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第二十話

自分でやっといて何ですが、まだウサギとは戦いません。どうしてこうなったんでしょう。

それでも良ければお付き合いください。


ジョブ補正▽

職業補正 道化師

1.常時、STR・DEF・INT・AGIの実数値5割減

2.常時DEXの値2倍

3.常時挑発効果



「DEX以外が……半減………?」

「その癖してDEXが倍だと……?  なんだそのふざけたステータス補正は……。それに常時挑発効果? ただでさえ弱体化しているのに更に追い打ちだ? どうしろってんだこれ……」


 せんせー、もといモルガーナの言葉に勢いだけで道化師になったは良いものの、予想を遥かに超えるピーキーな性能だった。DEXを倍にする代償にその他のステータスは全て半減。しかもこの補正だけ実数値扱いだ。増備によって増えたDEF含めての半減だ。

 元々低すぎる火力をどうにかしたいと思ってジョブチェンジしたかったのに状況が更に悪化してしまった。これでは本末転倒じゃないか。ほんと、どうしてこうなった。



「お、落ち着け。おまえレベルだけは恐ろしく高いんだろ? ならまだ間に合う。もう一度転職すればいいだけだ。大丈夫だ。問題ない」

「え、それフラグじゃ……人に言うセリフじゃ無いからいいのかな? あ、えっとメイ君! 落ち込むのはまだ早いよ! そういうデメリットがある職業って大抵はスキルによって強くなれる筈だから! まずはスキル画面を開いてみよ!」


 そうだ。スキルが増えているかもしれないし、まだ落ち込むのは早いな。それに転職が出来るって事は逃げ道があると思えばなんだか落ち着いてきた。。

 ステータスを開くとスキルの数が確かに増えてる。短剣使いから転職しても会得したスキルは減らないのかな? スキルを確認してみる。



スキル数:13

【ショートスラッシュ】

前方に短剣で斬り付ける。範囲・威力共に控えめ。

【的確急所】

発動させると少しの時間クリティカルが発生しやすくなる。

【ステップ】

AGIの値の1.2倍で一歩分移動する事ができる。

【ハイステップ】

AGIの値1.5倍で一歩分移動ができる。

【セカンドステップ】

ステップ系統のスキルの移動歩数を一歩分追加する。

【サードステップ】

ステップ系統のスキルの移動歩数を更にもう一歩追加できる。ただし、セカンドの前に使うと不発。

【ウサギキラー】

ウサギ相手に特攻効果。DEXとSTRの上昇。勲章スキル。

【ダガースロー】

手にする短剣を投げつける。


 ここまではこれまで持っていたスキル群。アクティブスキルは攻撃スキルやステップ系。ウサギキラーは勲章スキルと言っているがつまりパッシブスキルだ。

 では、新たに手に入った5つはどうだろう? 転職しただけで5つというのはホントに期待が持てそうだ。



【愚者の道】

別系統のジョブに転職する事が出来なくなる。STR・DEF・INT・AGIの補正込みの値が、DEXの補正込みの値を超えるまでこのスキルは消えることは無い。

【転倒】

転ぶ。アクティブスキル

【失敗】

使用しているスキルが失敗・不発・中断される。アクティブスキル

【成功】

成功すると調子が良くなる。成功が続くと更に調子付く。

【三流芸人】

余り芸を持たない芸人へ送られる称号。勲章スキル。



「なんじゃこりゃあ!?」


 さっきまでの期待から一気に落とされた。なんだこの使えないスキルは!? 【成功】はまぁいい。だけどそれ以外デメリットや意味不明なスキルばかりじゃないか!? 

 まず【転倒】。なんだ転ぶだけのスキルって。どうやって活用すればいいんだよ!? 【失敗】も使いどころが分からない。スキルの失敗? なんの意味があるんだ? 【三流芸人】に至っては何の効果も無くないか? それでもここまではまだ許せる。


 問題は【愚者の道】。これが一番のデメリットだ。


 転職が出来ない? どういう事だ? これじゃあ転職でやり直しと言う退路が断たれたじゃないか。別系統という事は道化師の上位派生以外という事だよな。つまり短剣使いに戻るには2倍になって異様に増えたDEXを半減されているいずれかのステータスで越えなければいけないのか? ほぼ不可能じゃないか!

