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第114話~スタンピード編~

コナン君を見ながら軽い気持ちで名前をつけましたが、似たような名前のキャラが別にいた事を後になって気付きました。

分かりにくいようでしたら後で修正いたします。


「やったか!?」

「ちょっとアニーちゃん? その言葉は不吉に過ぎるからやめてくれないかしら。割と本気で怒るわよ?」

「わ、悪い……。でもHPバー削り切ったし、流石に大丈夫だろ?」

「相手はアンデッドだよ? 聖魔法以外では倒せませんと言われても不思議じゃないよ?」

「ルナもいたから心配いらねーです!」



【スタンピードの原因が討伐されました。これにより、スタンピードイベントはクリアとなります。繰り返します__】


 倒せたか否か。その議論で姦しくしている所に響くアナウンス。それはイベントクリアを告げると共に俺達があの腐要竜を倒したと言う証明だった。


 皆そろってお互いの顔を見合わせる。そして一呼吸おいてコクリと頷きあい、大きく喜びを叫んだ。


「「「よっしゃー!」」」


 前みたいに連携に失敗したり、一人のワンマンプレイで戦ったりじゃない。今度こそは皆でボスを倒せた。パーティで倒せたんだ。何だかんだで長くつるんできたメンツだ。皆で戦えたのは素直に嬉しい。


「経験値を見てみろよ! すげぇレベルが上がってるぞ!」

「今度は何も後ろめたくないよ! ちょーたのしー!」

「ルナも! ルナもちょー活躍したです! ちょー守ったです!」

「あらあら。ルナちゃんの防御力は流石だったはハイ。イェーイ!」

「イェーイ!」


 ルナは嬉しそうにサオリとハイタッチをしている。攻撃力と防御力の凸凹のコンビで大ダメージを稼いでくれていたからな。正にナイスコンビだったと言えるだろう。

 

「……私達も」「頑張った」


 リーノとルーノが俺の服の裾をつまんでそう言ってきた。都市の方を任せていたのにこっちに急に呼び出したりで色々負担かけちゃったからな。感謝の意を込めて二人の頭を撫でる。細くてキメが細かい二人の髪は撫でる側もなんだか気持ちがいい。

 だけど、2人の顔はなんだか複雑そうだ。


「私達も、ハイタッチが良かったけど……」「これは、これで……」


 あれ!? あ、あー! ハイタッチね!? ルナ達がハイタッチしてるのを見て羨ましかったのね。なんだか急に気恥ずかしくなって両手を二人に出してハイタッチする。

 撫でるのを辞めると何故かまた微妙そうな顔をされたけど。どっちなんだ……


【それでは今回のイベントの功労者の発表をいたします】


「お? まだアナウンスが続いているな。功労者……俺達が呼ばれるのは確実だろうな」

「そうだよ! なんてったってスタンピードイベントのボスを倒したんだから! 一番の功績は貰ったよ!」


 確かにボスを倒したのは俺達のパーティーだからな。まず呼ばれるのは間違いない。って、地雷として戦闘職組から疎まれつつある俺も名前呼ばれたらヤバくないか!?

 落ち着け……地雷の低レベルプレイヤーとは広く知られていても名前まではあまり知られていないはず。しばらく魔族領にでも逃げていれば忘れて貰えるだろう。



 




【最高火力賞:プレイヤー【サオリ】。最大ダメージ1863を記録しました】

【最高討伐数賞:プレイヤー【モルガーナ・サイト・マーリン】。討伐数49638を記録しました】

【最大防御賞:プレイヤー【ルナ】。ノーダメージ防御率98%を記録しました】

【最高防衛賞:プレイヤー【バロン】。都市防衛に対する多大なる貢献を記録しました】

【最高回避賞:プレイヤー【バロン】。攻撃回避率100%を記録しました】

【最高支援賞:プレイヤー【ヒュギーレイア】。ポーション系統アイテム作成数36582を記録しました】

【最高売買賞:プレイヤー【トードリ】。イベント中、累計84,044,664ガメツ相当の売買を記録しました】


 

