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第104話 ~スタンピード編~


【スタンピード:ルナ&マオの場合】


「ひぅ! な、何だか寒気がしやがるです」

「大丈夫かい? 風邪をひいてしまったのなら大変だ。今日はもう休んだ方がいいんじゃないかな」

「問題ねーです! もう収まったです」


 レプラが一人ニヤついているのと同時期、何か良からぬ気配を感じルナが大きく肩を震わせる。

 マオは心配するようにルナへログアウトを進めるが、ルナは寒気は一瞬だったのでログアウトしなかった。

 

「そうかい? それならいいんだけど……何処か苦しかったり痛かったりしたら、すぐにおじさんに言うんだよ?」

「大丈夫です! マオのおっちゃんは心配しょーです! それに、ゆうれい以外と戦うのは久しぶりだからちょーやる気です!」


 意気込みを表すかのように、十字架を握る力を強くした。なにせ、ルナはレベリングの為に長い間死霊が出現するダンジョンにこもっていたのだ。


 ゴブリンやウルフと言った生きたモンスターを、こんなに大量の数と戦うとなればテンションも上がらないはずもない。

 まるで遊園地へ行くかの如く楽し気なルナを見て、マオは顔を綻ばせた。



「ちょ、ちょっとそこの子連れのおっさん! あんたそこのお嬢ちゃんの保護者か? なら早く後ろに下がるんだ! ここは結構あぶねぇぞ!」


 二人の近くにいた近接プレイヤーの一人が声を上げて二人に忠告をする。他人から見れば、親子のような二人は間違って迷い込んだエンジョイ勢にしか見えない。

 

 話し掛けたプレイヤーからすれば自分でも持て余す難易度のスタンピードに紛れ込んでしまえば二人がゲームオーバーになってしまうとでも思ったのだろう。

 ルナの姿は白を基調とした、フリルがたくさんついた修道服でどうみても見た目重視のコスプレにしか見えない。


 近接の男性プレイヤーはどうにかして二人を逃がそうと、少し無理をして周囲のモンスターの注意を引く。


「てめぇら! 俺が相手だ! っく、この!」


 だが、元々持て余しかけていたのを更にヘイトを稼いだので、対応できない数のモンスターが男性に集まってしまう。


 手に付けた片手盾でなんとかいなしてはいるが、どんどん彼のHPは減っていく。


「大丈夫かい? ちょっと手を貸そうか?」

「大丈夫だおっさん! それより早く娘さん連れて早く逃げな!」

「でも君結構辛そうだし……【魔王の一撃:小手調べ(マズハシネ)】」


 マオさんが使ったのは魔王専用スキルで最も弱い攻撃であり、ただ前方の敵に対しジャブを入れる所謂テレフォンパンチだ。本来は牽制や様子見で使うようなスキルだが、使い手は種族【魔王】の逸材だ。


 全ステータス10倍の超高ステータスから放たれるテレフォンパンチによって、男性の周囲に集まっていたゴブリンやウルフたちはひとまとめに吹き飛んでいった。


「「「……は?」」」

「おわー! やっぱマオのおっちゃんツエーです!」

「ふふ。ありがとうルナちゃん。じゃあ他の場所に行ってみようか」

「あ、でもちょっと待ってほしいです」


 そう言ったルナは口をあんぐりと開けたプレイヤー達の元へ寄ると、ヒールの魔法をかけて回る。

 DEF極振りと言ってもルナのジョブは【守護僧侶】であり、タンクでありつつもヒーラーでもある。また、魔族という種族は本来全体的に高水準のステータスで中でも魔法に秀でているという種族だ。

 MPにもINTにも無振りと言えどもヒール程度は難なくこなせる。


「これでにーちゃん達もまだ戦えるな! です!」

 

 にっこりと笑うと、そのままルナはマオの元へと駆けて行った。ヒールをかけられたプレイヤー達は数秒ボーっとしていたがふと一言。


「………天使だ。天使がいる」

「褐色の魔族僧侶幼女で白のフリフリ修道服……なんて属性てんこ盛りなんだ……」

「俺もうロリコンでいいや」


 一人目を皮切りに全員ルナに堕とされていた。一瞬で信者大量会得である。





「そろそろルナも戦いて―です!」

「でもたくさんいるよ? 危なくないかい?」

「問題ねーです! ていうかルナだって戦えるです!」


 ヒールをかけつつフィールドをうろうろする二人だったが、ふとルナがそんな事をつぶやいた。過保護気味であるマオは心配するが、そんな心配など気にせずルナは意気ごむ。

 元々ルナが危険にならない様に向かってくる敵はマオがすべて対処していたのだが、それではルナ的には消化不良だったらしい。


「ギャギャギャギャ!」

「来やがったです! ルナに全部任せるです! 」 

「危なくなったらすぐにおじさんに言うんだよ? 本当に言うんだよ?」


 マオの心配もなんのその。向かってくるゴブリン達に向けて十字架を盾のように構える。


 ゴブリン達は棍棒や剣を振るいルナに攻撃を繰り返すが、十字架に阻まれて一切のダメージも与えることはできない。

 

 既に10や20を超える攻撃を喰らっているが、全てダメージは0。全くのノーダメージだ。


 元々ルナはステータスポイントの全てをDEFに割り振ったDEF極振り型のステータスビルドだ。

 メイの手によってレベルは飛躍的に高まっている為、そのDEFの高さは右に出る者はいないレベルまで高まっている。



 だがしかし、ダメージが1と0では大きな壁がある。


 攻略組のタンクの面々でもガチガチに装備とスキルで固めたとしてもダメージを0にすることはできない。計算上ダメージを0にするというのはそれくらい難易度が高い。


 だからこそ、タンクの面々はDEFだけでなくHPにも割り振りリスクを避ける。



 ルナもこれまでは十字架の死霊特防効果込みで、あのダンジョンだけという限定的な条件の元無敵であった。しかし、ダンジョンの外に出てしまえば途端にその無敵の力も失われてしまう。