 このスキルの結果を二人に見せると案の定同情の目線を送ってくる。


「その……なんだ。これならレベルアップは早まるんだろ? ……がんばれ」

「あの、ほら。まだ成長途上なのかもしれないし、これから覆せるスキルが手に入るかもしれないんだから、ね? 諦めちゃ駄目だよ!」


 つまりはどうしようも無いからこれで頑張れと。……どうしよう。クエストをクリア出来そうな気が全然しない。


「おい。短剣使い」


 これからどうしよう。そんな事を考えていたら、後ろから声をかけられた。振り返るとデカい木剣を背中に背負った男性プレイヤーが立っていた。なんで木剣使ってんだ? そもそもこの人誰だっけ?


「えーと。俺になんか用?」

「大ありだ! 前々からそこの古参の奴におんぶにだっこで気に食わなかったが、今度はエルフの魔法使いだぁ? ふざけんじゃねぇ! なに1人だけ良い思いしてんだ! やっぱりずりぃぞ。不公平だ!」


そんなことを言い出した。こんな事前にも言われて事があるような……思い出した! 

 始めたばかりの頃、ゴブリンを引き連れて周りのプレイヤーに迷惑かけてたクレクレ君か! もう先に進んでるのかと思ってたけど、まだ始まりの町にいたのか。でも人に文句を言って突っかかって来るのは相変わらずの様だ。


「こんな不公平許せねぇ。一週間前もそこの古参とコソコソとなんか話したし、お前ら絶対何かしら美味い話持ってんだろ。公開しろ!」


 コイツもしかしてDEXの話をしていた時聞いてたのか? 幸い内容までは聞こえてないようだけど、ヤな奴に目を付けられてたみたいだな。


「お断りします」

「馬鹿かコイツ。必死になって見つけた情報を簡単にばら撒く奴はそうそういないだろ」

「なっ! ちくしょうコイツら揃いも揃って馬鹿にしやがって!


 正論を言われて頭に血が上ったのか、地団太を踏んで悔しがる。クレクレ君。ある程度常識のある人になら教えてもいいと思うけれど、こういう教えて当たり前とか思っていそうな奴に教えるのはちょっとな。

 


「じゃあ勝負だ! 勝負しやがれ! 俺が勝ったらお前の装備! 全部俺によこしやがれ!」


 クレクレ君はそんな事を言い出した。たぶんこうなったら意地でも勝負しようとするんだろうな。適当に戦って誤魔化したい所だけど、俺のステータスじゃ多分苦戦は免れないだろう。それに俺にメリットが全くない。だから出来ることならどうにか誤魔化したいんだけどどうしようか。


「おっ? なんか面白そうな話してるな。やっちまえよ!」

「そっちの大剣の奴の言うとおりだ! お前らだけエルフプレイヤーと仲良くしてずりぃぞ!」

「あ、俺短剣使いっぽい奴にポーション1個賭けるわ」

「マジで? じゃあ俺は武器の長さ的に大剣の方に1個賭けるかな」


 そうこうしている内に周りのプレイヤー達も注目しだして騒ぎ始めた。賭け事始めた奴もいるっぽい。こうなってしまったら、戦わないと収拾がつかないんじゃないか?


