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おきなわ修学旅行の露天風呂は波乱しかありません。 前篇

※このお話は本編開始の前日の夜。露天風呂での女子たちの会話です!男の方は。。。まあそのうちに

沖縄のとある旅館。

そこは毎年恒例になりつつある修学旅行生の受け入れを今日も続けており、大変ににぎわっていた。

夜もふけ、夕食も食べ終えた今日の修学旅行生は皆一斉に海の景色を一望できる露天風呂へと向かう。

思い思いの仲間たちと親しげに会話を続いていく中、一人の少女が暖簾をくぐる女生徒たちを野獣のような眼光で見つめていた。



「…さあさあさあやってきましたよ。今日今宵の為に、私は私は生きてきたと言っても過言ではない!!」



一人テンションの上がり切った女生徒、彼女の名は久留田芽衣子くるためいこ

無類のおしゃべり好きであり、クラスのファッションリーダーでもあり、そしてそして何より彼女は…



「目の前にあるこの大小さまざまなおっぱい、どう料理してくれようぞぉ!」



おっぱい星人だったのである!




「ぐへへへっあんたいい乳してまんなぁあ。」


「ちょっちょっと芽衣子ちゃん!?くすぐったいからやめてよもう!」



涎を垂らしながら親友の早乙女愛華さおとめあいかの乳を思いっきりまさぐる芽衣子。

普段からこのようなスキンシップをされる愛華は慣れているとはいえ、お互いお風呂場と言うことで全裸。

少々恥ずかしさもあってすかさず親友を止めに入るが、中々にやめてはもらえずになおも執拗に続く乳揉みに段々愛華も気持ちよくなってきて…



「…何をやっていますか久米田女子。見苦しいですわよ?」


「げっ四十九院幻花つるしいんげんかさん。いたんですか。」



そこに現れたのは後ろに金のオーラが垣間見えるような高貴でふてぶてしい態度が特徴の四十九院幻花さん。

彼女は世界的大財閥である四十九院家の長女にて、モノホンの金髪縦ロールである。

そんな高貴な雰囲気を遺憾なく周囲に吐き出す幻花さんをどこか苦手としている久米田芽衣子は、嫌々ながら彼女に従いその手を離す。

何とか親友の乳揉みという酷い呪縛から解放された愛華は、力なく地面へと座り込む。

へなへなと効果音が聞こえそうな位ぐったりと座り込んでしまった愛華は、助けてくれた幻花さんにお礼を言った。



「…あっありがとう四十九院さん。助かったよ。」


「礼には及びませんわ。わたくしはただ見苦しい寄生虫を追い払っただけですので」



つれない態度の幻花さんに多少苦笑交じりの笑みを浮かべる愛華。

全裸とはいえ堂々とした立ち姿で見る者を魅了する妖艶な容姿。女性であろうと思わずため息をつきたくなる。

それほどまでに魅力的な彼女のどこがそんなに気に食わないのか、芽衣子は事あるごとに彼女を目の敵にしていた。

今も芽衣子は今にも噛みつかんとする犬か何かのようだ。拒絶の意思を込めて毛を逆立てて威嚇している。



「だ、れ、が、寄生虫ですかだれが!…それを言うなら貴方こそ一般人から金をむしり取る害虫そのじゃないですか!」


「わたくしはただ事実を言ったまで。それにわたくし共は最高のおもてなしを提供してお客様も満足されていますので、ウィンウィンの関係ですわよ?害虫だなんて言いがかりも甚だしい!」



