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第116話~・日常編・あと次のプロローグ~

半年近く失踪してたくせに作れたストックはここまでです。

働くって大変なのですね


ダムッダムッ   キュッキュッ


 体育館の中に、ボールが跳ねる音とシューズのゴムのこすれる音が響く。本日の体育の授業はバスケ。絶賛ミニゲーム中である。

 

「沢田! 今日こそ勝―つ!」

「馬鹿め! 今日も購買の焼きそばパンは俺のもんだ!」


 ウチのクラスにはバスケ部主将の沢田とサッカー部のエースの竹中がいるんだけど、体育の時間はこの二人の独壇場だったりする。いつもミニゲームをする時は購買のパンをどっちが奢るか賭けるのだ。白熱する二人に普通のクラスメイト達はついて行くのがやっとだ。


 俺? 帰宅部が運動部の体力についていける訳がない。絶賛足を引っ張り中である。


 幸い今日のチーム分けでは俺はバスケ部主将の沢田のチーム。俺がいる程度のハンデでは不利にはならないだろう。



「朝日! パス!」

「うお!?」


 ボーっとしていたらこっちにパスが来た!? 不味い。沢田に任せていたら大丈夫だろうと気を抜いてたから周りの状況が分からん!


 えっと、あいつとあいつは味方で、攻める方があっちだから……って、竹中が突っ込んできた!?


「フハハハハハ! チャンスだ! 帰宅部の朝日なら簡単にカモれるぜ!」

「しまった! 朝日じゃ竹中の相手はきつい!」


 確かにしんどいけど、その言い方はないんじゃないだろうか。釈然としないもののただ取られるのは俺も悔しい。

 沢田の動きを思い出しつつ、姿勢を低くしてボールを弾ませる。突っ込んでくる竹中の動きに合わせてくるっとターン。そのままドリブルでポストに走る。


「何ぃ!? 朝日に抜かれるとは一生の不覚だ!」

「ちょっと待て一体俺を何だと思ってんだ!?」

「運動部が帰宅部に負ける訳にはいかねぇんだよ!」


 後ろから物凄い速さで竹中が追ってくる。悲しいかな運動能力では逆立ちしても勝てない。

 追いつかれる前にボールを相手のゴールにシュート!


 

「おー。綺麗なフォーム。朝日ってこんなに運動センス良かったっけ?」


 沢田が何か言っているが良く聞こえない。 放たれたボールは残念ながら微妙にずれてリングに当たり、跳ね返る。ありゃ。ちょっとずれて多っぽいな。


「またまたチャンス到来! 今度こそ俺のボーr「させんわ!」 って、また朝日だとぅ!?」


 跳ね返ったボールを素早くジャンプしてリカバリー。さっきの感触から修正は……これくらいか? もう一回ボールを相手のゴールにシュー!


 今度は綺麗にリングを通り、見事俺達のチームに得点が入る。



「よっしゃ成功!」 

「朝日ナイスシュー! お前元々運動音痴ではなかったけど、いつの間にかめっちゃバスケうまくなってんじゃん! バスケ部入ろうぜ!」

「サンキュ。折角だけど部活はいいや。ゲームする時間減るし」

「そうか。折角いいセンスしてるのに勿体ないな。入りたくなったらいつでもいえよ!」


 沢田がハイタッチしながら勧誘してきた。しかし俺の優先順位は1にゲーム。部活で青春の汗を流すのはちょっと間に合っている。というか運動キツイ。今ももう心臓バクバクだし。

 

 そういってると後ろからズシリと重みが! 竹中がおぶさってきた。シンプルに重い!


「ちくしょー! 思ったよりやるな朝日! でも次はやられねぇぞ!」


 それだけいうとあっさり離れてコートから去っていく。うちのチームが五点先取したから竹中のチームが別のチームとローテーションで入れ替わるのだ。清々しいというかなんというか……運動部のノリしんどい……。


「でも、実際の話マジで朝日うまくなったよな。こう……テクくなった的な? 何か部活に入ったのか?」

「いや、別に帰宅部のまま。でも、そんなに上手くなったか?」


 何気なく指先にボールを乗せてくるくる回してみる。お? 今までうまく出来なかったけど今日はうまくいく。確かにテクくなったかもしれない。

 でも別にバスケの練習なんてしてないし……いや、待てよ? 


