表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボクはロリなスライムじゃないよ。イケメンになりたいだけなんだ  作者: アザとー
『姉貴』と書いて向かうところ敵なし
38/194

 酒宴の賑わいを僅かに避けて、赤い花咲くチネスの根元に一人うずくまったユリは、抱えた大鉢の中身を黙々と食していた。

「ンなところに居たのかよ。」

 ずるりと植え込みをすり抜けたスライムが、安堵の溜息をつく。

「俺にも少しくれよ。」

 無言で差し出された大鉢に、スライムはみっともなくずる、と顔を突っ込んだ。

「こんな姿、他人ひとに見せれっかよ……」

 それでも今は信頼する主しか居ないことに安堵して、スライムはべろりと一気に、鉢の中身を飲み下す。腹にぷかりと浮かぶそれを舌液でゆっくりと味わいながら、掛け値なしの賞賛を唸った。

「なんだこれ、むちゃくちゃ美味い! 少し甘めなのに、しつこい感じは無く、塩気とのバランスも絶妙だ! フセチィージの特色である素朴さも良く出ていて……ぐわああああ、飯が欲しくなる!」

「大げさ。」

「いや、マジで美味いって。ユリ、この辺ではなあ、『フセチィージの上手い女は良いお嫁さんになれる』って言うらしいぞ。」

「お嫁さん、婚姻……」

 ユリがふっと微かな笑みを漏らした。

「やっと笑ったな。」

「ユリ、無表情。」

「はぁ? 馬鹿言うなよ。8割引だから解りにくいってだけだろ。こんなに感情丸出しなのに、無表情とかありえねぇよ。」

 スライムはずるりと銀髪に手を伸ばし、柔らかいしぐさで撫でる。

「悲しい顔をしていた理由は? 俺にも言えねぇか?」

 柔らかい体に、ぽふんとユリが顔を埋めた。その声はいつにもまして抑揚乏しく、小さい。

「母、父、恋した。奇跡、言った。」

「ああ、『結婚』すら道具になる王族では、好きな相手と結ばれるってぇのは、確かに奇跡だろうな。」

「魔族、人、寿命違う。一緒、暮らせない。」

「そうか、庶民ならともかく、王族だからな。そんな効率の悪い『結婚』は認められないわけだ。……だから『婚姻外』なのか。」

「父、母、大事。母、殺した、ユリ……嫌う?」

 スライムは椅子のように体をくぼませ、ぱふっとユリを抱き寄せた。

「父ちゃんってのは、娘に激甘な生き物らしいぞ。一般的に。」

「陸路、大変。ユリ、来るな?」

「ンなこたぁねえよ。きっと歓迎してくれるさ。」

 言いながらもスライムは、自分に対しても『ウソ』をついていることに気付いていた。同じ不安は、自分の中にもある。だが、例えそれを隠してでも、彼は小さな少女にただ笑って欲しかった。 

「……歓迎?」

 それでも一向に晴れないユリの様子に、ちり、と外皮がこげる心地を感じたスライムは、その小さな体を包み込むように抱きしめる。

「もし、魔王がお前を嫌っていたら……いらないって言いやがったら、俺が……お前をさらってやる。」

「……婚姻?」

「馬っ鹿、俺に姫さんを娶る甲斐性なんかあるかよ。それでも、仕事を探して……何とか食わせてはやるさ。俺はお前の『寝台』だからな。」

「王族、なくなる。寝台、ない。」

「俺は王族の姫君の寝台になった覚えはねぇ。ユリ、俺は『お前の』寝台だ。」

 ユリは優しい弾力に全ての体重を預け、頬を摺り寄せる。

「スラスラ……一緒。」

「ああ、ずっと……」

 スライムは、自分の気持ちをしっかりと見据えようとした。

(別に、エロい気分にゃぁなんねえな。ただ……)

 少しでも近づきたい。触れ合っている今よりももっと近くへ、深くへ、ただ優しさだけでこのオンナを満たしてやりたい。全ての悲しみから隠して、守りたい……

(恋なんかじゃねぇよ、これは。)

 湧き上がる庇護欲のままに、ただ抱きしめたいという思いのままに……より深く窪みこもうとする弾力を、ユリの声がさえぎった。

「スラスラ、ウィプス!」

「あ? お前のか?」

「違う、そこ。」

 すっかり暗くなった夜の空気に誘われて、足元の草むらから二つ三つ、小さな黄緑色の光が舞い上がる。

「ウィプス。」

「ウィプスじゃねぇよ、蛍だ。ちっこい虫が光ってるんだ。」

 屋敷の裏手に引き込んだ用水から上がってきたのだろう。一つ、また一つと光が寄ってくる。


お気に入り登録100突破ありがと~!

記念に別館に追加っす!

よろしければ『ボクはロリなスライムじゃないよ・・・ファンタジー用語辞典』でお楽しみください♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