儀式で始まり
ノリと勢いでできました。
ギャグ風味の作品になると思います。
文章量を少なめに、読みやすいといいなと
「ルクシア=ミルヴェーレン、前に」
父が私の名前を呼び、それに呼応して周囲の大人達がざわつく。それを気にもせず、前の方へ出ていく。
父の前には、魔本と呼ばれている、魔力の込められた本が置かれていた。
魔本の前に立つと手をかざし、自分の能力を閲覧するために、簡易的な詠唱をする。
「世界を知るライブラよ、創世神に光を讃え、神から与えられし力の一端をここに記せ」
詠唱を終えると魔本が輝き始め、ページが勝手に捲れ(めくれ)始める。
魔本は空白のページに到達すると、焦げ茶色の文字を勝手に焼き出し、徐々に輝きが弱まる。
完全に輝きがおさまると、私の能力値が開かれた魔本に記述されていた。
H P:13/13 M P:48/48
ATK:7 DEF:8 MATK:14 MDFE:17 SPD:6 HIT:15% CRI:9%
VIT:4 SIZ:9 STR:5 DEX:10 INT:16 MIN:9
WIT:36 APP:14 EDU:15 LUCK:9
NOTE:魂に前世の記憶を混入済み
Mastered Magic…unknown
記述された能力値が発表されると周囲が先程以上にザワつく。なにかいけなかったのだろうか。
「信じられん……なんて魔力量だ。高位の魔術師をも凌駕するぞ!」
「それ以外の能力値も大人並に高い。すばらしい……」
「やはり族長様の娘だな。次の世代も安泰だな」
ダメだったなんて事は無く、私の能力値は普通の大人を超える程に高過ぎるのだ。
「ノートに何か書かれておるが……読めんな。まさか転生者なのか?」
転生者―こことは違う世界で人生を終了し、この世界に紛れてきた魂の持ち主をそう指すらしい。生まれつき能力値が跳び抜けて高く、世界に影響を与える可能性を秘めていると言われていて、皆からの注目の的なのだ。
私は誇らしかった。生まれつき魔力量が多い事は知っていたけれど、転生者の可能性があるとは、思ってもみなかった。 これなら、私のしたい事が叶うかもしれない。
「ルクシアよ……そなたのみに許された、魔の力を見せてみよ」
厳しい物言いながらも、父は慈愛に満ちた目で、私に投げかける。
その言葉を受け、意識を魔力そのものに集中させる。そうすることで、ゆっくりと魔力は体内を循環し始め、徐々にだが体の隅々へと魔力が行き渡る。
魔力が全身に行き渡った事で、私の脳の奥深くから、1つ言葉が浮かびあがってくる。その言葉を私は口にする。
「インテンシティ」
魔法を発動と同時に、私を中心にして周囲に風が吹き荒れる。
しかし、誰もそれに動じない。なぜなら、まだ魔法を制御しきれていない時に起こる、魔力の余波だ。初めて魔法を使う時に必ず起こる。なんてことはない。
余波を止めるため、魔力を押さえつける事で、無理矢理魔力をコントロールをする。造作もなく簡単な事だった。
ゆっくりと余波が収まり、自身の魔力を制御する事によって、私は魔法を会得した。それと同時に、何かが私の頭の中でカチリと響く。 開けてはいけない鍵を開けてしまった様な感覚を全身に感じる。
「すばらしい魔力制御であった。私は族長として、そして父としてそなたを誇りに思うよ、ルクシア」
普段は厳格な父だけど、今は心から褒めていると分かった。でも私にはその言葉が耳に入らない。誰かの記憶が、何かの記憶が、自分の深いどこからか、断片的にだけれど湧き出て止まらない。気分が悪い。立って……られない。
「む……どうしたルクシアよ? こっちを向いて、もう一度魔本に魔力を注がんか」
話を聞かずに、急に座りこんだ私を怪訝に思ったのだろう。少し厳しい口調に変わる。
その言葉を受けて、私は―――嘔吐した。それと同時に、私の意識は闇の中へと落ちていく。
※一部文章を変更や描写等の追加を行いました。
詠唱書き忘れてたんだ、ごめんね