「メイ。仕方が無い。勝負を引き受けろ。このままじゃ収拾がつかねぇ。もしもの時は俺も割って入る」


 アニーが密かにそう告げてくる。確かに、周りのプレイヤー達の大騒ぎを見れば仕方が無いかもしれない。いざとなったらアニーも助けてくれると言っているし、仕方が無いか。


「……分かった。その勝負引き受けよう」

「へっ。分かればいいんだよ!」


 ニヤニヤと笑うクレクレ君。やっぱコイツずっと俺たちの動向を見てたんじゃないか? 俺が今不利な事を知っているみたいに落ち着きがある。兎も角戦ってみないと何とも言えないか。

 ギルドの酒場の中で戦っては迷惑なので、町の広間に移動する。こうやってぞろぞろと大人数で動いていたらとても目立つのか、移動途中で少しギャラリーが増えた気がする。

 

 広間に到着すると、ギャラリーは離れて円の形を作る。俺とクレクレ君だけがその円の真ん中に残った形だ。

 勝負が始まる前に、モルガーナが大きな声で俺らに向かって叫んできた。

 

「二人とも! そうやって勝負するなら、HPゲージを可視化した方がいいよ! もしLPが0になっても事故じゃ済まないからね。メニュー画面にあるオプションで出来る」


 そう言えばフリースペースなんてあったな。ずっと放置していたけどオプションでそう事も出来たのか。言われたとおりに設定を変更すると、視界の上の方に緑色のゲージが見える様になった。これでHPが分かりやすくなったな。なんで最初からやって無かったんだろう。

 

「ルールは相手に降参って言わせるか、LPゲージが出た方が負け。LPが出てるのに攻撃をしたら反則。スキルは使ってもいいとする。ここまではいいね? それじゃあ構えて!」


 なぜかモルガーナが仕切り始めた。まぁルールと審判がないと危険だからな。単に目立ちたいだけかもしれないけど。

 お互い武器を構えて始まりの合図を待つ。俺のステータスじゃ一撃でも貰えば恐らく一撃でHPが持っていかれてしまう。攻撃を喰らわないように気を付けなければいけない。


「それじゃあ。お互いルールを守って……始め!」


「おんどりゃああ!」


 大剣を大振りで振り回し突っ込んでくるクレクレ君。右から左へ振られる斬撃を身を低くすることで回避する。そして、がら空きの背中に向けて短剣を突き刺した。


「っは!」

「っち。ちょこまかすんじゃねぇ!」


 だが、やはり全くダメージになっていないようで、気にせずに振り返る勢いを乗せて大剣を振ってくる。

 距離を取って様子を見る。相手は純粋に戦闘職らしく、俺ではステータス差が大きすぎてダメージをまともに与えられない。


「どうした! 全然喰らってねぇぞ!」


 ひたすらに大剣を振り回してくるクレクレ君。あまり技術面は高くないようだけど、それでも下がったステータスの俺では多分一撃でも危ういんじゃないか?

 相手側の低いプレイヤースキルに助けられて今は何とか避けられてるけど、このままじゃじり貧だ。……どうしよう。


「おい、あの短剣使い動きすごい良くないか? 良くあんな避けられるな」

「確かにそうだな。大剣側が乱暴に振り回してるだけな事を差し引いても、全部キレイに避けるのはキツイだろうに」


 ギャラリー側からそんな話が聞こえてくる。まぁウサギの突進を延々と回避してたからな。こと回避だけなら現実の身体以上に得意になっていると言っても過言ではないと思う。

 しかし、そのギャラリーの一言が耳に入ったのだろう。振りまわすのを止めて大剣を構を構えなおす。


「いい気になってんじゃねぇぞ。そんなに避けるのを自慢したいなら、今度はこれでも避けてみろよ! 【突進斬り】!」


 スキルを発動させたのだろう。これまでよりも一段階速い速度で踏み込んで来て、水平に一閃。確かに速いが、一対一での突進ならホーンラビットの群れと比べると遥かに余裕がある。この場面なら、使い道があるんじゃないか?  


「【転倒】!」


 

 発動と同時に、その場で何かに滑ったように転ぶ。そのおかげで、水平に振られる大剣の軌道から逃れることが出来た。転倒。意外に使えるな。


【スキル : 成功(サクセス)!】


 なんだ? どこからか成功ってアナウンスが聞こえてきたような……。いや、それよりも今はチャンスを無駄に出来ない。

 急いで立ち上がり、クレクレ君の後ろを追う。そしてがら空きの背中に向けて短剣を走らせる。


「【的確急所】、【ショートスラッシュ】!」


【スキル : 成功(サクセス)!】 【連鎖(チェイン)発生(スタート)!】

【クリティカル : 成功(サクセス)!】【連鎖(チェイン)!】 

 

 まただ。たぶんスキルの中にあった【成功】の効果なんだろうけど、こんなアナウンスが流れるなんて初めてだ。オプションを弄ったから? でもHPの表示以外何も弄ってないし。 それに成功とか連鎖とか、いったいどんな効果があるんだ?


