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日常の中に一服を

 静まり返った校舎。時折ドアの隙間などから漏れているのか男性教師の声が聞こえる。この時期は生徒たちも期末試験に向けて必死に授業を受けている。そんな生徒たちを後目に私は空き教室で授業をさぼって煙草を吸う。

 美容・健康などなど悪影響を及ぼす点をあげたらきりがない煙草だが、唯一ストレス発散という点では身体にとってはいい影響を与えているのかもしれない。まあ、そのストレスも煙草に含まれるニコチンが原因なのかもしれないが。

 ただ私もそんな毎日吸っているわけではないし定期的に吸い始めたのは二週間前からだ。ちゃんと吸うのは週に三回ある数学の時間だけと決めている。そして場所は小窓のカギが壊れている三階の三〇九教室。扉の鍵はかかっているため私のような生徒を見つけるべく順回している先生にも見つかったことはない。

 今日も私は数学の授業をさぼり、適当に登校途中の書店で買った店員オススメという小説を読みながら一本だけ煙草を吸う。一本吸い終わる時間は大体二十分弱。授業は一時間あるので残りの時間は小説を読んで過ごすつもりだ。私がどうやって煙草を手に入れるかと言うと、愛煙家だった祖父の遺品から取ってくる。名前はガラム・スーリア。私はこれしか吸ったことないので他の人がいうほどつんとした味を体験したことがない。匂いがすごくきついが甘ったるくてその味が癖になってしまった。

 多分この煙草最大の特徴はぱちぱちと弾ける音だろう。火をつけた時に灰や火種が飛び散るのでいつも後処理が大変だったりする。初めて吸う時はその火種が服に燃え移りそうになりびっくりした。今回も火をつけたらぱちぱちという音と共に火種が飛ぶ。そして独特の甘い味、匂いもすごい。一応換気はしているがこれはそのうちばれるかもしれないな、なんて事を思いつつ吸う。少しくらっとするこの感じも心地いい。

「ここまま死んでもいいのかもしれない」

 ふと煙を吐きながら呟く。副流煙が部屋に充満し、甘ったるいが部屋を占拠する。窓から空を見上げるがくもり空なので太陽すら見えない。私は何故か先輩と折が合わず退部した文藝部の事を思い出した。確か退部した日もこんな天気だったからだろう。

 その記憶を追い出すかのようにふうっと大きく息を吐く。そして灰を携帯灰皿に落とす。時間はのんびりと流れていく。


 一本吸い終わる。吸い殻はきちんと携帯灰皿に押し込み、換気のために窓を開けた。その時にどんよりした空から白い雪が降ってきた。白い雪は静かに降り続けていき地上を白く染め上げていく。

 チャイムが鳴った。時計を見ると丁度学校が終わる時刻を指していた。廊下が騒がしい。どうやらぼーっと二十分くらい窓の外を見てしまっていたらしい。さすがに寒くなってきたので窓を閉める。

 窓の外は相変わらず雪が降り続いていた。私は少しすっきりとした気分で帰り仕度を始めた。


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