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神様見参

「私たち別れましょう」

「…わかった」

「じゃあ、ね」

「ん。元気でな」


高校に入学してから付き合った彼女と今まさに別れたところだった。月日にして半年。思えば長く続いたものだ。

中学卒業後に、同じ中学の子から告白されて付き合った。初めての彼女だった。

特に不備があったわけでもない。ただ、彼女が他に好きな人ができたのが原因らしい。それって浮気じゃないのか、とも思うけど、もう別れてしまったから何を言うにも遅すぎる。

でもそこまで悲しくはない。俺は元々そういう性格なんだ。


こうして帰り道をスタスタと歩き、いつもと同じように帰っている自分を誰かが見ても、きっと振られた直後だなんて思わないだろう。俺も『振られた』という感覚は無い。ただ『彼女がいなくなった』という感覚だ。わかりにくいか。

中学を卒業して、今後の練習のためにと、実家近くで暮らしているこのアパートにも、住み始めてから早半年とちょっと。彼女を連れ込んだりもしたけど、今となっては過去の出来事だ。

そんなアパートの鍵を開けて入ると、見慣れた1DKの部屋が広がる。

そして制服のままベッドに寝転がり、さっき思ったことをなんとなく考えてみる。

思い返してみて一つわかったことがあった。

俺は付き合っていた彼女のことが『好き』ではなかったのかもしれないということだ。

恋人同士なんだから、もちろん相思相愛なんだと思っていたが、ドキッとしたことはあっても、『この人じゃないとダメだ』と思ったことは無い。それでも付き合った最初の頃なんかは思ったりもしたかもしれないが、それもうわべだけで、勢いと雰囲気に押されて言ってしまったとも思える。そう考えると、振られたというのに全然ショックを受けていないことにも頷ける。納得が行き過ぎる。

では恋愛とはなんなのか?

では彼女とはなんなのか?

では好きとはなんなのか?


ベッドに仰向けになっている間に少し寝てしまっていたらしく、気がついたら部屋の中は真っ暗だった。

外から差し込んでくる明かりを頼りに部屋の電気を点け、カーテンを閉めた。

なにか食べようかと思い、残っていたご飯とシーチキンの缶詰でチャーハンを作ってパクパクと食べた。

そして、さっき意識がなくなる前に考えてたことをもう一度真剣に考えてみることにした。

近くに置いてあったノートを引き寄せてテーブルの上に広げる。そしてボールペンをとって、ノートの一行目に『恋愛とは?』とタイトル代わりに書いた。

そして思いつく順に箇条書きで自分の思う『恋愛』を書いていく。

『相思相愛』『告白してOK』『守りたい』『←彼女が大事』『彼女が一番』『最優先事項』


「……」


いろいろ書いていて思ったのだが、書いても書いても妙にピンと来ない。

漫画や小説やドラマの中で得た知識を書き出しているだけのような気がしてきて、もう『恋愛』という言葉がゲシュタルト崩壊を起こしそうになっていた。書けば書くほど意味がわからなくなってきた。

俺はノートに覆いかぶさるようにテーブルにうつ伏せになった。


「恋愛ってなんなんだよ…」


ここまで自分が恋愛というものを理解していなかったことのほうが、今日振られたことよりもショックだった。

そんな俺の元に何かが起きたのはそう思った直後だった。


「恋愛とは、誰かが誰かと一緒にいたいと思うことです。人を好きになるということは、誰かと比べる必要があります。あの人は嫌いだけど、この人は好き。そういった人間特有の優劣をつけるという能力があるからこその好き嫌いであり、『好意』なのです」


突然目の前から声が聞こえてきた。

そのあまりにもはっきりとした声に、何事かと思って頭を上げる。

そこにいたのは、神社にいそうな巫女服を着た女の子だった。女の子と目が合うと、その子はニコッと笑って続けた。


「だから、まずは誰かを嫌いになるところから始めましょう。誰かを嫌いになるのが嫌なら、私のことを嫌いになってください!」


俺は笑顔で両手を広げてバッチコーイと言っているその子を見て言った。


「…どちら様ですか?」


ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


一応なろうコン大賞参加作品ということもあって、ラノベチックな出来になっています。

これからもよろしくですー。


次回もお楽しみに!

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