 特防効果がなくなってしまえば、少なくとも1ダメージは入ってしまうのだ。初期から変わらないHPでは受けられる攻撃の回数はたかが知れている。だからルナは攻略組のタンクから地雷なのだ。あの装備を手にするまでは。


「にゃっはー! この装備やべぇーです! フリフリで可愛いし滅茶苦茶かたいです!」


 レプラの作成したルナ専用の装備【清廉なる修道服シリーズ】。従来のプレイヤーの2倍、3倍。下手をすればそれ以上に強力な装備効果なのだ。

 元々高かったDEFに加算、乗算の双方から超高水準の補正をかけるだけでなく、ダメージカットにリジェネ効果まであるのだ。まさに要塞である。


 ルナの要塞たる由縁はそれだけではない。


 DEXが最も高いメイの有している【鬼才】。STRが最も高いサオリの有している【金剛力】。INTが最も高いモルガーナが有している【叡智】。

 それと同様に、最もステータスが高いプレイヤーが得られる特殊なスキル。そのDEF版。


 その名も【金剛体】。


 サオリの有する【金剛力】と名前が似ているのは攻撃と防御の相対する役割を担うステータスである為だ。金剛力がSTRを極振りにした最も優れた肉体を示すのであるならば、DEF最も頑強な肉体を示す称号である。

 その為、その効果は金剛力のように様々な恩恵を得られるのではなく、ただただ防御に特化した効果だ。


 故に、モンスターの種族を問わず、ルナへダメージを与えられる存在は皆無と化したわけである。


 攻撃し続けていたゴブリン達はその行動が徒労に終わり疲れたように肩で息をする。その隙を逃すことなくルナは十字架を振るいゴブリン達に思い切り殴りつけた。


 勿論ルナのSTR値では与えられるダメージは雀の涙だ。むしろ、他のゴブリン達やウルフといったモンスター達もルナに気付き群がってくる。勿論、どれだけ群れようとルナにダメージは通らないのだが。


「っく、この! ごちゃごちゃうぜーです! こいつら多すぎです!」

「やっぱり僕も手を出すよ。【魔王の一撃:肩慣らし(アソンデヤロウ)】」


 マオが拳を突き出すと拳圧によってルナに纏わりついていたモンスターの群れはひとまとめに吹き飛ばされた。ルナも巻き込まれそうなものだが、DEF上昇によってノックバック耐性も大きく上昇している為被害は一切ない。


「おっちゃん! 助かったです! この調子でもっとぶっ飛ばすです!」

「う~ん……できればもっと安全に行った方が良いと思うけど……それじゃ行ってみようか」


 その後もルナとマオは周囲のプレイヤーをサポートしつつモンスターを倒してまわる。ただし、ヒールをかけるルナに対してマオはルナが無事ならそれでいいので周囲のプレイヤーも巻き込んでいたりする。






余談 掲示板より抜粋


 

459:名もなき冒険者

  聞いてくれ! 例の魔族褐色ロリっ娘に会った!


461:名もなき冒険者

 何!?


462:名もなき冒険者

 ガタッ!


463:名もなき冒険者

 ガタガタッ!


464:名もなき冒険者

 詳しく聞こうか!


465:名もなき冒険者

 褐色ロリっ娘はヒーラーの模様。ロリっ娘がゴブリンに囲まれてて、助けに入ったら逆に俺がピンチになっちゃってさ。回復して貰ったw


466:名もなき冒険者

 ミイラ取りがミイラになったのかww

 それは置いといてヒーラーか。珍しいな。一人じゃレベリングが難しいから純粋なヒーラーは数が少ないと思ったけど


467:名もなき冒険者

 って思うじゃん? 俺見た。ロリっ子はタンクもできる


468:名もなき冒険者

 は?


469:名もなき冒険者

 背負ってた十字架を盾にして十を超えるモンスターに囲まれて耐えてた。しかも無傷


470:名もなき冒険者

 >>469 ちょっと待って理解が追い付かない


471:名もなき冒険者

 普通はヒーラーとタンクは両立できない。ステータスポイント足らなすぎる。中途半端な地雷になって終わり。それが無傷? どういう事?


472:名もなき冒険者

 タンクがメインってことじゃない? 回復はオマケ程度でさ


473:名もなき冒険者

 >>472 それはない。俺、結構喰らってたけどちゃんと全回復したし。タンクから転職して剣士になったから割とHP高いからヒール力は高いとしか言えない


474:名もなき冒険者

 という事は魔族種族の高ステータス? それとも純粋にレベルが高いのか?


475:名もなき冒険者

 だとしてもノーダメージに抑えるなんてできるの? 少なくても俺はできない


476:名もなき冒険者

 つまりロリっ娘は強くてなおかつ天使ってことか


477:名もなき冒険者

 >>476 そうだな


478:名もなき冒険者

 >>476 激しく同意


479:名もなき冒険者

 >>476 ぅゎょぅι゛ょっょぃ はっきりわかんだね


480:名もなき冒険者

 これからも保護者(魔王)とロリっ娘を見守ってくか


481:名もなき冒険者

 おう


482:名もなき冒険者

 了解


483:

 (`・ω・´)ゞラジャ



 

 一部の間で二人は人気になっていた。




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