胸を突き上げ二人はにらみ合う。

もし胸の大きさの争いであったのならそれは幻花さんの完全勝利に終わっていたであろう。

いや芽衣子が決して小さいというわけではないのだが、彼女に比べれば子供と大人。

芽衣子がバレーボールほどであるとしたら、幻花さんは最早地球。

天と地どころか天体と蟻とでもいうのか、兎に角それほどの差が彼女らにはあった。



「もう、二人ともやめなよ!修学旅行中ずっとそれで行くつもり?仲良く、仲良くね!」



二人の間に入り仲裁を試みるは先程までの被害者、早乙女愛華。

いつの間にか二人の周りには野次馬のごとく集まってきた同級生の女子たち。

皆好奇心に満ち満ちた目で成り行きを見守っている。止める者など愛華以外いなかった。

既に湯船へと浸かる者やシャンプーハットを被りはしゃぐ子供のような者、こちらに興味すら抱かぬ者すらいる中彼女はよく頑張った方だろう。

…まあそれがこの二人ではなかったら、止められたかも知れないが生憎これほどの障害では彼女らは止められない。



「「外野は黙っていてほしいよ!」ですわ!」



息ピッタリに拒絶の名の元、大きな声が発せられる。

突っぱねられおろろな愛華に差し出されるは、シャンプーハットを被った猫にも似ている女留さんの手。

差し出された手はそのまま肩に置かれる。



「大丈夫大丈夫♪いつもどおーりのことだから二人とも後で仲良くよくなるよ♪あいにゃん?」


「そっそれならいいんだけどね。でもでも…」



依然として睨み合う二人に周りの世界は見えぬのか。

白熱する外野、二人だけの世界、いつものようにニッコリ笑う女留さんに頭を抱えたままの愛華。

ただのお風呂場であるはずの露天風呂はそのまま格闘技のリングになったようで、観客であるはずの愛華たちは見ているしか方法はない、ように思えたのだが。。。



「…ちょっと入口塞がないで。じゃま」


「はぁ?何あんたこの状況が見えないのかい?今ねぇ今、いいとこ、ろ?」


「邪魔をしないでくださる?わたくしはここで今までたまりにたまった久米田女子との、けっちゃく、を・・・」



罵詈雑言をその者に浴びせんとした二人の口はたちまちに塞がり、あろうことか二人はそのものに道を空けてしまった。

心なしか二人とも少しばかり震えているように見える。

胸のサイズとしては彼女たちには遠く及ばないほどちっぽけであるが、その眼光は全ての人間を射抜かんとしたものだ。

吹雪でも吹き荒れているようなそんな錯覚すら見えた。



「…それじゃあ。ぐっばい。」



小さな彼女は軽快な足取りでお風呂場を後にした。

その後に遺された私たちは終始無言、気まずくもある時間が通り過ぎ最初に声を発したのは幻花さんだった。



「…なっなんですの?あの方は、かなりわたくしに匹敵する美形でしたがあまり見覚えのない方なのですけど、、、」


「…噂の転校生だよ四十九院幻花。彼女の名前は確か、、、赤神朱音とか言ったっけ?私もあまり印象に残ってないけど。」



あまりの衝撃からか普通に会話している幻花さんや芽衣子を横目に、愛華は考える。

赤神朱音あかがみあかね。今まで気にしたこともない綺麗すぎる同級生、しかし胸騒ぎがする。

彼女には彼女には何か、特別な何かがあるような、そんな気が愛華にはしていた。

しかしその答えを出す前に一人の陽気な少女によって場に活気をもたらすのだった。



「みーんな!はいはい!止まってないで折角のお風呂なんだから楽しまないと楽しまないと♪」


















見えたのは夜の星に照らされた沖縄の海。

都会のようにキラキラとした街頭ではないが、これはこれで満天の星が一望できた。

普段は見ることも出来ない星の数々に愛華は少し感動する。

白い湯気がちらつく中にあるのは手に届きそうなほど近くにある星々。月も真ん丸に出ていて、その表面が事細かく見えてしまいそうだ。

…まあそんなのとんでもなく目がいい人でもない限りいくら澄み渡るような夜空であるとはいえ無理そうだとは愛華自身感じるところではあるのだが。



「わー♪綺麗だね♪あいにゃん!」


「そっそうだね。とっても綺麗だよ。星がキラキラしてすごく幻想的」



女留さんと愛華は二人並んで露天風呂の中、真上の夜空を眺める。

広大で空いっぱいに散りばめられた星は自らがどれだけちっぽけであるか、自らの悩みなどこの夜空に比べたら本当にしょーもなくて。

隣にいるのがもし恋人であったなら肩を寄せ合い、その体温を感じるに至ったであろう絶景。

それは幻花さんも芽衣子も感じていることだろう。お風呂へと浸かるも二人の間に先程の険悪なムードはなく、二人は黙って空を見上げていた。

裸の付き合いがうんたらかんたら、二人が仲良くなったのならとてもうれしいと愛華は思った。

近くから男子たちの声、隣に敷居を挟んで同じような構造でこの空を眺めていることだろう。

聞こえるのは感嘆の叫びと、何かに驚いているようなでも嬉しそうな、悲鳴?




