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第九十二話 ~スタンピード編~ 



「それではスタンピード対策会議を始める。今回指揮をとらせてもらうSSO攻略組クランリーダーのマーリンだ。以後良しなに。最初に言っておくが、このスタンピードはあくまでもNPCから情報を得た限りなく本当に起こり得る“噂話”だ。明日何も起きずに終わる可能性もある。それを頭に入れておいてくれ」


 マーリンの言葉にプレイヤー全員が頷く。あくまでも噂話で集まったというのは皆理解の上らしい。単なるうわさでこれだけ大勢集まるのはちょっと驚きだ。だけど、完全法治主義のこのゲームでは運営からの告知なんてあってないようなものだし、信じざるを得ないのだろう。

俺の知る限り運営から連絡が来たことなんて、二感覚VRから五感没入型のVRに変更になった時くらいだし。


「結構。では、各プレイヤーの当日の動きを練っていこうと思う。まず何か言いたいことがある者はいるか?」


 総意が得られたところでマーリンが全体に問いかけると、誰よりも早くモルガーナが挙手した。


「最初に宣言しておくよ。私は初手で広範囲大規模魔法を使います! 巻き込まれたくなかったら、近接ジョブの人は打ち込んだ後に攻め込むことをお勧めするよ!」

「広範囲大規模魔法? 俺も魔法職の古参であると自負しているがそんな魔法聞いたことはない。良ければ詳しく教えてくれないか?」

「フッフッフ。少なくとも範囲として20×20以上になるのは確定だよ」

「馬鹿な! 射程なら兎も角、今の最大範囲は範囲拡大系効果付きの杖を使っても10×10に届くかどうかだぞ!? それが倍以上に鳴るなんてあり得ねぇ!」

 

 話を聞いていた魔法使いプレイヤーの一人が声を荒げて否定する。モルガーナの言った20×20というのは、魔法使いプレイヤー達の独特の距離の表現法らしく、1を練習用に使う最弱魔法であるマナショットの射程(約2m)を基準にしているらしい。

 つまりモルガーナは1600㎡、つまりサッカーのハーフコートくらいを範囲とした魔法が打てるってことだ。……そりゃあ反論されてもおかしくないわな。

 他の魔法使いプレイヤー達もあり得ない。嘘言うなという声を上げるが、モルガーナは不適に笑いその声を受け止めていた。


「確かに普通ならば私だってそんな範囲攻撃なんて無理だよ。普通のエルフならね。しかぁし! 私は!エルフを越えたんだよ!」

「エルフを越えたエルフ? 一体何のことだ?」 

「ちょっと待て! ま、まさかお前……」

「まさか……あれか?」

「何だ?何か知ってるのか?」


エルフのプレイヤー達がざわつきだす。人によっては物凄く動揺している。既にモルガーナのドヤ顔は最高潮だ。後ろに控えるミツバの笑顔も最高潮なのは黙っておこう。


「そう! エルフのプレイヤーは知っているかもしれないけど……私は! ハイエルフに! 昇華したよ!」

「「「な、なんだってー!」」」

「おおう……皆ノリいいな。ってそうじゃねぇ! お前一体何してくれてんだ! 俺達他のエルフのことも考えやがれ!」

「それに関しては申し訳ないと多少は思っているかな!」

「待ってくれ。ヒューマンである俺達は何のことか分からない。この際スタンピードよりもこの件の方が優先だ。説明してもらえるか?」


 マーリンが高ぶるエルフプレイヤー達に質問をする。エルフ以外のプレイヤー達は総じて頭に疑問符を浮かべた状態だ。

 俺だって例外じゃない。ハイエルフってどういう事だ? 進化ができるのは魔族種だけだと思っていたんだけどな。確かにモルガーナはメールで含みのある言い方していたけど、一体いつの間にそんな事になっていたんだ?

 

「ちょっと時間を貰うけど、説明させて貰うよ。種族が変わるのは魔族種の専売特許じゃなくて、私達普通の種族も変わることが出来るよ。正しくは進化じゃなくて昇華だけどね。エルフの場合はハイエルフに昇華するよ。元々のエルフのステ補正である魔法関連のステ上昇だけじゃなく、他のステも軒並み高くなるの。補正効果はこんな感じ」


 そこまで言うと、モルガーナは自身のステータス画面から種族補正だけ見える様にを表示してプレイヤー達に見える様に反転させる。どれどれ……って、なんだこれ!?

