表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

夢からの現実


恐怖に驚き、目を見開いて飛び起きる。先程の夢で最後に見た自分の首元が脳裏に焼きついたまま。



 私は――ルクシア=ミルヴェーレンは、自分の首元を触る。離れているはずだった首元は、きちんと繋がったままで、尋常じゃない汗の量に、再び私を驚かせる。



「そっか、私は……」



 やはり私は転生者だった。それは今でも、誇らしい事だとは思う。でも、自分の考えていた人生の終了とは違うおぞましいものだった。



 体中がギシギシと、立つ事が不可能な激痛。意識のあるまま首を潰される感覚。全部、私の中に残っている。



 再度吐きそうになる。幸いな事に、胃に何も残っていないのか、出るのは呻き声だけであった。



 体の震えが止まらない。痛みを思い出す度に、震えは大きくなって行く。一度震え出したら、体の震えは留まる事を知らない。



 暖を取ろうと、フラフラと立ち上がるも、倒れるようにバランスを崩し、ベッドから転がり落ちる。体が恐怖で強張っていて、頭から落ちたはず……でも不思議と痛くはない。



「起きてるか。入るぞ」



 ドアがノックされるが、了承もなしに開かれる。



「……なんだその恰好は」



 父は、ベッドから転がり落ちた私を、侮蔑の混じった眼つきで睨む。



「かr―ケホッケッ」



 口内が乾燥して、うまく喋れない。震えているせいで、体が硬くなってるのだろうか。



「ふん。さっさと来い。儀式の続きだ」



「ま、まっt―あぎゅ」



 まだ立ち上がるには時間がかかるようで、転んでしまった。顔から地面へ突っ込んだのに、まったく痛くはないのはなんなのだろうか。



「……」



 父は地面と一緒の私には一瞥もくれず、無言のまま儀式の間へと進んでいく。こういう時の父は怒っている。



 ゆっくりと、固まった体を動かし、足を引きずるように儀式の間へと到着する。



「遅い。さっさと儀式の続きを始めるぞ」



 イライラが納まらないようで、顔には怒りが浮かんでいた。



 そんな父の顔を見なかった事にして、私は今1度魔本に魔力を注ぎ、詠唱を行う。



儀式――それはこの世界中で行われる成人の儀。人は10歳になると、自分の能力値を知るために魔術の付与された本、魔本を使って自身の能力値を知るのだ。それに加えて、魔法を初めて使う事でもある。とても意味のある重要な儀式。



 その重要な儀式を、私は嘔吐と気絶という形で終わらせてしまった訳だ。父が怒るのも無理はない。増してや、それが族長の娘という立場ならば尚更だ。



 私の詠唱が終わると、魔本はゆっくりと輝きを失い、文字が焼き出される。



 



H P:13/13 M P:38/38(-10) 



ATK:17 DEF:8 MATK:14 MDFE:17 SPD:6 HIT:15% CRI:9% 



VIT:4 SIZ:9 STR:5 DEX:10 INT:16 MIN:9



WIT:36 APP:14 EDU:15 LUCK:9



NOTE:魂に前世の記憶を混入 1/10解放済み



Mastered Magic…[Intensity]Effect:自身のMPを永続的に一定消費し、消費したMPの2倍を自分のSTRへ永続的に加算する。






 そこに記述されていたのは、私の最大MPが減少した事と、魔法の効果であった。



 この魔法は……ハズレだ。



「どうしたルクシア。魔法の詳細を教えんか」



魔法――それは、人が人生で1度だけ覚えるもの。儀式を行い覚えるが、使ってみないと魔法名も効果も不明。詳細は覚えた本人か後世に残すのみ。そして、覚え直す事はできない。



「……黙っていないで早く言わないか!」



 再び父の声が荒くなってくる。父の感情は今怒りに満ちているのだろう。



 私は観念して、魔法の詳細を話す事にした。



「魔法の説明ですが……魔法名は[インテンシティ]と言い、自身のMPを永続的に消費して、消費したMPの2倍を自分のSTRへ永続的に加算する魔法と書かれています」



 私の説明を聞いていく内に、父の怒りは徐々に納まっていったようだった。説明を反芻するかのように、瞼を閉じて何度も頷いている。



「どう……ですか?」



 先程もであったが、父に対して普段使わない敬語で話していた。



「そうかそうか……ご苦労だった。今日はもう寝なさい」



 父はそう告げると、背中を向けて儀式の間から出ていく。



 だが、私は見てしまった。私を見つめる表情が、蔑んでいる。価値なんてまるで無い、石ころを見る、見下したものを私に向けていた。



 悪い予感を抱きながらも、私は自室に戻りベッドへ入る。



 父のあの目を忘れようと、必死に目を瞑り、眠りの世界へと私は逃げる。






 次の日の朝、目が覚めると私は屋敷から出る事を禁じられてしまった。



 この日限りでなく永遠に。外へ出る事は許されない。



 今日から鳥籠に入った小鳥へ、私は変わる。


ちょっと投稿遅れました。決してMinecraftしていた訳じゃないんです。……すいませんマルチ楽しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