転校
中2病”病”と付いているが、実際は病気じゃない。
あぁ、でもある意味では病気だな、精神的な意味で……
それが俺、高畑銀が今まで思ってきた中2病に対しての考え方だった。
でも、その考えは覆されることになる。
まぁ、別にバカみたいに覆ったわけじゃない。むしろ変わって無いと言ってもいいかみしれない。
それでも、俺の中で考えが少しだけ変わったのはあの日、俺が私立桜木高校に転校してからのことだ。
転校初日、その日には独特の緊張感がある。そして、そんな緊張感に俺は一生慣れることは無いだろうと思う。
ちなみに言っておくが、俺は何度も転校を繰り返してきたわけじゃ無い。
これは俺の初めての転校だ。
俺は父親の仕事の都合という、全くもってベタで普通極まりない理由で、ここ私立桜木高校2年3組に転校する事になった。
俺は今、2―3と書かれた教室のドアの前で担任に呼ばれるのを待っている。
ドアの奥からは男子生徒達の「女かな?」「女ならかわいいのが良くね?」等と話しているのが聞こえてくる。
悪いな、女じゃ無くて……
心の中でわびておく。そう言うことなんで、怒らないでくれたらうれしいな。
なぁ~んて思っていると教室から担任の呼ぶ声が聞こえた。
どうやらその時が来たようだ。覚悟を決めて教室の中へ踏み出す。
教卓の前に立ち、「高畑銀です」と軽く自己紹介をする。
クラスメイトからの視線が痛い。
なんだその目は!?
俺にこれは以上求めたってなにもでねぇぞ!
そんな俺に救いの手がさしのべられた。
「よし、高畑の席は夏川の隣だ。夏川、よろしく頼むぞ」
担任が俺の席を指さしながら、これから俺の隣になる少女に声を掛ける。
窓際の一番後ろの席だ。
良かった、これでこの視線から逃げられる……
俺は席に着くと,ちらりと隣の夏川を見る。
ロングヘアーの美しい少女だ。俺は少しの間彼女に見入っていた。
すると突然、夏川と目があった。夏川がニコリと笑う。
転校初日は上手くいきそうだ。俺は内心思った。
だってそうだろう?転校して、いきなり隣に席に美少女がいて、しかも笑みまで返してくれたんだ。
それだけで俺は舞い上がってしまったんだ。
仕方ないだろう?それが男ってやつだ。
1時間目は国語だった。
そしてまたベタなことに俺は教科書を忘れてしまった。
別に狙って忘れた訳じゃない。
本当だよ!? 本当なんだよ!?
今日の朝だってしっかり準備したし、三回もチェックしたし……え? もういい?
俺は仕方なく夏川に教科書を見せてもうために声を掛けた。
「あの夏川さん」
しかし夏川は答えてくれない。
「夏川さん、聞こえてます?」
反応無し。
「あの……夏川……さん?」
またもや反応無し。もしかしたら耳が聞こえないのか、死んでいるのではないかと思ってしまう程だ。
この前やったゲームだったら、「返事がないただの屍のようだ」という会話文が流れることだろう。
(もしかして嫌われた?)
さっきは笑顔を返してくれたのに……そう思っていると、前の席の女の子が俺の方を向いてきた。
俺はビックリして軽く仰け反った。
そんな俺の反応に女の子はクスクスと笑うと、俺に話した。
「夏川さんを呼ぶ時はね、”夏川さん”じゃなくて”狂乱のミサ”って呼ぶと答えてくれるわよ」
そう言うと女の子は前を向いて授業に戻った。
(狂乱のミサァ~?)
さっぱりわからん。
遊ばれてるんじゃないかという疑問が俺の頭をよぎったが、俺は言われたように呼んでみることにした。
「えぇっと、狂乱のミサ……さん?」
「何?」
夏川は笑顔で答えた。
(えぇぇぇぇー、何で夏川さんじゃダメで狂乱のミサなら反応するわけぇ!?)
もうわけがわからない。
だがまぁ、とりあえず反応はしてくれたのだ、教科書だけでも見せてもらおう。
「あの、俺教科書忘れてさ、だから夏川さんに見せてもらえないかなぁ~って」
「夏川じゃない」
「へ?」
訳のわからない返事に俺は疑問の声を上げた。
「夏川夢乃は私の世をすべる仮の名。私の真名狂乱のミサ。この世を絶望へ突き墜とすものの名よ」
俺は耳を疑った。
そして俺は悟った夏川夢乃という人物は、とんでもなく”痛い”人間であると。
こんにちは、細鐘レンです。
中2病な野郎共第1話はどうだったでしょうか?
面白かったと言ってもらえれば幸いです。
この作品は某サイトで連載していたものなのですが、多分知らない人がほとんどな作品だと思います。
作者が無名ですからね(笑)
それでは、中2病な野郎、第二話でお会いしましょう!