 ボール弄りならサーカス団で嫌って程習ってきたな。ボール違いだけど。まさか、ゲームでの練習の成果が今実を結んだとか? まさかね。


「よっしゃ! 早くローテ回して竹中とやんぞ! 目指せバスケ部期待のルーキー!」

「いや入部しないって」



その後ミニゲームは沢田にやたらとパスを回され、ローテで回ってきた竹中には滅茶苦茶狙われるのだった。不思議な事にボールをさばいたり小手先の小細工だけなら今日はすごく調子がいいせいで、成功してどんどん点を稼げている。そのせいか運動部二人も熱くなっていくし、なんたるマッチポンプだろう。おかげで帰宅部のもやしのような体力では後半はバテバテだ。

 チャイムが鳴るころを待つまでも無く、十数分で小鹿のように足が震える始末だ。


「朝日……もう少し体力つけようぜ」

「バスケ部への入部には体力が課題だな……」



 煩い。よけいなお世話だ。








帰ってきました俺の部活! SSO!


 ここならば体育のあとの疲労も既に始まっている筋肉痛もいったん感じない! 快適な身体だ! 運動部なんて目じゃないぜ!


「と、テンション高めにログインしたはいいけど……なんだこの空気感は?」


 ログインした場所はスタンピードイベントの舞台となったルクスルナ星国の街中。あのスタンピードのボスである腐要竜の討伐報酬をを確認をしようと思ったんだけどなんだか様子がおかしい。イベントが終わった後にも関わらず、プレイヤー達の間に流れる雰囲気がどこかおかしい。

 イライラした様子のプレイヤーや、どこか浮足立ったプレイヤー。また、何かを言い争っている様子の、生産職と戦闘職のプレイヤー。何かに怯えるようにビクビクしている人もいる。


 明らかにカオスな状況だ。ログアウトする前もポーションの代金を踏み倒そうとしているプレイヤーと生産職達が言い合いになっていたけど、まさかまだあのやり取りが続いているのだろうか。


 気になるので近くを通りかかったプレイヤーに話し掛けてみる。


「すいません。ログインしてみたら様子がおかしいようですけど……何かあったんですか?」

「あったも何も、カオスだよカオス。公式から新たにアナウンスが流れたんだよ。どうやら新しくダンジョンが追加されたらしくてな。噂だとダンジョンを最初に突破したプレイヤーには超高性能のアイテムが贈られるらしい。攻略組は魔族領到達を延期して件のダンジョンがどこにあるのか探索を始めようとしたほどだ」

「へぇ。強い武器が手に入るならこの空気も納得……って、ん? 始めようとした?」


 プレイヤーの言葉に少し引っ掛かりを感じて首を傾げる。まるでまだ探索を始めてないみたいな言い方だ。

 攻略組のクランマスターであるマーリンは筋金入りの効率厨だったはず。強い武器が手に入るなら本腰を入れて探しそうなものだ。

 それに、ダンジョンが増えたってだけならこんなにプレイヤーの皆のテンションがバラバラなのはおかしい。


「そう。攻略組はまだ探索を始めていない。むしろ始めれないアクシデントが起きたって所だな」

「アクシデント?」

「ついにこのゲームにも出たんだよ。PKが」



 後に戦非戦争ともいわれる長い争い。その争いはここから始まるのだった。

 

 




 


次回からPK編のスタートです。

土曜に投稿したい(願望)

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― 新着の感想 ―
久しぶりに最初から読み返してきました。あなたが書く話が読みたいのです。たまに、極々稀にでもいいので更新待ってますね。
[一言] 続き、いつまでも待ってますので、どうか終わらせないで…
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