「何気に知っている名前が続いてるわね。それに最高火力賞ね……結構うれしいわね」

「ムフフフフ……最 高 討 伐 者! 素晴らしい! すごくない!? すごくないかな!」

「初日から広範囲攻撃連打してたし妥当なんじゃ……」

「いや、むしろ引くだろ」

「その喧嘩買うよアニー!」


 何だかんだで知っている名前が続いて行く。やっぱりと言うべきか、特化したり一芸に秀でている人の方が色々と記録を残しやすいのだろうか。

 モルガーナの討伐数もおかしいけれど、支援に回っていた非戦闘職組も中々におかしい。なんだ八千万円相当の売買って……それにポーションの作成数……スキルで時短できるのだと考えても普通に想像できない数だ。それだけ作っているって事は、それだけプレイヤー達が消費しているってことだから……うん。そりゃ荒むわ。


 で、そろそろボス討伐者のアナウンスが来てもいい頃だと思うんだけど___

 

【最後にスタンピードボス討伐者:プレイヤー【アニー】、【サオリ】、【メイ】、【ルナ】【モルガーナ・サイト・マーリン】【ナイトバロン】。以上のプレイヤーにはクリア報酬と別途に称号と景品を配布いたします】


「「「えっ!?」」」


 最後のアナウンスを聞いて喜び以前に驚愕を露わにする。


この場にいる筈なのは俺、アニー、ルナ、モルガーナ、サオリの五人の筈だ。にもかかわらずナイトバロンなる人物が参加した事になっている。って事は、何処かにハイドスキルで潜伏していた!?

 思わず、今日のイベント開始前のあの出来事を思い出す。モルガーナに向けて攻撃を仕掛けた弓矢使い……いや、プレイヤーキラー。

 まさか、ボス戦に混じってPKをする隙を狙っていたとでも言うのだろうか。


 だとすればマズい。敵の姿が分からない以上、何処から攻撃されるか全く察知できない。

 五人で背中合わせになって周囲を警戒する。しかし、辺りに人の影など見えない。

 いや、以前の情報屋プレイヤーのガムのようなハイド系のスキルを使っているのか? だとしたら__

 俺はトランプを辺り一面ににまき散らし、片っ端からスキル【フラッシュポーカー】を発動させる。


「うぉっ!? なんだこれはァ!?」


 驚いた拍子にハイドスキルが途切れたのか、プレイヤーキラーが俺達の前に現れる。それはスタンピード攻略会議にて俺を地雷として嘲笑ったあの鑑定厨だった。

 鑑定厨の姿を見て、アニー達は怒りはあらわにする。


「テメェは鑑定厨!? まさか、ずっと俺らの後を付けて来ていたのか!?」

「ストーキングとは感心しないわね。一体何のつもりかしら?」

「ヘッ。バレちまったら仕方がねェ。その通りさァ。そこの地雷野郎のチートの正体を知る為になァ!」

「お、俺がチートだと?」


 鑑定厨、もといナイトバロンは俺を指さしそう叫ぶ。確かに道化師系統のスキルは強力でおかしなスキルが多い。でもその分制約も多いくてピーキーだ。チートといわれる程便利な物じゃない。

 

「とぼけるなよォ? テメェがあのフードのアサシンと同一人物ってのは割れてんだァ。最初、お前を鑑定したときは攻撃力・防御力・速度、全てにおいて脅威度はなかった。だが、あの時、あの瞬間、お前の鑑定結果は危険度マックスのブラックカラーだった。確かにステータスを強化するスキルは存在する。だが、ゴミクズが最強クラスになるなんてあり得ねェ。とすれば、答えは1つだァ。お前のスキルがチート級に強ぇ! 一体、お前の職業はなんダ!? 保有スキルは?! 取得条件はなんダ!? 洗いざらい全て教えロ!」


 ギラギラと目を光らせてナイトバロンはそう叫ぶ。俺の変装がばれていたらしい。だとしても、俺のジョブやスキルを知りたいがためだけにここまでハイドスキルでついてきたりするか? スタンピードイベント中で至る所にモンスターがいるなか、それだけの為に?


