第二十一話
もしかしてサブタイ漢数字表記って見にくいですか? 場合によっては変更します。
今回はいつもより 作者の俺ツエー好きがだだ漏れです。
それでも良ければお付き合いください。
アイテム欄から予備の短剣を取り出し、手早く装備し戦闘の再開に備える。
「【突進切り】!」
「【転倒】!」
スキルによる機動力をもって距離を詰めくる大剣の斬撃を、あえて転ぶことによってその軌道から外れる。
【スキル : 成功!】
「そう同じ手を何度も喰らうか、よ?!」
「【ステップ】【セカンド】【サード】、【的確急所】」
【スキル : 成功!】 【連鎖発生!】
【スキル : 成功!】 【連鎖!】
【スキル : 成功!】 【連鎖!】
【スキル : 成功!】 【連鎖!】
すぐさまステップスキルを使って距離を縮め、大剣が振り回しの出来ないくらいに肉薄する。ここまで近づいてしまえば、攻撃できないだろうよ。
クリティカルが発生しやすいように的確急所のスキルを使ってから空いている首元を【ショートスラッシュ】にて斬り付ける!
【スキル : 成功!】 【連鎖!】
【クリティカル : 成功!】 【連鎖!】
スキルで攻撃してクリティカルを出せれば連鎖を稼ぐことが楽になるな。覚えておこう。追撃を狙うがリキャストタイムでスキルを使う事が出来ない。仕方が無いのでスキルを使わずに普通に攻撃する。一回、二回、三回。手数武器の持ち味を活かして続けざまに攻撃する。
【クリティカル : 成功!】 【連鎖!】
【クリティカル : 成功!】 【連鎖!】
【クリティカル : 成功!】 【連鎖!】
なんかクリティカルが良く出るな。的確急所の効果か? ……いや、そういえばDEXが2倍の補正があったな。それも作用してるのか? いや、考えるのは後だ。
「ックソ! 近づくな!」
「逃げんな! 【ダガースロー】!」
攻撃の間合いを取ろうと距離を取るクレクレ君に対して短剣を投げつける。今度はちゃんと当てることが出来た。だけど、毎回手ぶらの状態になるのは危ないな。
ステップを使って落としていた最初の短剣を急いで拾う。
【スキル : 成功!】 【連鎖!】
【クリティカル : 成功!】 【連鎖!】
【スキル : 成功!】 【連鎖!】
【スキル : 成功!】 【連鎖!】
【スキル : 成功!】 【連鎖!】
拾った短剣を装備し直し、急いで接近を試みる。ステップは二つとも今は使えない。余り早くは無いけど今は仕方が無い。
「うっぜぇんだよ! 【パワースラッシュ】!」
「【転倒】! って、うぉっ!?」
恐らく大剣用のスラッシュであろう技を回避するのに転倒を使う。すると、走っている最中に使ったせいか、所謂スライディングの様な転び方をした。走っている時と止まっている時では転び方も違うのか。予想外の好プレーのお陰でまたもや背後を取る。
【スキル : 成功!】 【連鎖!】
「避けて避けて急所を狙う。これが短剣使いの戦い方なんだよ! 【ショートスラッシュ】!」
【スキル : 成功!】 【連鎖!】
【クリティカル : 成功!】 【連鎖!】
そろそろ的確急所が切れる。もう一度かけ直しておいて、ステップをサードまで使い距離を取らせない様にする。これで20連鎖を超えたか? リキャストタイムを考慮すると、使えるスキルが足りない。乱用が出来ない。どうする!?