 MP・INT・DEXを三割増は、エルフの時からの順当な強化だろう。確かエルフの時は1割増の筈だから二割の上昇だ。だけどその他のステータスも増加してくれるのか!? それもレベル数値の二割っていう破格の数値で、だ。

 モルガーナのレベルは確か130代だった筈だから、大体26くらいが分配されている事になる。レベルの1アップで得られるステータスポイントはたった2ポイントだけってことを考えると破格も破格。所謂ぶっ壊れって言われてもおかしくないレベルの補正値だ。と言うかこの種族補正を見てしまえば、ヒューマンの全ステに+1する補正があってないようなものにしか見えない。

 あまりにも破格な補正効果にプレイヤー達も驚きのあまり声が出なかったり、モルガーナを攻めるような声が上がったりする。ちなみに後者は殆どがエルフが占める。


 

「ふ、ふざけんなよ!? それだけの種族クエストを見つけておきながら一人クリアしてとんずらか!? あのアナウンスが流れてからどうすれば早くクエストが受けられるかエルフプレイヤー総出で領内中を探し回ったんだぞ!? 躍起になってな!」

「大体一体何をどうすれば世界樹にダメージが発生につきってアナウンスがなるんだよ!? 世界樹伐採ってか!? お前伐採するなら別ゲーで別の樹を伐採しろよ!」

「そしてガチャ爆死してしまえ!」

「それに関してはちょっとは申し訳なく思っているよ! そして既に爆死はしてるよバカヤロー!」


 さっきまで上機嫌だったモルガーナが涙目で叫ぶ。あぁ爆死したのか……って突っ込むところはそこじゃない。世界樹って普通エルフが守るってのが普通じゃないのか? それにダメージを与えるって、どういう状況? 俺と同じくヒューマンであるアニーやマーリンも疑問気な様子だ。


「……コホン。今話に上がった世界樹のダメージって言うのは種族クエストのせいだよ。そのクエストの過程で世界樹に攻撃してその力を示すの。私の場合ちょっとやりすぎちゃったけど……まぁそれは今おいておくね。で、これは私の考察だけど、魔族以外の種族は何か条件を満たすことによって、種族毎に設定されている種族クエストが発生して昇華することが出来るんだと思う。例えばヒューマンだったらハイヒューマン。ドワーフだったらハイドワーフみたいに」

「成程。つまり種族を高位のものに昇華させることができると。確かにヒューマンなどの補正値は他の種族に比べるとあまりにも低い。最近は気にならなくなっていたが、種族を強化できることが前提の補正値と思えばこの低さも頷ける。これは後で要調査か……いや、話が脱線してきたな。情報は感謝する。後でそれも詳しく教えてくれ。話を戻すが、それだけの火力に自信があるのであれば初手は任せたい。頼めるか?」

「モチのロンだよ!」


 エルフのプレイヤ―達は不満気なままではあるものの、攻略の方を優先したのか口を閉ざす。


 この後は特に荒れる事もなく、順調に話は進んでいった。会議で決まった流れとしてはこうだ。


まず、モルガーナの宣言を考慮し、まずはモルガーナが広範囲大規模魔法を発動させる。そして剣士、槍使いといった近接ジョブ達中心に前線へと立つ。回避盾のプレイヤーも同様に前線でかく乱させる。

盾持ちタンク達は前線にたったプレイヤーよりも数歩下がり、後衛プレイヤーや支援プレイヤー達を防御。後衛は近接ジョブに当てない様にスタンピードに対し範囲攻撃。

まぁ、モルガーナの攻撃を除けば、基本に忠実な戦法と言える。


ただし、SSO攻略組の一部メンバーは万が一に備えて、城壁付近に止まり前線が崩壊したときに備える事になった。

性格は兎も角として、トップクラスに位置する彼らが後ろに詰めていてくれるのは正直とても心強い。



最近では要竜討伐メンバーがSSO攻略組のタンク魔法使い構築じゃなかったこともあってか、大盾を持ったタンクを辞めて近接ジョブや他のジョブに移るプレイヤーも増えてきているらしい。だからこそ前線に近接ジョブが行くって作戦がとれるって言えるな。

スタンピードの規模がどれくらいになるのかは分からないけど、順調に行けば大丈夫だろう。 


 そう思っていたのに、そう簡単に順調にもいかないらしく……


「ヒヒ! ちょっと待てよぉ。この中に地雷プレイヤーがいるぞぉ?」


 ただのよくあるスタンピードイベント。そう思っていたのに、このイベント・この会議に出たことが、この先の俺のゲーム生活を大きく変える事になるとは、この時の俺は知る由もなかった。



やっとタイトルの地雷の部分回収できた……

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