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第十七話 人類の滅亡は『なでなで』することで防いでいます

 サキちゃんと一緒に遊んでいるといつの間にかお昼になっていた。

 買い出しに出ていたエレオノーラとマニュも帰ってきたので、昼食の時間となる。


 ルーラが腕によりをかけて作った料理は相変わらず美味しかった。


 そして昼食の後、サキちゃんが眠たそうにうとうとしていた。


「サキちゃん、眠いの? お昼寝したら?」


「いやた……パパと、あそぶぅ」


 とかなんとか言ってたが、やっぱり眠気には勝てなかったらしい。


 お人形のタマちゃんとミャーちゃんと一緒に眠り始めた。


「下僕と一緒に遊ぶのがよっぽど楽しかったみたいね……はしゃぎ疲れたのかしら。寝顔もかわいいわ」


 エレオノーラが眠るサキちゃんを優しく見ている。

 この子は魔族なのに、他の種族に対してあまり敵意はないらしい。魔王とは大違いである。


「おにーちゃん、今からちょっと時間あるっ? 一緒にお散歩行かない?」


 と、ここでマニュからお誘いがかかった。

 えっと、サキちゃんはこのままでいいのだろうか? 気になっていると、エレオノーラがこんなことを言ってくれた。


「この子は私が見ているから、下僕はマニュと一緒に行ってきたら?」


「え? でも、エレオノーラは大丈夫?」


「ええ。何も予定はないし、ちょうど買ってきた本を読もうと思っていたから……下僕は散歩のついでに、このあたりの地形も見ていた方がいいと思うわよ?」


「……それもそうだね。お言葉に甘えようかな」


 エレオノーラがサキちゃんの面倒を見てくれるらしい。


「わたくしも、家事をしながらではありますが見ております。こちらは気にしないでくださいませ」


 ルーラも大丈夫だと言ってくれた。


「じゃあ、行こっ。おにーちゃん?」


 と、いうことで。

 午後はマニュと一緒に散歩に行くことになった。






 俺たちのお家がある場所は、首都の門を出た郊外にある。

 少し歩くと街道はあるが、基本的に人の気配はない。


 俺たちが住んでいるあたりはあまり整備も進んでおらず、魔物が棲息すると言われているから人が近づかないのだ。


 しかもここは森の中になっており、見通しが非常に悪い。魔物の奇襲を受けやすい地形なので好まれていないらしい。


 俺たちが住んでいるのは森の入口付近なので魔物の気配も弱いが、奥地に行くと凶悪なのも出てくるだろう。


 俺としては、こういった場所をしっかり整備して人間に危害がないよう配慮するべきだと思うのだが……現状、被害はないので国はこの場所を放置していた。


 いくら首都のある場所に魔物が寄り付かないとはいっても、すぐ近くが魔物の巣窟なのはどうかと思うけど。


 まぁ、そんな国の怠慢あがあるおかげで、俺たちが暮らせているのだからいいか。

 魔王の娘、邪神、亜人のサキュバスは、普通に考えて人間社会が受け入れてくれるわけがない。


 俺たちにとってここは都合の良い場所である。


「人間って不思議だよねー……なんでここを放置してるのかなぁ? 私が敵だったら、ここを拠点に兵を送り込むのにっ」


「……本当にやらないでよ? そうなったら、たぶん人間は滅亡するから」


「脆弱だなぁ。でも、おにーちゃんがそう言うなら、滅ぼさないであげるっ。その代わり、いっぱいなでなでしてね?」


 人類の滅亡が『なでなで』という行為によって防がれているという事実は、世界中で俺だけが知っていることである。


「はいはい」


 身を寄せてきたマニュの頭に手を置くと、彼女はぐいぐいと押し付けてきた。


「にひひっ。おにーちゃんの手、おっきいね!」


 邪神なのにかわいい笑顔を浮かべる。


「手、つなごっ?」


「うん、それくらいなら」


 小さな手を握ると、彼女はギュッと握りしめてきた。


「どう? おにーちゃん、ドキドキしてる? こんなにかわいい子と密着できて、おっぱいも押し付けられて、手まで繋いでるんだから、心臓飛び出そうでしょっ?」


「マニュがもう少し大人だったら、もしかしたらそうなってたかも」


「むぅ……わたしの色気に惑わされないなんて、おにーちゃんのにぶちんっ」


 いやいや、惑わさないで。

 マニュは不満らしいが、俺としては彼女が子供で本当に良かった。


 じゃないと、マニュにドキドキして日常生活が送れなかっただろう。

 それくらい、この子は俺への誘惑が激しいのだから。


「そういえば、なんで子供の姿なわけ? 出会った頃から気になってたんだけど……アンラ・マンユって姿を自在に変えられないの?」


 俺が読んだ伝承で、アンラ・マンユという邪神は化け物だと書かれていた。

 その姿は一目見るだけで正気を失うくらい禍々しいとされているらしい。


 だが、今のアンラ・マンユは禍々しさなんてないし、逆に愛らしくもあるから不思議なものだった。


 俺の問いに、マニュのは首を傾げる。


「んー……なんでかなー? 分かんないけど、人間の幼女の姿が落ち着くのっ。おっぱいはもう少し大きくていいのに、いざ大きくしようとすると気分が乗らないんだよねー」


 どうやら、彼女の気分の問題らしかった。


「ま、その姿は可愛いから、そのままでいいと思うけど」


「何それっ。おにーちゃんのロリコン!」


「ち、ちがっ……そういう意味じゃなくて」


 ともあれ、姿はどうでもいいか。

 マニュは、マニュだ。やけに俺に懐いた女の子として、接すれば良いだろう。

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