第十七話
チートとか俺ツエーにあこがれる作者です。かっこいいですよね。できればこれにも反映させたいです。
それでも良ければお付き合い下さい。
「率直に言おう。火力云々の前にムリゲーだと思うんだ」
「いきなり呼び出したかと思ったら唐突だな……。なんの話だ?」
クエストをいったん保留にして(別にいつまでって言われてないし?)町に戻った俺はアニーに相談を持ち掛けてみた。いきなり呼びつけたにも関わらず直ぐに駆けつけてくれたが、話を聞くと呆れた様子を見せる。
「火力が足りないも何もそれはお前が選んだ道だろうが。いつかは絶対になるとは思ってはいたが早すぎじゃないか? 大体そんなクエストは何処からも情報が出てこないぞ。本当にそのクエストムリゲーなのか?」
「なんて言えばいいかな……。1対40くらいのドッチボール? 外野内野含め全方向に敵がいて、その一人一人がボールを投げてくるみたいな。それに当たったらアウトで敵のリーダーを潰さないと終わらないって感じの。むしろ一つ一つに意志のある弾幕ゲー?」
「お前良く生きて帰ってこれたな」
聞かれたから答えたのに、答えたらドン引きされた。解せぬ。
実際自分でも戻ってこれたことに驚いてる。逃げる時にも森から出るまでしつこく追っかけてきたし実際あの後数発突進を喰らってしまった。町に着いた頃にはLPゲージが出てホント命からがらって感じだった。
「と言っても、ホーンラビットだろ? 確かに強かったとは野ウサギと比べれば強いとは思ったが流石にそこまで強さの違いはなかったとは思うんだがなぁ……? まさか特殊クエストだからホーン自体が強化されてる? いやしかし……」
「なぁ。真面目に考えてくれるのはうれしいんだけど、自分の世界から帰ってきてくれないか?」
「……あ? あぁ悪い悪い。火力不足の補いと解決策だよな? そう、だな。単純にもっと強い短剣に変えるってのは……ってこの町じゃこれが限界か。別の武器はどうだ?」
「STRが足りなくて無理だな」
「当然、そっちにステを割り振る気は?」
「無いな」
「だよなぁ……」
これからもDEXを割り振っていくのは確定事項だ。これは曲げられないな。まぁそうやってるからこそどうしようもなくなってアニーを頼ってるわけだが。
「ん~。なら他にはスキルで補うとかだろうが、元のステがそれじゃあ大した違いは出ないだろうしな。それにそこまで大きな差がでる補正のあるスキルなんて……あっ」
目じりに手を添え考え込んでいたアニーが何かを思い出したように前を見上げる。なんだ? なにか思いついたみたいだ。
「メイ、お前今のジョブはなんだ?」
「ジョブ? そういえばずっと短剣使いのままだったな。それが何か……あっ! そうかジョブチェンジ!」
そうだ。俺のジョブは短剣使い。言うなれば序盤の職業だ。そういえば今のままでも充分野ウサギ狩りが出来たからレベルが上がってからジョブチェンジの事とか考えてなかったっけ。上の職業や別の職業になったら何かしらの強化があるのはRPGの基本。確かに状況打破するためにはもってこいの話だ。
「そうと決まればジョブチェンジだ! アニー! どこに行けばジョブチェンジ出来るんだっけ? 確かギルドか神殿って言ってたか?」
「そうだな。ただ、神殿は始まりの町には無いんだ。まぁ中級ジョブまではギルドでも問題ないから大丈夫だ。ギルドに向かうぞ」
~~~
「冒険者ギルドへようこそ! あら? メイさん。どうなさいましたか?」
顔見知りの受付嬢さんが不思議そうな顔でこちらを見てくる。無理もない。依頼を受けたのは今日で、その今日の内にクリアしていないにも関わらずもう一度顔を出しているのだから。保留中にしていることに触れるのはなんとなく負けた感じがするから、簡潔にジョブについて聞くことにする。
「あぁ、すいません。ジョブを変えたいんですけど、ジョブチェンジはどうすればいいですか?」
「ジョブチェンジ…… あぁ! 転職の事ですね? わかりました。直ぐに準備しますのでこちらへどうぞ」
俺の質問に受付嬢さんが朗らかに答えた。ギルド的、いやこの場合はNPC的には、かな? ジョブチェンジでは無く転職の方が正しいらしい。覚えておこ。
受付窓口から移動して奥の部屋へと案内をしてくれるらしく俺を待ってくれている。後ろにいるアニーの方へ振り向くと、手をひらひらとさせていく気はないと意思表示をしている。
「ジョブチェンするときはプレイヤーは一人までしか部屋に入れないんだよ。俺はここで待っているから、なれるジョブを確認して来い」
まず付いて行くこと自体が出来ないらしい。そういう事ならとアニーを置いて受付嬢さんの所に行くことにする。
ギルドの奥、転職部屋に案内された俺は受付嬢さんに促されその中に入っていく。ほぼ個室といった狭い部屋の中には水晶玉の置かれた机と椅子があるだけでとても殺風景だった。なんとなく豪華な印象があったから拍子抜けな気がする。
「それではメイさん。椅子に座り、水晶玉に手を置いてください。この水晶が今のメイさんに適性のあるジョブを示してくれる筈です。」
受付嬢さんの言葉に従い、椅子に座り水晶玉に手を置く。水晶が薄く光ったと思ったら、まるでステータス画面を開いた時の様にウィンドウが開いた。
【可能な転職先一覧】
『中級短剣使い』『軽戦士』『軽剣士』『剣士』『盗賊』『シーフ』『村人』『狩人』『道化師』『ナイフジャグラー』『軽業師』
思っていたよりもたくさん出てきた。それに、戦闘向きのジョブの他にも生産職、というか非戦闘職業がいくつか混ざっている。なんだ村人と道化師って。絶対戦闘ジョブじゃないだろ。
この中から見た感じ、順当に強化するのならば『中級短剣使い』『軽戦士』『軽剣士』の三つが妥当なところだろう。だけど、俺のステータスは、DEX振りの云わば邪道だ。王道の強化先ではSTRの低さが邪魔をするだろう。
では、高いDEX値を活かす方向か? となると、『盗賊』『シーフ』『軽業師』。あとは『狩人』って所か。でも『盗賊』や『シーフ』はどちらかと言えば索敵や鍵開けといった探索系の強みが特徴の筈だ。これではホーンラビットに対する火力不足が解消出来ない。『軽業師』ではたぶんAGIが足りない。
どれを選んだとしてもDEX型ってのが足を引っ張ると思う。やっぱり他のステータスに振らないとこの先も辛いか? でもそっちに割り振ってしまったら今までの努力が無駄になってしまうし……。
「あの、すいません。やっぱり一度ちゃんと考えたいのでジョブチェンジ……じゃなくて、転職をするのは後で良いですか?」
今すぐに決めるのは浅はかな気がする。もっと深く考えた方がいい。なんだか保留続きな俺であるが、受付嬢さんは嫌な顔せずに答えてくれた。
「構いませんよ。自分の職業と言えば冒険者の命を左右する大切な要素ですからね。私もしっかり考えた方がいいと思います」
にこりと微笑む受付嬢さんにもそう言われ、俺は転職部屋を後にした。優柔不断? 笑いたければ笑えばいいさ。
この中に一つチート職業があったりなかったり……。
次回は火曜日に出せたら出します。




