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第九十四話 ~スタンピード編~

初めての掲示板っぽいものの描写。むつかしい。


 スタンピード当日。ログインした俺はミツバとの待ち合わせ場所にて待機していた。ミツバ曰く道場は謹慎中だから軽く体を動かしてから来るらしい。待っている間に鑑定対策の確認しておくか。


 鑑定スキルの対策になるものを調べてみたが、対になる隠蔽スキルは鑑定厨の上位鑑定を防げる上位隠蔽までに上げるには時間が足りなかった。

 そこで、俺が見つけたのはこれだ。


・詐称の仮面

 自身の身分を隠すための仮面。装備者の名前・種族・職業を鑑定から守る。(上位鑑定まで有効)


・隠者のローブ

 自身を隠すためのローブ。装備者のステータスを鑑定から守る。(上位鑑定まで有効)


 路上販売をしているプレイヤーに片っ端から当たって見つけた装備だ。効果はいずれも鑑定スキルを防御することができる効果で鑑定厨の上位鑑定からも守れる優れものだ。

 もっとも、在庫の関係で仮面は1つだけでミツバの分はローブしか手に入らなかったけどな。まぁミツバの場合はステータスが隠せればそれで大丈夫だろう。ミツバの場合はステバレしたらレベルの高さが一発でバレてしまうからな。

 注意が必要だとすれば、アクセサリーである仮面と違って外套装備であるローブを着れば、ウサギ革の外套を着る事は出来ない。DEX補正すこし下がるけど、まぁ大丈夫だろう.


黒のローブに黒い仮面という格好はなんだか暗殺者にしか見えないな。今更だけど、短剣使いから始まって道化師やら暗殺者やら色々迷走してきたな。


「あ、センパイ。お待たせしましたー」

「おう。そんなに待ってないから大丈夫だ」

「おー。今のなんかデートっぽいよ?」

「……揶揄ってるつもりなら無駄だぞ?」 

「またまたー嬉しいくせに」

 

 クスクス笑うミツバに呆れつつ、移動を始める。スタンピードが起こるとすれば、魔の森と向かい合う正門の方から襲ってくるはずだ。だから何かあるとすればそこであると思うんだけどな。


 移動してみると案の定と言うべきか、正門前には演説台が設置されて法衣を来た男性が大きな声で演説をしている。その周囲にはプレイヤー達が集まり、楽し気に演説を聞いているようだった。


「皆さん! 今、人種は大いなる危機にさらされています! 魔王軍が魔物の大群を引き連れてこの国へと攻めてくるのです! それも、これまで演説してきた通り今日襲ってくると予言されています。戦うのです! 勇気ある者たちよ!」  

「毎日そう言ってるけど、本当に起きるのか?」

「勿論です! なにせ神から啓示されたありがたい予言なのですから! 疑うのならば刮目して聞くのです! 神の声を!」


【ワールドクエスト:魔王軍の侵攻が開始されます。開始時刻まで、残り120分です】


「「「ホントにキターーーーーー!!!!!」」


 アナウンスを聞いたプレイヤー達が歓喜の叫びをあげる。事前に準備していたとはいえ、本当に起きるとは驚きだ。

 ローブを着て仮面をつけて演説の場へと近づいて行く。


「さぁ、皆さん。戦いに備えるのです! 時間は限られていますよ! 今回の件には我々教会も全力を挙げて協力させて頂きます! 我々の情報網をお使いください!」


【ワールドアナウンス:本イベント開放により、ゲーム内に掲示板機能を開放いたします】


「「「掲示板キター!?!?」」」

「やっと掲示板実装かよ……長かったな」

「普通VRモノって言ったら掲示板が醍醐味だからな。普通のネットでやろうにも削除されるし窮屈ったらなかったぜ」

「ゲーム内ってことは運営が掲示板の内容管理するのか。いやまぁ、これだけ秘匿にするってことはそういう理由があるんだろうけどさ」


 掲示板機能! よくあるプレイヤたちの雑談とか考察とかのあれか! これまではフレンドメールはあっても掲示板なんてなかったからな。その機能実装ってことはもっとプレイヤー間の交流を増やせってことか? 

 それに教会によって掲示板が実装されるとは……教会は情報ネットワークスに優れているってやつか。なんにせよ、これでプレイヤー同士の情報のやり取りは格段に増えるだろうな。


「なんだか賑わっているねぇ。ルナちゃんの言っていた通り何かお祭りでもあるのかな?」

「ま、マオさん!? どうしてここに!?」


 ふと隣から話し掛けられて誰かを確認してみると、そこには魔族大陸にて出会った魔族プレイヤー。マオさんの姿がそこにあった。というか隠蔽装備をした俺をの事をどうしてわかったんだ!? ……って、そういえばフレンドに登録させてもらってたな。フレンド表示機能でも使ったのか。それよりも魔族領にいたはずのマオさんがどうしてここに!?