「い、いくらなんでもあり得ないだろ……下手をすれば自分も戦闘に巻き込まれる可能性だってあるんだぞ! それで得られるメリットなんて……」

「情報!」


 ナイトバロンは一言。そう断言した。絶対の自信が感じられる程の確固たる一言だった。


「このゲームではステータス情報、スキル情報、エリア情報、ドロップ情報、装備情報……全ての情報はネットをどれだけ調べてもヒットしねェ。それどころかゲーム外ではこのゲームの情報一切は発信することすら出来ねぇ。だからプレイヤー各々で情報を調べなければ分からなぇ訳だァ。ならば情報を制した者がこのゲームにおいて覇者となれる!

情報があれば金になる。情報があれば権力となる。情報があれば力となる。情報さえあれば新たなる情報が手に入り全てが思いのままだ。 その中でもテメェのスキルはぶっ壊れている! 敵の攻撃の無効化! 瞬間移動! NPCの召喚! この俺でさえ知り得ない情報ばかりだ。テメェのスキル情報はどれをとっても現環境に革命を起こせる! よこせェ! その情報をぉ!」

「ふ、ふざけてるのかな!? スキルの取得情報なんて個々人の努力の結果だよ! それを他のプレイヤーに教えるかどうかは取得者の自由! それの強要はネチケットを大きく逸脱しているよ!」

「知ったこっちゃねぇなァ! お前はほんのちょぉっとお話をするだけ。他のプレイヤー共は強くなって幸せになれる。俺は愉悦に浸れ幸せになれる。どこからどう見てもwinーwinじゃねェカ」

「アナタね……それじゃあ一方的にメイちゃんが搾取されてるじゃない! 何処がウィンウィンよ! その性根、アタシが叩きのめして__」


「いいのかァ? 俺は善良な一般プレイヤーだァ。お前らから攻撃したらたちまちお前らはレッドプレイヤー……プレイヤーキラーの仲間入りダァ! そこに情報屋である俺が多少煽ってやれば……有用な情報やボス戦の美味しい所を持ってくズルい奴らだよなァ?」


 出しかけていた拳をぐぅっと握りしめるサオリ。なまじ要竜も、今回のイベントボスも倒したのがメイ達パーティーであるだけに不利になるのは想像に難しくない。

 そうなってしまえば、元々地雷として認識されている俺は今以上にマズい立場に立たされるだろう。普通のゲームプレイに支障が出てしまう。


「どうした? 何なら俺の推測情報をバラまいても良いんだゾォ? ま、あくまでも推測だから、その過程である事ない事も混じってしまうかもしれねぇなァ?」


 おっと。もはやこっちが手を出そうと出さなかろうと恐喝してくるつもりのようだ。あくまでもこっちの情報を聞き出すつもりのようだ。

 確かに情報を広める事によって多くのプレイヤーが本当に幸せになれるならいいだろう。でも、コイツの場合その行動理念はあくまでも自分の愉悦の為だ。その過程で他人がどうなろうと関係ないんだろう。

 


 なら、俺もちょっとくらい自分の為に動いても良いよなぁ?



