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第十四話 朝から幼女まみれなお仕事

 久しぶりの快眠だった。

 自分でもびっくりするくらい熟睡していたみたいだ。


「…………んぁ?」


 ふと目を開けると、窓から陽の光が差し込んでいた。

 朝になっていたみたいである。


 しっかり眠れたおかげで気分も晴れやかだった。

 こんなに気持ちの良い朝は久しぶりである。


「おはようございます、ご主人様」


 と、ここで朝の挨拶が聞こえてきた。

 隣に目を向けると、そこには黒髪の少女がいた。


「ルーラ、おはよう」


 ルーラである。

 彼女は横になったまま俺をジッと見ていたようだ。


「よく眠れたようですね」


「うん。おかげさまで……ルーラも起きるの早いね」


「はい。ご主人様が起きるまでに朝食をご用意しようと思っていたのですが、寝顔を見るのに夢中になっていたようです」


「そ、そんなに見られると、恥ずかしいんだけど」


「申し訳ありません。寝顔がかわいくて、つい……今から朝食の準備をしますので、少々お待ちください」


 小さい子に『かわいい』と言われるのは、ちょっと複雑だった。

 思ったよりルーラは俺のことを子ども扱いするんだよなぁ……彼女の方が年下なのに。


 まぁ、愛情を感じるので悪い気はしないので、別にいっか。


 とりあえず俺も起き上がって、顔でも洗おう。

 そう思ったのに、体が重くて動くことが出来なかった。


「……みんな、くっつぎすぎでしょ」


 そう。エレオノーラ、マニュ、サキちゃんが俺の体にくっついていたのだ。


 エレオノーラとマニュは俺の腕に抱き着いているだけなのでまだマシなのだが、サキちゃんは胸の上にうつ伏せでのしかかった状態である


 おかしい……ルーラと夜のお喋りをした後、俺は彼女たちを起こさないよう端っこで寝たはずだったのに。


 いつの間にこの子たちはくっついてきたのだろうか。


「んにゃぁ……おにーちゃん、起きたのー?」


 俺がそわそわと動いたせいだろう。マニュが目を覚ましたみたいだ。

 彼女は目元をくしくしとこすりながら、体を起こす。


「おはよう」


「おはよー……おにーちゃん、お目覚めのちゅーしていい?」


「ダメ」


「ふーん? 本当はしたいくせにっ。おにーちゃんのすけべー」


「べ、別に、そんなことないからっ」


 マニュは寝起きなのに絶好調だった。

 朝から反応に困るようなセリフを言う……流石は邪神だ。こっちの困ることを平然とやってのける。


「にひひっ。朝からおにーちゃんとおしゃべりできるなんて、いい日だなぁ……後でもっと構ってね? わたし、日課のお散歩してくるからっ」


 俺をからかうだけからかって、マニュは家を出て行く。

 ロリ邪神ちゃんは今日も元気だった。変なことしないといいけど。


「……下僕、私には朝のキスをしてくれるわよね?」


 続いてエレオノーラも目覚めたようだ。


「いや、しない」

 

 マニュの時と同じようにダメとしっかり言った。

 普通に恥ずかしい。


「じゃあ私がするわ」


 でも、彼女はマニュと違って引かなかった。

 俺のほっぺたに、熱を持った唇が触れる……エレオノーラからは二度目となるキスだった。


「――っ!?」


「こら、激しく動いたらサキが起きちゃうじゃない」


 この子は俺と違ってキスにあまり抵抗はないタイプらしい。

 魔族と人間では貞操観念も違うのだろうか……なんというか、すごい。


「ふふっ。驚いた顔も魅力的ね……私、お風呂に入ってくるけれど、下僕も一緒に入る?」


「い、いや、遠慮しとく」


「そう。じゃあ、また今度一緒に入りましょうね?」


 エレオノーラも俺にキスをして満足したらしく、そのまま立ち上がってお風呂場に向かった。


 びっくりした……朝から、幼女に振り回されっぱなしである。


 ともあれ俺に抱き着いていた二人はいなくなった

 起き上がるには、あと一人の女の子が起きてくれたら良かったのだが。


「すぴー……えへへぇ。ぱぱぁ、だいすきぃ」


 胸の上で眠るサキちゃんにまったく起きる様子はなかった。

 幸せな夢を見ているのか、その表情は緩みきっている。


 とても気持ち良さそうな寝顔だった。


「……おーい、サキちゃーん」


 ピンク色の髪の毛に触れると、彼女はくすぐったそうに身をよじる。

 それでも起きる様子はなかったので、今度は頬に触れてみた。


「起きないと悪戯するよ?」


 ぷにぷにのほっぺたを、軽くつまんでみる。

 仄かに温かいほっぺはとても肌触りが良かった。ずっと触りたくなる。


 少しの間つついてみたが、それでもサキちゃんは起きない。


「……しょうがないか」


 だから俺は起こすのを諦めた。

 こんなに幸せそうに寝ている子を起こすなんて、俺にはできなかったのである。


 それからしばらくは、この態勢のままぼんやりと過ごす。

 結局俺が起き上がったのは、ルーラが朝食の用意を終えて呼びに来た時だった。


 俺の新しい職場は、朝から幼女まみれでした――

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