第二十三話 ルーラちゃんは遠慮するより甘えられたい
エレオノーラと一緒にお風呂から上がってすぐにルーラたちは帰ってきた。
たくさんのバナナが収穫できたみたいで、その後にルーラが作ってくれたバナナのクレープはとても美味しかった。
それからまた少しの間四人と時間を過ごして、夕食も食べた。
そうそう、お風呂にもなぜかもう一回入った。
今度はみんなで一緒に入ったのだが、二回目とはいえまだまだ恥ずかしかった。
二回目のお風呂も終えると、すぐにこのお就寝時間となる。
今日もみんなの寝つきは良かった。
サキちゃん、マニュ、エレオノーラは静かな寝息を立てて寝ている。
起きているのは、昨日と同じ面子だった。
「皆さん、寝たようですね」
「うん。夜更かしは俺とルーラだけか」
「……そうですね。サキ様、マニュ様……それとエレオノーラ様も、ぐっすり眠っております」
日中は三人が俺と遊んでくれた。
みんな元気いっぱいだったが、なんだかんだ疲れもあったのだと思う。
昨日は三人とも俺にくっついてきたが、今日はその体力が残ってなかったようだ。
俺が横になるよりも先に眠っていたのである。
やっぱりこの子たちは子供だ……いっぱい眠りたいお年頃なのだろう。
「たくさん寝て、健やかに大きくなってくれればいいけど」
「……ご主人様も、しっかり寝てくださいね?」
「そう言うルーラもだよ? まだ子供なのはみんなと一緒でしょ?」
「子ども扱いしないでください。わたくしは皆さまよりちょっとだけ大人ですので」
果たして本当にそうなのだろうか。
サキちゃんが一番幼いというのは分かるのだが、その他三人は同い年のように見える。
「それに、言われなくても睡眠は十分とっております。一日に八時間は心がけていますので」
確かにこの家は就寝時間が早いので、睡眠にあてられた時間は長めである。
昨日は俺より遅く寝て早く起きていたので心配していたが、よくよく考えるとそれは杞憂だった。
「寝かしつけられるまでがご主人様のお仕事です。雇用主であるわたくしは、ご主人様が仕事をしっかりこなしているか見張る義務がありますので」
どうやら俺より先には寝ないと決めているようだ。
だったら俺も、早く眠るように意識しないと……ルーラにもしっかり寝てもらって、健康に育ってほしいものである。
「分かった。お言葉に甘えて、しっかり休もうかな」
俺も横になることにした。
昼間に遊んでもらったので、体も適度に疲労している。
気分もみんなのおかげでとても穏やかだった。
今日も昨日みたいに気持ち良い睡眠ができそうだ。
「……もう寝てしまうのですか? 少し、早くないでしょうか」
と、ここでルーラが少し残念そうにそんなことを言った。
「え? ルーラが眠れって言ったのに?」
「ですが、その……ちょっとだけ、おしゃべりしたいです。わたくし、今日は皆様よりご主人様と接することが少なかったので……物足りないです」
かわいいことを言う。
仕事、と強制しないところもまたルーラらしかった。
これは彼女のわがままみたいなものだから、あえてお願いするような言い方をしているのだろう。
「うん、分かった。昨日と同じように、ちょっとだけ夜更かしだね」
もちろん、断る理由はない。
ルーラにはとても感謝しているのだ……彼女のお願いなら何だって聞いてあげたいくらいである。
「あの……ただおしゃべりしてもらうだけだと申し訳ないので、マッサージをさせていただけませんか?」
「いいの? じゃあ、お願いしようかな」
本当はマッサージしなくても良いと思ったが、ルーラの気分的にそうしたかったのだろうと考えてお願いすることにした。
きっとこの子は、遠慮されるより甘えた方が喜ぶ。
とってもいい子なのだ。
「では、失礼します」
ルーラはゆっくりと、うつ伏せになった俺の腰付近におしりをつけた。
寝る時だというのに相変わらずメイド服なので、もちろんスカートである。
その状態で座るなんて、無防備だなぁ……指摘した方がいいのかもしれないけど、それくらい気を許されてると今は思っておこう。
もしかしたら今は男女の性差なんて知らないかもしれないし、もっと大きくなってからそういうことは注意しようと思った。
「ふっ……やっ。んっ」
ルーラはそのまま俺の背中をマッサージしてくれた。
手のひらで圧し潰すように筋肉をほぐしてくれる。
「おお、上手い……気持ち良いよ」
力加減も場所も絶妙で、いい感じだった。
特に俺は体内の魔力が荒れているので、身体の疲労が大きく蓄積している。
ルーラのマッサージは想像以上に効いていた。
「気持ち良いのなら、嬉しいです。ご主人様のためになることがわたくしの存在意義ですので」
俺が褒めたことでルーラも気分が良くなったらしい。
それからしばらく、俺の体をマッサージしてくれた。
「疲れたらいつでも止めていいからね?」
「いえ、遠慮は不要です。どうぞ存分に、甘やかされてくださいませ……それがご主人様の仕事ですから」
思いやりの気持ちがとても嬉しかった。
このお家の子供たちは本当にかわいい子しかいない……こんな子たちと一緒に生活できるなんて、俺はもしかしたら勝ち組なのかもしれない――




