそうだし。
「あの人も中々ロマンを分かってくれるプレイヤーだから絶対今面白い事やってそうなのに……。こうなったら強硬手段にでて……やめとこう。あの子に喧嘩で勝てたことないし」
「せんせーって姉の威厳0っすね。とにかくせんせーは一回ちゃんと休んでからプレーした方がいいですよ。じゃ、俺はもう帰りますね」
「あ、ちょっと待って! 娯楽を! 先生にもっと娯楽を頂戴!「斎藤先生。ちょっとお話が」 きょ、教頭先生……」
さらばせんせー。ボスキャラ相手に頑張ってくれ。
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ゲームにログインし、周りを確認する。そこは前回ログアウトしたクロウスの町だった。レプラの仕事場に行ってみると、結構早めの時間にも関わらず既に中にいるようだった。
「こんにちは~」
「いらっしゃいませ。おや?メイ殿ですかな?思ったよりも早かったですな。装備は完成しておりますぞ」
そう言ってレプラは店の奥から俺の装備を取り出してきた。色は野ウサギの素材が中心であることには変わりないため、大きな変化はない。だけど、褐色の色ながらも所々に綺麗な緑の刺繍が施されてオシャレな感じに仕上がっていた。
「マイナス補正がある装備など初めて作りましたが、その分DEX部分を更に増やすことが出来ましたぞ。まさかそんな事が出来るとは思いませんでしたぞ!」
そう言って朗らかに笑うレプラ。期待で胸を弾ませながら渡された装備を全て装備する。
その結果がこれだ。
装備詳細▽
・装備補正:【ウサギ皮の良質な帽子+5】
常時、DEFの値-5
常時、DEXの値+12
・装備補正:【ウサギ皮の良質な服+6】
常時、DEFの値-8
常時、DEXの値+15
・装備補正:【ウサギ皮の良質な外套+7】
常時、DEFの値-10
常時、DEXの値+20
常時、DEFの値を1割減
常時、DEXの値を1割増
・装備補正:【ウサギ皮の良質なズボン+5】
常時、DEFの値-8
常時、AGIの値+17
・装備補正:【ウサギ皮の上質な靴+6】
常時、DEFの値を1割減
常時、AGIの値を1割増
本当にDEFが下がってる……その代わりにDEXやAGIが大分上がっている。物によっては割合で増加するのか? 物凄い効果な気がする。
「本来ウサギの素材ならば、頑張ってもDEFが10を超えるかどうかなのに、あえて下げる事で他のステータスを上昇させる余地が生まれウサギ素材では有り得ない程の効果がでましたぞ。作った本人ですが、未だ信じられませんな。何せ装備をしているのに装備をする前よりも守りが貧弱になっているのですからな!」
確かにそうだな。これで俺のDEFは0以下になったはずだ。この場合ってどういう扱いになるんだろう? ダメージが増えるには変わりないだろうけど……。
「メイ殿。装備の効果を試しに行くのであれば小生も同行して構いませんかな? マイナス装備という面し……他に類が無いであろう装備がどのような成果を出すか興味がありますぞ」
「今面白そうって言いかけてた様な……まぁいいか。それじゃ、試し狩りに行くか」
そう言って二人で仕事場から外に出る。すると外には家族らしき三人の人物がいた。一人は人のよさそうな碧眼の男性。もう一人は優し気な金髪の女性。そして金髪碧眼の小学生くらいの小さな女の子。ん?金髪碧眼って何処かで聞いたことがあるフレーズの様な……。
「おぉ! 【マリー】殿! それにご両親方も! 御機嫌ようですぞ!」
「服屋のお兄ちゃんこんにちは!」
「フォー! マリー殿、こんにちはですぞ。ほら、お菓子はいかがですかな?」
…………ギルティ。
「お巡りさんこっちです!」
「ちょっ! メイ殿!人聞きの悪い事を言わないで欲しいですぞ!」
まさかレプラがロリコンだったとは。ちゃんと通報しないとな。
「ちょっとした騒ぎでしたが、まぁいいですぞ。それで、御三方。今日はどのような要件ですかな? まさか糸の在庫が切れましたかな?」
「いえいえ。そういう事ではないんです。実はレプラさんのお陰でうちの商売がだいぶ儲けましてね。そろそろ我が家の長年の夢だった大きな都市へ引っ越して、そこで商売をしようと思いまして。今日はお別れのご挨拶に」
「娘にも優しくして頂いて、本当にレプラさんに感謝してもしきれません」
順に父親、母親のセリフだ。どうやらレプラの活躍のお陰で引っ越すことになったらしい。マリーちゃんだっけ? この子の為に仕事場まで作ってるのにその努力の結果がこれとは何とも言えないな。レプラも肩を震わせている。
「……ぞ」
「え?」
「来ましたぞ! 夢クエスト最終段階! これをクリアすれば、完全クリアですぞ!」
肩を震わせていると思ったらそんなことを叫び出した。三人は全く驚く様子はない。もしかしてこれいつも通りの通常運転なのか?
「御三方。その引っ越し僭越ながら小生もご同行させていただきたい! 子連れの長旅となれば安全は大事ですぞ。もしも盗賊が出てきたらどうするのですかな? 小生が護衛役となりましょうぞ」
「い、いやしかし、これまであんなに世話になっておいて更に世話になるというのは申し訳が……」
「服屋のお兄ちゃんもお引越しするの? わーいお兄ちゃんと一緒だー!」
父親の方は申し訳ないと遠慮したものの、マリーちゃんの方は既に一緒に行く気のようだ。この懐かれ具合……さっきお菓子がどうのって話してたし、どれだけ貢いだんだ?
「あなた。レプラさんがこう言ってくれているんだし、お願いしたら? レプラさんほどの腕の服屋さんならあの都市の方が為になるんだろうし」
「そうかい? そういうことなら……。レプラさん。護衛をお願いしてもいいですか?」
「もっちろんですぞ! ついでですぞ。メイ殿も一緒に行きましょうぞ」
え? この流れで俺も誘ってくるのか。というか一体どこに引っ越しするんだ? レプラにはクエストが表示されてるのかもしれないけど、蚊帳の外の俺には何が何だか状況がよくつかめない。
俺の様子を察したのかレプラが俺に教えてくれる。
「言っていませんでしたかな? 小生らがこれから向かうのは、生産職と芸能職に栄える巨大商業都市。通称『戦わない都・メイカー』ですぞ!」