エピローグ 魔王を討伐して無職になった勇者だけど、チートな幼女に運良くお世話されているから勝ち組かもしれない
――ここに来て結構な時間が経った。
およそ一年くらいだろうか。
体も少しずつ回復して、最近は少しきつい運動をしても大丈夫になってきた。
もしかしたら、万全になる日も近いかもしれない。
そして、彼女たちとの関係も――相変わらず、変わっていなかった。
「パパ! おはよーございますっ。サキね、いっぱいねむったよ!!」
サキュバスのサキちゃんは少し大きくなった気がする。
それでも九歳なのでまだまだ幼いし、愛らしい外見だってもちろん変わらないままだ。
「おにーちゃんっ。今日はくまさんパンツなんだけど、似合ってるかなぁ?」
邪神『アンラ・マンユ』ことマニュは、サキちゃんと違ってまったくの不変だ。
外見も性格も、そのままである……もうパンツだって見慣れたものだ。
とりあえずくまさんよりうさぎさんが好きだと伝えていると、お風呂から上がってきたエレオノーラが俺の前に来た。裸で。
「下僕。この赤いドレスと白いドレス、どっちが好きかしら?」
一年も立てば裸も見慣れる――ことはなく、未だに恥ずかしいが、ともあれ動揺は上手く隠せるようになった。
白いドレスを選ぶと、彼女はニッコリと笑って着替え始める。この子も、俺の前で平然と裸を晒したり、着替えたりするあたり、前からまったく変わらない。
そして、ルーラも――
「ご主人様、おはようございます。朝食の準備ができましたので、どうぞお召し上がりください」
この子はちょっとだけ背が伸びた気がする。
邪神や魔族と違って、ルーラは人間だ。幼いサキちゃんと同様に成長も早い。
だが、この子もまた永遠に変わらない気がした。
いや、ルーラだけじゃない……みんなも、もしかしたらずっと変わらないのだろう。
俺のことを、ずっと――大好きでいてくれるはずだ。
それだけは、なんとなく確信できた。
「うん、ありがとう」
そう言って、俺の一日が始まる。
前からずっと変わらない、穏やかでのんびりとした一日が――
かつて俺は、勇者だった。
魔王を討伐して、しかしそこで無職になった。
だが、四人の女の子が俺を拾ってくれて、しかも幸せにもしてくれた。
とてもとても、かわいい女の子たちである。
ルーラ。
エレオノーラ。
サキちゃん。
マニュ。
こんなに、チート級なかわいさを持つ女の子にお世話されて、俺は暮らしている。
もしかしたら俺は……いや、もしかしたらじゃないか。
確実に俺は、勝ち組だろう。
この日常を、いつまでも。
彼女たちと、幸せになりたいなと――そんなことを、思うのだった。
みんな、ありがとう。
俺は今、幸せだよ――
【完】
ここまでお読みくださりありがとうございます!
ここで、本作は完結となります。
評価、ブックマークなど、本当にありがとうございました!
とても励みになりました。
また、別の作品も書く予定です。
そこでまたお会いできると嬉しいです!
それでは、また――
八神鏡




