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アルバイト

神様を無視して歩き続け、やっとの思いで我が家に到着。たった一日しか変わらないのに、この変化の大きさはなんだろうか。

昨日はモヤモヤとした気持ちのまま帰ってきて、居眠りしてしまって、神様と出会った。

今日は神様にバカにされて、極力無視しながら早足で帰ってきた。


「ただいまですー」

「あなたのおうちじゃありませんけどねっ」

「いいじゃないですか。もう私と高木さんは運命共同体みたいなものなんですからー」

「いいわけないじゃん。とにかく、これからバイトだから準備したらまたすぐ家出るからな」

「バイトしてるんですか。エライですねー。ニートではないんですねー」


そう。これからバイトなのである。

バイト先は自転車で5分くらいのところにある居酒屋。全従業員八人という小規模な居酒屋だ。そこで学校終わってからの三・四時間働いている。仕送りだけだと遊べないから、お小遣い稼ぎみたいなもんだ。

神様の言葉を無視しながら制服から私服に着替えて、自転車にまたがってペダルに力を入れてバイト先へと向かう。

建物の脇にある駐輪場に自転車を止めて中に入る。


「おはようございまーす」

「おーおはよう」

「おっすー」

「おはよう」

「あら、高木くん。おはよー」


調理場にいた佐々部(ささべ)さんと田辺(たなべ)さん、そしてホールの切田(きった)さんと岸部(きしべ)さんの計4人が挨拶を返してくれた。

奥の事務所兼更衣室で着慣れた制服に着替えて、またホールへと戻る。

そして衛生に気を使っているためにしている手洗いをしながらまた挨拶をする。


「おはようございます」

「高木くん。今日は忙しいぞー」

「いっつもそれ言ってるじゃないですか」


佐々部誠(ささべ まこと)さん。この居酒屋の料理長兼経営者。冗談で言っているわけではないのだが、口癖が『今日は忙しい』だ。現に地味に儲かっているらしい。じゃなかったらこんなに人数を雇っていない、とのこと。

今年五二歳。


「忙しくなる前に仕込み終わらせますよ。高木くんも今日も頑張ってね」


田辺清一郎(たなべ せいいちろう)さん。調理場の笑顔担当。佐々部さん曰く『酒を飲むと変わる人』とのこと。笑顔の裏には何かが隠れているらしいけど、営業後の飲み会ぐらいでしか見せてくれないため、R20なんだとか。今年三六歳。


「高木くんてば、また遊ばれちゃって。調理長、うちの高木くんで遊ぶのやめてって言ってるじゃないですか」

「遊んでないって!」

「いや、遊んでましたよ。僕、見てました」

「田辺くんまで!」


切田郁恵(きった いくえ)さん。パートさんであり、ホールリーダー。この人無しではホールは回らない。そのくらいの実力者であり、優しいお姉さん。今年二八歳。歳の話をすると、急に無口になるお方。


「切田さーん。あんまり調理長いじめたらかわいそうですよ」

「調理長だって、若い子に構ってもらって嬉しいでしょ?」

「そりゃ嬉しいけど、今のは構ってもらってたっていうよりも」

「ほら、嬉しいって」


岸部あずさ(きしべ あずささん)。俺の二つ上の違う高校の三年生。切田さんに比べると大人しいけど、俺よりはおとなしくない人。

他には、今日休みの堀田(ほりた)さんと佐藤(さとう)さんはまた来たときということで。


と、隣で『誰?』とイチイチ聞いてくる神様に小声で簡潔に説明しながら、来てからの日課になっている洗い物をしていた。うちの店では、調理場の人数の関係上、ホールの人間で手が空いている人が洗い物をすることになっている。

その洗い物の最中でも神様の質問は続いた。


「じゃあ高木さんが一番年下ってことなんですか?」

「そゆこと」

「ふーん。一番歳が近い子で、岸部さんですか」

「岸部さん?」


自分の顎を触りながら、フムフムと岸部さんの方を見る神様。


「岸部さんなんかどうですか?」

「どうですか、って何が?」

「恋人にするのはどうですかってことですよ。それ以外に何があるんですか」

「あー、ないない。俺は今付き合うとかよくわかってない状態だし、岸部さんだって二つも上だぞ。根本的に相手にされないって」

「んむぅ…そんなことないと思うんですけどねぇ…。私が今まで見てきた中で、一番歳が離れていたカップルは、四四歳差でした」

「は?」

「もう親子っていうよりも、孫とおばあちゃんみたいなものですよね」

「マジで言ってんの?」

「私が嘘をついたことがありますか?」


こんな一日の間でこの神様の何を知れと申すか。

だが今まででは嘘は一度もついていない。むしろ真実を素直に言いすぎているぐらいだ。そこでのマイナスポイントなら結構たまっている。


「ないけど、それって保険金狙いとか?」

「私に対して恋愛感情でごまかそうとするなんてできるはずないですよ。だって神様ですから」

「じゃあ二人とも真剣だったってことかよ」

「まぁそういうことですね。だから年の差なんて関係ありまっせぇん!」


大げさに言ってぐるりと空中で一回転する神様。

激しいな。


「いらっしゃいませー」


そんなことをしているとお客さんが入ってきたみたいで、俺も声を張って『いらっしゃいませ』と言う。聞こえないとわかっているけど、神様も続いて言った。ホントに自由だな。


「仕事中はあんまり話しかけんなよ」

「合点承知の助!」

「ホントにわかってんのか…?」


ビシぃッと敬礼をする神様を横目に見ながら俺は調理場からホールへと出た。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


最近、全然小説書いてないな。

サボりすぎやん。


次回もお楽しみに!

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