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観戦側にての会話
「……なぁ、俺の気のせいか? 短剣使いの方なんだか段々と速くなってる気がするんだけど」
「あ、あぁ。俺もそう思う。ステップは俺らも一応持ってるけど、でもそれならたかが一歩分だろ? とっさの回避には結構使えるから知ってるよ。でもアイツ、どう見ても走ってるよな?」
実際に戦っている側は気付いていないのだろうが、外側から見ている人物達の目線では、メイがスキルを使う度、攻撃を当てる度にその行動の速度が上がっている事が分かりやすかった。幸い未だ始まりの町にてまだ未熟なプレイヤー達の間では、速くなっているかどうかが論点になっており、そのタイミングについては注目はいっていない。
「おい、モルガーナ。お前アイツの変化に気付いているか?」
「……うん。メイ君スキルを使う度にちょっとずつ速くなってるよね? それだけじゃない。攻撃を当てる度にも速くなってるっぽい」
だが、古参であるアニーと既に熟練の域にいるモルガーナだけはその変化に気付いていた。いや、それだけではない。メイの戦闘関連のステータスが半減している事を知っている彼らは、大剣の一撃を喰らって既にHPが0になっていることも予想がついていた。あの大剣使いがPKを行おうとしている事も。
それらを知った上で、あえて勝負を止めていない。
何故なら、まだ一撃しか当たっていないのに勝負を止めてしまっては何も知らない他のプレイヤー達からのブーイングが大きくなることは避けられない。故に勝負に介入したくても出来なかったのだ。
そのため降参宣言をしようと慌てていた彼を、ただ指をくわえて見ているだけしかできなかったのだ。
「さっきまではいつ割って入るかって事を考えていたんだが、こうなってしまってはその必要はなさそうだな」
「そうだね。元々大剣使い君の剣を避けれていたメイ君が、もうあの斬撃に慣れてしまった様だし、何よりもステータスが上昇して言うみたいだし。もうあの大剣使い君に勝ち目はないんじゃないかな? メイ君はいったいどんなスキルを手に入れてたんだろ?」
スキル【成功】は、条件を達成する度に全ステータスを+1するスキル。連鎖をすれば更に+1が追加されていく。攻撃を受けたり、一度でもスキルを失敗するとこのプラス補正はリセットされ、30秒間成功しなくてもリセットされるという制限時間があるものの、連鎖さえできれば十分に強力なスキルなのである。
メイは既に20連鎖を超えている。つまり、全てのステータスへ40は追加された状態である。40の上昇をレベルアップのみで行おうとすると特化型ならばレベル20は必要になる。
職業補正を考慮したとしても、大剣使いというある程度のバランスが必要な彼と比べると、既にステータスはメイが勝っているだろう。
二人は冷静に分析しつつも警戒を怠らずにその戦況を見守る。一人は型は違えど同じ剣を扱う友として。一人は大事な生徒でありロマンを追う同士として。
勝負はもう直ぐ終わりを迎える。
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「【ダガースロー】!」
【スキル:成功!】 【連鎖!】
「っくそ! 何なんだよ! 最初は小指の爪程のHP消費も無かったのに、もうHPがヤベェ。……テメェ一体何しやがった! 一体どんなスキルを使ったんだよ!」
なんだ? ヤツの言う通りなら、成功スキルはSTRまで上がるのか? だとしたらこれほど強いスキルは無いだろう。ノーダメージで戦う事が出来たら、際限なく強くなってしまうんだから。
道化師の最初のステータスが低いのはこのスキルがあるからじゃないのか? スロースターターな代わりにうまく立ち回ればもしかしたらドラゴンさえ一撃で倒せるかもな。ドラゴンが出るか知らないけど。
相変わらず乱暴に振り回される大剣に、短剣を添わせ受け流す。
【パリィ:成功!】 【連鎖!】
ダメージを負わなければこれでも成功扱いになるらしい。これなら回避系のスキルが使えない状態でも少し余裕が持てるな。剣を振り切ってがら空きになった胴に短剣を差す。
【クリティカル:成功!】 【連鎖!】
「ま、まってくれ! 俺のHPはもう0だ! これ以上は勘弁してくれ!」
「そこまで! この勝負、えーっと……名前知らないや。大剣使い君の降参により、メイ君の勝ち!」
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「やるじゃねぇか短剣使い! 短剣ってそんな強かったんだな!」
「短剣ってか、この短剣使いの人が強いんだろ。正直俺ほぼノーダメで勝つとか出来ないわ」
「なんにしてもアレだな。お前らポーション寄こせよ」
「「「そういえば賭けてたな!」」」
実際に勝った俺よりもギャラリーの方が盛り上がってるな。いや、いいけど。なんにしても成功のスキルがあんなに強かったなんて驚いた。これならスキルの数を増やせばもっと手っ取り早く連鎖できるんじゃないか?
戦いに負けたクレクレ君はもはや誰も気にかけてない。よく見てみると何かをぶつぶつと喋ってるな。
「ちくしょう。こんな筈じゃねぇ。あいつは今ステータスが半分なんじゃなかったのか? 俺でも勝てると思ったのに。チクショウ、チクショウ」
あ、やっぱコイツ盗み聞きしてたのか。分かった上で勝負を吹っかけて来てたんだな。振り回すだけのプレイヤースキルもそうだけど、木製の大剣使ってるって事はそこまで強くないっぽいし、勝てると踏んでたんだろうな。
実際成功スキルが無かったら十中八九俺が負けてたし、そう思っても仕方が無いか。
「お疲れさん。メイ、お前序盤に一撃貰ってたけど大丈夫だったか?」
「アニー。気付いてたなら助けに入ってくれよ……。ずっとLPゲージの状態で戦ってたよ。おかげで精神的にクッタクタだよ」
「悪いな。あんな序盤じゃ観客が納得しないと思ったんでな。それでもラストにあんな圧勝できるとは思わなかったぞ」
アニーの奴、どうやら気付いた上で放置していたらしい。確かに暴動でも起きたらそれこそ勝負どころじゃなく大変なことになってただろうけど、危険の中にいた身としては納得いかない。
【oh…… time up】
そんな音声が聞こえてきて、なんとなくキャラの操作が重くなった感じがする。たぶん成功の効果が切れたんじゃないだろうか? 最後の成功から大体30秒って所か?
