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ボクはロリなスライムじゃないよ。イケメンになりたいだけなんだ  作者: アザとー
『姉貴』と書いて向かうところ敵なし
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14

 部屋中を切り裂くかというほどの豪快な剣振音!

ガガキィイイイ!

 金属音が派手に響き渡り、ミョネの体が壁に叩きつけられた。

「腕を……あげたじゃないかい、隊長。」

 黄金の髪を僅かに乱しながら飛び込んできたヤヲは、すっと剣先をミョネに向けた。

「私だって、女性に酷いことをする趣味はありませんよ。しかし、ユリ様を傷つけようと言うのなら、話は別です。」

「くっそう! 皆して姫サン、姫サン……その姫サンがそんなにいいのかいっ!」

 ミョネが両手を合わせ、二枚刃になった剣を力任せに振り下ろす。鈍い音が響き、受け止めた刀身が真っ二つに裂けた。

「いくら腕があったって、そんななまくら刀じゃ、ムリ!」

 笑いながらミョネが跳ね上がる。その体を、ヤヲをかばうように飛び込んだ赤髪の女がド派手に蹴り飛ばした。再び壁に叩きつけられて、ミョネがぐふっと息を吐く。

「これを使いな、ハンサム君!」

「これは……」

 差し出された剣は、何の変哲も無い無銘剣バスターソードにも見える。だが、するりと鞘から抜いた瞬間、部屋中の誰もが息を呑んだ。

「ウチのダンナの最後の作にして最高傑作、『巨人斬フルンティング』だ。」

 ゆがみ一つなく、完璧な直線に打ち出された刀身には、月光すらも細かく砕く魔性の刃紋が匂う。大降りで重厚なその一振りは、切っ先まで光を散らせ、嵐にも似た豪快な剣振音を轟かせた。

「ぐうっ! ずるいぞ、そんないい刀。」

「ずるくなんか無いさ。たまたまウチの物置に、使わない剣がしまってあった。それだけのことさ。」

 ヤヲがぐっと膝を沈める。不利を見て取ったミョネがじりじりと窓際に下がった。

「今日のところは退いてあげるよ。ボクだってまだ殺されてあげるつもりは無いからね。でも、この次は……」

 窓の下に、動く松明の火。村中のあちこちから、明りを掲げた隊員たちが集まってくる。

「ぐうううううっ! 卑怯者めがあっ!」

 ミョネは怒りに目をむき、部屋中をぐるりと見回した。

……人質を。取りあえず掴んで引き寄せられるだけの隙さえあれば、相手は誰でも……

「一緒に来てもらうよ、スライムっ!」

「えええっ、やっぱりぃいいい?」

 がばっと動いたミョネの背中に、どすん!と蹴りの衝撃が走った。

「ウチのチビ助に、何をする気だい?」

 しゅこーと妖しげなオーラを立ち上らせるサクテが……怖いっ!

「逃げ出すときはねえ、逃げることだけに集中しな。」

「くそっ、くそっ、ドちくしょっっ!」

 ミョネが大きく体をねじり、窓を突き破って表へ飛び出した。階下で微かな金属音と怒号が上がるが、すぐにそれも静まる。

「おい、どうなった!」

 ずるりと覗いたスライムに、隊員が大声で答えた。

「すまない、逃げられた。」

「人死にが出てねぇなら上出来だ。」

 スライムはずり、と肩の力を抜く。

「それより、お前ら! なんで来たんだよ!」

「オレタチを出し抜こうなんてあまいんだよ、新入り!」

「交代で見張ってたんだ!」

「お前にだけ良いカッコさせてたまるかよ!」

 サクテがスラスラの肩を叩いた。

「良い連中じゃないか。」

「あたりまえだろ。俺の『仲間』だぜ。」

 外皮の下でぽこりと心地よい音を立てて、スライムが笑う。姉は少し眩しそうな笑顔で弟を見下ろした。



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