「…なんですか?隣ではお猿のショーでもやっていますの?とっても耳障りですわ」


「ええ少し五月蠅いね男子ども。何があったのかな?気になるねぇ気になるねぇ。」



二人も気になるらしくしきりに嫌そうな顔を浮かべる幻花さんと面白そうに目をキラキラ輝かせている芽衣子。

…愛華や女留さん、他の女子たちも敷居の奥にいるだろう男湯の方を見つめる。

すると何があったか高さ数メートルは存在する敷居の上にあろうことか一人の女子生徒が立つ。

その姿は月に照らされとても幻想的で、彼女の持つ藍色が混ざったような黒髪は夜空に混ざってしまうかのように溶け込む。

その佇まいは堕天使、神に歯向う好戦者。裸であるはずなのに色気もしゃらけも存在しないつるぺたな身体。

それに見覚えがある、あれはあれは



「赤神、さん?何をしているの?」


「…生態調査。」



それだけ発してこちら側に降りてくる赤神朱音。

相変わらず無表情である彼女はまた女湯から何食わぬ顔で出ていこうとして幻花さんがそれを止めた。



「…待ちなさい赤神女子。貴方は一体なんなんですの?普通の感性ではございませんよ男湯に潜入など」


「…私には普通のこと。とやかく言われる筋合いはない。」



驚愕の一同、あまりの出来事に咄嗟に体の動かない彼女らに変わって幻花さんが赤神さんの手を取ったがその手も容易く振り払う。



「普通、ですって?どういう教育をされたらそんなことに。。。」


「…私の家は神楽流の総本山。それだけで貴方ならわかるでしょ四十九院」



他のみなにはピンと来なかったらしいが、幻花さんには分かったらしくその眼を疑惑から困惑の色に変えた。



「…貴方もしかしてこの前剣の世界大会で優勝した、あの赤神朱音?」


「…そう。その赤神朱音。」



彼女は頷き、幻花さんは顔を手で覆ってしまった。

…何か不味いことでもあるのだろうか?見守るは周りの女子高生。

どうなるのかとひやひやしながら眺める愛華にこの状況でもひどく楽しそうな女留さんが対照的で面白い。

そこに芽衣子が割って入る。しかも赤神さんをからかうかのように。



「へーなら、ならさ。その世界一の女子が男湯に入って行ったのはもしかして気になる男子が…具体的に言うと堂ヶ崎君がいて、だとか?」



おどけて見せた芽衣子にいつも無表情で若干眠そうな眼をしている赤神さんはその眼を一杯に開く。

冗談のつもりで言った芽衣子は動揺を隠しきれないであろう赤神さんを見て流石に焦った。



「…なんで、わかった。まだ何も言ってないのに。」


「マジかよ。マジで言ってんのかよ…赤神さんや。」



芽衣子は顔を左手で覆い、上を向く。

奇しくもそれは先程やった幻花さんと同じポーズだったわけだが、そんなことは少しも意識せずただただ絶望感が彼女を襲う。

赤神さんはそれが何を意味するのか分からず、キョトンと首を傾げた。

だがしかしそれとは対照的に金髪縦ロールを風も吹いていないのに自在に揺らす一人の金持ちお嬢。

彼女の目は血走っていた、まあ他の女生徒を何人か気絶に導くほどにそれはそれは恐ろしい形相だったという。



「久音様!何、貴方も久音様狙いだったの!?…許しませんわ許しませんわそんなことっ」


「…ほう。許せないならどうする四十九院。私と決闘でもするつもりか。」



聞いたところによると赤神さんは前年度剣の世界大会にて優勝した強者。

それに対して幻花さんは全てをこなす天才肌の怪物。

どちらかが勝つかはその内容にも寄るが、戦いが拮抗することだけはまず間違いないだろう。

二人の綺麗すぎる顔が唇が触れ合うだろう距離まで近づく。

一瞬即発の雰囲気、美人の2大巨塔とまで言わしめた二人の対決が始まろうとしている。

美人で見る者を魅了する幻花さん、美人だけど綺麗すぎてインパクトに乏しい人形のような赤神さん。

二人を止める者は最早いない。愛華はおろおろとするばかりだし、女留さんも手を出しあぐねている。

芽衣子はここぞとばかりに幻花さんを煽りたて貶す。

始まろうとする二人の仁義なき戦いは今、切って落とされたのだった。


いせさう祝3万PV突破!

ということで書かせてもらいましたいせさうの短編です。如何でしょうか?

本当は分けるつもりはなかったのですが、長くなってしまったのでここらでぷつりと切らせてもらいます。続きはいずれ。


次はホワイトデーの短編、よろしくお願いします

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