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隊員たちを部屋に下がらせると、スライムは広いロビーのソファーにどっかりと乱暴に座った。その隣にヤヲが行儀良くちょこんと座る。
「さっさと、話ってのを始めろよ。」
「ええ、その前に、少々お待ちくださいね。」
青年はユリを二人の対面に下ろし、上着を跳ね上げて隠しから大きな銃を取り出した。
「錬金術の遺物ってやつか。それでどうするつもりだ?」
さすがのスライムもずるりとした体を固くする。ヤヲは腰を浮かせて、防御のために詠唱陣を形作った。
「いくら俺でも、お客様に銃口を向けたりはしませんよ。」
彼はがちゃりと音を立ててホルスターを開き、銀色の弾を装填する。がちゃ、かちゃりと小気味よい金属音を奏でて、発弾の準備は整えられた。
ばさりと展開されたコウモリ羽に運ばれて、青年はカウンターの向こうに飛び込む。
腹筋に染み込む銃声と、哀れな吸血鬼の悲鳴があたりに響き渡った。
「ちっ! この程度じゃ死なねぇか!」
額から一筋の血を流し、それでも日傘をしっかりと掲げた吸血鬼が引きずり出される。
「ほら、おやじ! お客様にご挨拶しろよ!」
どさりと投げ出されて、オヤジは情けなく頭を下げた。
「改めまして。私がこの小鳩会館の主、シン=テ=カナサでございます。こちらは息子で、宿主見習いの……」
がちゃり。
「昼は、俺がここの主だ!」
「ううううう、昼の部主任、サケヤ=ウ=カナサでございます。」
「挨拶はいらねぇ。さっさと話を聞かせろ!」
語気荒いスライムの言葉に、オヤジが震えた。
「後生でございます。ここにお泊まりください。でないと、あの子達を養ってゆけないのです。なにとぞ、なにとぞ御慈悲を……」
「ンな卑屈になるこたぁない。俺が育てたスタッフ達は超優秀だ。ウチのサービスはどんな高級ホテルにも負けやしねぇよ。」
胸を張るサケヤを、スライムが鼻先液で笑った。
「ガキばっかり集めて、『高級ホテルごっこ』かよ。」
肉食の瞳と、眼球液がぶつかり合って火花を散らす。
「あいつらを馬鹿にすんじゃねぇよ。」
「そっちこそ、客を馬鹿にすんじゃねぇよ。」
ぎりぎりと額を突き合う二人を無視するように、ヤヲは吸血鬼を振り返った。
「あの子達はどこから?」
「あれは、ここにお泊まりいただいたお客様の子供達でございます。」
がちゃりと、撃鉄をあげる音が響く。
「まて、オヤジ。説明は俺がする。」