つまり成功1回に付き30秒の制限時間で、そこから成功する度に制限時間がリセットされているんじゃないか?
「メイ君 ナイスファイト! すごかったよ! 戦いが長引くにつれてどんどん速くなっていくんだもの。一体どんなスキルを使ったの? 」
モルガーナが興奮交じりに捲し立てる。教えてもいいけど、ここでは流石に人が多すぎる。人に教えるのは構わないけど、他人が勝手に自分の成果をさも自分の成果の様に使うのはちょっとムカつくからな。
「チクショウ。チクショウが! 認めねぇ! どんなチート使いやがった!」
「な!?」
目を離していたクレクレ君が勝負が終わったにも関わらず襲い掛かってきた!? とっさの事にモルガーナをかばい前に出るが、未だ俺はLPのままだ。やられる! そう思って目を閉じてしまうが一向に剣が降ってくることが無かった。
「どうせこうなるだろうと思ってたぜ。この屑が」
目を開けて見てみるとアニーが大剣を片手剣で受け止めている。木製の大剣といっても、それを片手剣で受け止めるか? この時点で両者のSTRの違いが見れた。周囲のプレイヤー達も何事だとざわついている。
「お前、1週間前から始まりの町にいるな? それも初心者に配られる木剣のままで、だ。戦闘にしてもただひたすら振り回すだけ。お前。この1週間なにやってたんだ?」
「ぎ……チクショウ。なんでびくともしねぇんだよ。この野郎。格下相手にマジになってんじゃねぇぞ!」
「逆切れと来たか。こりゃ救いようがねぇな。おい! 皆見ただろ? コイツは勝負に負けた腹いせに襲い掛かるような奴だぞ? それも思い切り不意打ちでだ。それだけじゃねぇ。何度も降参を宣言しようとしていたメイに対し、宣言させる暇なく攻撃を繰り返してた。これは明確なPK行為じゃねぇのか?」
その言葉によって周囲のプレイヤーの目の色が変わる。始めたばかりのプレイヤーも多いが、アニーの講習会を受けた者達がゲームオーバーはそのままデータの消失に繋がること広めている。その為どのプレイヤー達もPK行為については敏感な様だった。
アニーに押し返され、尻餅をつくクレクレ君。周囲のプレイヤーに注目を浴びて若干挙動不審になっている。
「な、なんだよ。これはただのネトゲだろ? ネトゲにPKは付き物じゃねぇか! 俺がやって何が悪いってんだよ!?」
「自分から認めるとは潔い奴だな。別に悪いとは言わねぇよ。だが、PKされる側だって自分のキャラが係ってるんだよ。自己防衛の為に危ねぇ奴に警戒する事の一体何が悪いってんだ? 殺しにかかってくる奴と敵対しただけの俺らの、いったい何が悪いってんだ?」
「み、認めねぇ。俺は認めねぇからな!」
そう捨て台詞を言い残して慌てて逃げ去っていくクレクレ君。そういや名前聞いてなかったな。いや、どうでもいいけど。と言うか、木剣なのが気になってたけど、単純に彼の技能的な問題だったのか。世の中いるもんだね。上達の遅くてひねくれる奴。
「かわいそうに。あの大剣使い君、もう誰ともパーティー組めないね」
後ろにいたモルガーナがそうつぶやき、可哀想な人を見るような目でみる。確かにこの場の全員を敵に回したと思うけど、そこまで言うか? そう思って周りを見回すと皆メールを弄ってる様に見えた。
一体どうして今メールを……あ、そうか。
「もしかして、この話拡散されてるのか?」
「たぶんね。誰だって自分にとって関心深い話は広めたいものだよ。特に命に関わる事とかね。こういうプレイヤーがPKだったから注意しな。フレンドにそう教えると、フレンドがまたそれをフレンドに拡散していく。ことこのゲームに関してはより一層その傾向が強いんじゃないかな?」
なるほど。人の噂はなんとやらっていうし、確かにこの様子だとまともにパーティープレイなんて出来そうにないな。
「そんなことよりもメイ君。さっきは助かったよ。流石に剣士の間合いじゃどうしようもなかったからね。魔法に関してはなんでも言って! お礼に力になるよ!」
そう言えば、近接戦ばかりで魔法なんて触れてこなかったな。魔法も使える様になったら、いよいよウサギクリアも夢ではないんじゃないか?
クエストクリアまでの道はあと少しだ。
次は火曜日に出すと思います。そろそろ次の町に行きたいところです。
12月19日~誤字修正