 驚いて聞いてみると、マオさんはにこやかに答えてくれた。


「ルナちゃんからメールが来てね? なんだか僕が攻撃しているだなんて寝耳に水な話を聞いたから飛んできたんだ」

「マオさんが攻める? いやいや、攻めてきたってイベント内容は魔王軍であって魔族プレイヤーは関係ありませんよ?」

「うん。だから僕でしょ? ほら」


 まるで時間を聞かれてスマホの画面を見せるような気軽さで見せてくれたステータス画面には、種族魔王の文字が堂々と………………魔王?


「って、ええええ!?!? マオさん、種族が魔王ってどういうことですか!? 」

「「「「なにぃぃぃぃ!?!?!?!?」」」」


 周囲のプレイヤー達も驚いて絶叫する。当たり前だ。プレイヤーの種族に魔王とあることもさることながら、今回のイベントの黒幕(?)がこの場にいるんだ。そりゃ誰だって驚く。

 ざわつく周囲の声に聞き耳を立てると、どうする?ここで倒す?といった声が聞こえてくる。いやいや。一度パーティーを組んだことがあるけど鬼のように強いから無理だって。

 今思うと尋常じゃないあの強さは種族魔王からきていたんだな。


「なんだか知らない間に大変な事になってるらしいからねぇ。僕にできる事があれば力を貸すよ」

「………ラスボスが味方に付いてくれた件について」

「この場合イベントってどうなるんだ?」


 プレイヤーの誰かがそうつぶやくと、皆そろって神官の方へと視線を向ける。すると、さっきまで饒舌に魔王軍が攻めてくると語っていた神官は汗をダラダラと流しながら口ごもった。


「あの……その……よ、用事を思い出したので失礼させていただく!」


【ワールドアナウンス:ワールドクエスト内容の誤植訂正を報告いたします。魔王軍の侵攻とのイベント告知を行いましたが、正しくは溢れかえる魔物の進行スタンピードとなります。イベント内容自体には違いはありません。プレイヤーの皆様を混乱させてしまい、まことに申し訳ありません】


「「「え~~~………」」」


 なんだか物凄く運営の都合っぽいアナウンスに、プレイヤー達のあきれ顔はシンクロした。いやまぁ……内容は変わらないのならそれでいいんだけどね?





【初めての】SSO総合掲示板【書き込み】


1:名もなき冒険者

 初めて実装されたゲーム内掲示板の試し。何を書き込んでも雑談してもいいですが、荒らしの類は厳禁で。運営が管理している可能性もあるのでネチケット重視で行きましょう。

 次スレは950が立ててください。


2:名もなき冒険者

 きゃっほう! やっとできた掲示板だ! 語りつくせ!


3:名も無き冒険者

 今までフレンドメールくらいでしか雑談方法なかったからな。フレメにしたってどちらかと言うと情報交換というより連絡用だし。


4:名も無き冒険者

 とりあえず、SSOのおさらいから始める? 覚えのない懸賞が当たって届いたゲーム機使ったらできた。VRヤヴァイ。オーパーツレベル。


5:名もなき冒険者

 俺もそんな感じだった。リアリティヤバいけど、それ以上にシステムがヤバくてビビったわ。レベル1上げて上げれるステがたった2だけってそれなんて鬼畜ゲー?


6:名もなき冒険者

 >>5 つSSO

 冗談はさておき割とステータスポイントが2だけってつらいよな。お陰でバランス型とかビルドしにくいし、特化の方が強いし。しかも戦闘面はリアルのセンスだし


7:名もなき冒険者

 俺氏ヒッキー。

 チャンバラなど生まれてこのかた一度もしたことない。運動など数年前に卒業した


8:名もなき冒険者

 >>7 運動はしとけw ただ、剣振ったことないのは同じだわ。適当に振り回すくらいならできるけど、それじゃ後々ついて行けそうにないからやめた。後方攻撃ならと思って弓にも触れたけど……(´・ω・`)


9:名もなき冒険者

 弓なんてなかった。いいね? あんなクソゲやってらんないわ。魔法使いが安パイ。それよりワールドクエスト


10:名もなき冒険者

 それな。それ用のスレ立ててくりゅ


11:名もなき冒険者

 頼んだ

12:名もなき冒険者

頼んだ


13:名もなき冒険者

任せた



以降雑談が続く









【初イベ】スタンピードイベ攻略掲示板【スタンピード】


1:名もなき冒険者

 ここは初のワールドクエストであるスタンピードについて話す掲示板です。初掲示板だから多少は多めに見るけど、スレチはなるべくNGで。

 次スレは950が立てる事。


2:名もなき冒険者

 あと二時間で始まるな。みんなは同盟に参加した?