 「さっきから効いてねぇんだよ! 【スラッシュ】!」

「なっ!?」


【oh……失敗(ミステイク)


 戦闘中に余計な事考えるもんじゃないね! スキルを終えたまま棒立ちだった俺に大剣の斬撃がヒットしてしまう。それに伴い、今度は失敗というアナウンスが聞こえた。考えるまでも無くまともに攻撃を受けてしまったからだろう。

 攻撃がヒットしたことによって満タンの状態で維持されていた緑色のHPゲージは一気に0になり、赤い色のLPゲージに移り変わった。


「あぁ、ストップ。HPが0になったから、俺の負っ?!「うるせぇうるせぇ! 勝つのは俺だ! 俺の方が強いんだよ!」


 俺の話が聞こえてないのか、既にLPゲージに落ちている俺に斬りかかってきた。このLPゲージが0になったら、データが……いや、俺が死ぬ。例え一週間と言えども愛着のような物が湧いてくるもので、消えてしまうと考えたら、背中にどッと冷や汗が出てきた。慌てつつも大剣を避けつつ降参を告げようとする。だが、


「ちょ、ちょっとタイm「俺の攻撃はそんなに余裕なのかよ!? ならこれならどうだ!」


 乱暴に大剣を振り回しながら、俺の言葉を上書きしてくる。うん。これ、わざとだな。声は大きく張っているけど目元の笑いを押さえられていない。

 俺を消して、その所持品を根こそぎ奪おうって魂胆か? なんにせよ、余裕の無くなった俺にはアニー達にピンチを告げる術がない。喰らったら死ねる。これは絶体絶命のピンチではないだろうか?


 避けているだけでは不利になる一方だ。そっちがその気なら、しゃーない。やってやろうじゃねぇか。


「【ハイステップ】【セカンド】【サード】」

「なっ! ちくしょう。またちょこまかと動き回りやがって!」


【スキル : 成功(サクセス)!】

【スキル : 成功(サクセス)!】 【連鎖(チェイン)発生(スタート)!】

【スキル : 成功(サクセス)!】 【連鎖(チェイン)!】



 どうやらスキルの成功は【ステップ】でもちゃんと発動するらしい。スキルの失敗は多分攻撃系のスキルが守られるとか、そんな感じじゃないだろうか? 


「今度はこっちから行くぞ! 【ダガースロー】!」

「ハッ! そんな見え見えの攻撃喰らう訳がねぇだろ!」


大剣の腹を盾の様に構え、投げられた短剣をガードされた。案の定、キンッと金属音をたてて短剣は弾かれる。


【oh……失敗(ミステイク)


 思った通りだ。これで大体の仕組みはつかめた。つまり、攻撃をできるだけクリティカルで当てつつスキルを使い続ければ、成功の連鎖を繋ぐ事ができるって事か。連鎖しているって事は、何かしらのメリットがあるんだろうな。いや、あってくれないと困る。


 相手の技量は関係ない。今の俺では攻撃を喰らう事は許されない。俺に残された希望はこの成功とか言うスキルだけだ。それならば。


「それで終わりか? この寄生プレイヤーが。お前の攻撃が俺に効かねぇって事はもうバレてんだよ。ぶっ殺してやるから覚悟しやがれ!」


「別に俺はアニーに寄生してプレーなんてしてるつもりはないんだけどな。そっちがその気ならこっちだって覚悟決めるぞこのクレクレ厨のPK野郎!」



今の俺で総力戦をするまでだ。

 











累計のpvが2000を越えたっぽいです。見てくださった方ありがとうございます。


2018年9月18日

誤字修正しました。



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