「【スポットライト】」

「ん? なんだぁ? この光」


 指パッチンと共にナイトバロンの頭上から光が灯る。戦闘スキルではない、非戦闘職のドマイナースキルだからだろう。鑑定厨という異名を持つ情報屋である奴でさえこのスキルを知らないようで、訝し気に光を見ている。


「そんなに俺のスキルやジョブが知りたいんだったら教えてやるよ。俺のジョブの名前は道化師。DEXを大幅に強化する代わりに他のステータスが大きく減少する」

「メ、メイ!?」


 いきなり俺が自身のステータスを話始めたからかアニー達が驚きの声を上げる。その驚きにはこんな奴に教えちゃいけないという含みがあるけど、俺は止めない。


「DEXの代わりに他ステが減少? そんなのゴミじゃねぇか。詰まらねぇ嘘は……いや、待てよ? DEX以外が低いって事は俺の鑑定にも引っかからない。てことはお前を鑑定しても全ての項目において危険度0だったことの説明が付く。……なる程。嘘ではねぇのか。だが、あのスタンピード時の全項目危険度マックスだったあの状態はなんだ?」

「それは【成功】というスキルのせいだ。効果はスキル、クリティカル、パリィ__何かしら成功したときに全てのステータスが強化されるというスキルだ。複数回成功が発動すれば、連鎖的にステータスは強化されていく」

「そんなに軽い発動条件の癖には上限がないのか? 死ぬほどぶっ壊れじゃねぇか! 攻略組が全員そのスキルを会得できれば、戦力の強化は確実! いや、強化どころか全てを過去にする革命に等しい! そんな情報を持ち込んだとなれば、俺は一躍英雄だ!」


 何がそんなに嬉しいのか高らかに笑いだす。確かに成功スキルは強い。それを情報屋として扱う事が出来れば1財産と共に英雄になれる事間違いなしだろう。伝える事が出来れば。


「ついでにもう一つ。今お前に使ったスキルは【スポットライト】。効果は単純明快で対象を目立たせる。たったそれだけの効果だ。……さて、モンスターがうようよいるアクティブエリア。それも魔の森最奥なんかで目立ったらどうなるのかな?」

「はぁ? んなもんハイドスキルを使っちまえば……あ?」


 恐らくハイドスキルを使おうとしているのだろう。だけど、それは成功しない。当たり前の話だ。脚光を浴びたショーの主役がわざわざ裏方に下がってしまっては意味がないだろう。

 スポットライトに当たっている間はハイディング系統のスキルは全て発動しなくなり、注目を大いに集める。つまり、今ナイトバロンは彼の言う英雄しゅやくになったわけだ。良かったな。望みが叶ったぞ。

 

 そうこうしているうちに周囲にリポップしたモンスター達が集まってくる。俺らもいるにも関わらずモンスター達の視線はナイトバロンに集まっている。



「クソックソッ! なんでハイドが発動しねぇ!? テメェ! これは立派なプレイヤーキラーだぞ! 早くスキルを解け!」

「なんでだ? 俺は“非”戦闘職のスキルを使っただけで、俺は手どころか指一本も出していない」

「馬鹿がっ。これはMPKっていう立派なPKで……って、んな事言ってる場合じゃねぇ!」


 そう言うと焦ったように逃げ出した。だけど、スポットライトの効果時間は終わっていないため、光はナイトバロンを追いかける。それに釣られる様にモンスター達も追っていってしまった。

 


 さて、これ以上やってしまっては本当にレッドになってしまうから、俺が手を出せるのはここまで。これで懲りてくれるか、懲りずにスキルを拡散するかは奴次第。生き残れるかも奴次第。まぁ頑張ってくれ。


 

「メ、メイ君。……もしかして怒ってるのかな?」

「大人しい子だと思ってたけど怒ると結構過激なのね……」

「つうか、普段怒らない奴を怒らせるとやばいってマジなのな……」



 あれ? 皆引いてる? というかドン引き? ……そうだよ! よく考えたらこれ、あいつのプレイヤーデータが消えちゃうかもしれないじゃん! 

 や、やりすぎた……



情報屋ナイトバロンと攻略組のバロンはとくに関係性や接点はありません。分かりにくければ申し訳ありません。

ナイトバロンは後にもう少しだけ登場します。


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