3:名もなき冒険者

 >>2 もち。じゃなきゃ安全マージン的にきつそうだし


4:名もなき冒険者

 同盟ってなんぞや? 新システム?


5:マーリン@SSO攻略組リーダー

 SSO攻略組のクランが主導でやってる今回のイベントの為の集まりだ。バラバラに活動してもクリアは困難と判断し集まっただけで、クラン間の同盟システムが実装されたわけではない。情報共有とポーションとかの物資のやり取りができるのが強みだ。

 成功率上昇のと円滑なイベント攻略の為にもぜひ参加してほしい。


6:名もなき冒険者

 本人登場www

 あ、参加しまーす。魔法使いで名前はサブロー。レベルは60だから中堅よりちょい上くらい?


7:名もなき冒険者

 唐突に始まる勧誘活動ww リーダーさんはそれ用のスレも立てたほうがいいかもねw

 俺も参加希望。プレイヤーネームはガラナで、レベルは70だけど最近短剣使いに転職した。


8:名もなき冒険者

 あー……短剣使いは今風向き悪いかも


9:名もなき冒険者

 最近同盟に参加しようとしてた寄生地雷が短剣使いだったんだっけ? いうて、70もあれば大丈夫だと思ったけど


10:名もなき冒険者

 なんか同盟で噂になってたね。低レベルで参加しようとしてたんだっけ? それくらいよくない?


11:名もなき冒険者

 よくない。そいつレベル1って話。流石にお荷物抱えて初イベやる程の余裕はない。というかそんな寄生パーティーに入れたくない。


12:名もなき冒険者

 まじかよ。むしろレベル1の癖によく来たなそいつwww 


13:名もなき冒険者

 是が非でも寄生しようとする強い意思を感じた。なお地雷はNG


14:名もなき冒険者

 流れ悪くなってきたな。それよりも話すことがあるだろ? 


15:名もなき冒険者

 唐突に変わるワールドクエストwww

 あれ何で変わったの? 単純に運営のミス? 正直こんなくっそ高度なゲーム作る謎運営がそんな凡ミスするなんて考えられないんだけど


16:名もなき冒険者

 俺知ってる。魔王が来た


17:名もなき冒険者

 は?


18:名もなき冒険者

 >>15 Kwsk


19:名もなき冒険者

 正門前の神官NPCの演説中、魔王がやってきてこっち側に味方するって言いだした。たぶんそれで魔王軍侵攻のフラグ折れた。というか、ルート変わった?


20:名もなき冒険者

 俺もそれ見たwww 神官さん汗だらだらで正直笑ったわw ワンチャンスタンピードが本質で、魔王軍の侵攻ってのは教会側のこじつけかもしれないな(陰謀論)


21:名もなき冒険者

 >>20それなんてなろう小説?

 それはそれとして、魔王って何者? 普通にNPCでしょ? ラスボス何してんの?


22:名もなき冒険者

 聞いておどろけ! なんとその魔王、プレイヤー


23:名もなき冒険者

 は?


24:名もなき冒険者

 は?


25:名もなき冒険者

 (;゜Д゜)ハ?


26:名もなき冒険者

 あれじゃね? 同盟に突如参加した魔族の褐色ロリのプレイヤーの保護者とか


27:名もなき冒険者

 ロりについて詳しく


28:名もなき冒険者

 ロリについて詳しく


29:名もなき冒険者

 ロリについて詳しく


30:名もなき冒険者

 ロリkwsk


31:名もなき冒険者

褐色ロリについてくわしく


32:名もなき仕立て屋

 魔族ロリについて詳しく


33:名もなき冒険者

 褐色魔族ロリとかいう人類の至宝について詳しく


34:名もなき冒険者

 なんで掲示板が始まって一番勢いのある話が幼女についてなんだよw


35:名もなき冒険者

 初イベよりも話題になりそうだった魔王のプレイヤーの話より話題の優先度の高い話

それは「幼女」


36:名もなき冒険者

 この国、もうだめかもしれない


以降、ロリについての雑談による盛大なスレチが続く



余談


「ファー―!!! なんで!? なんで魔王が人族領にいるの!? これじゃ、魔王軍侵攻で魔王が人族側に味方って矛盾発生しちゃうじゃん!」

「プレイヤー【ルナ】がイベントに参加しているのに、魔王軍侵攻の設定を押し通そうとするからです。本来のルート通りスタンピードでしていれば魔族プレイヤーが参加していても不自然ではなかったものを」

「だって魔族と人族争わせた方が後々楽しそうだったし! ……仕方がない。もう一度ワールドアナウンスで連絡。魔族侵攻から本来通りにスタンピードに変更しておいて」

「なぜ無能の尻拭いをしなければならないのですか? パラハラですよ? 自分の失敗くらい自分で何とかしなさい」

「AIが辛辣なんですけど!?」



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