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ボクはロリなスライムじゃないよ。イケメンになりたいだけなんだ  作者: アザとー
『姉貴』と書いて向かうところ敵なし
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お待たせしました!

楽しんでいただけば幸いでっす♪

 陸路での移動は効率が悪い。大人数ともなれば尚更だ。

 荷を積むための大型の馬車は重く、牛馬達の消耗は激しい。乗用の馬とて数が足りているわけではなく、ほとんどの兵は歩きでの移動を余儀なくされる。おまけにコレだけの大所帯。移動の日数ひかずが多くなるほど、食費や宿代もかかる。決して賢いやり方ではないだろう。

 がたがたと揺れる馬車の中で、スラスラは平べったくくぼませた自分の上にユリを座らせていた。小さな主の乗る馬車は白くつややかに塗られ、金細工の意匠が施された豪奢な外観をしてはいるが、砂利踏む木製の車輪は絶えず軋み、石を踏んで跳ねる。

「誰だよ! 馬車で行こうって言い出した奴ぁ!」

 弾力のある体でユリに伝わる衝撃を弱めながら、スライムは少しキレ気味だ。

「がたがた地べたを這って行こうなんてのは、金のねぇ貧乏人のやることだぞ!」

 さして大国でないとはいえ、ノーニウィヨの国土は決して狭いわけではない。まして、『人の王都』から『魔の王都』までは、縦に長いこの国を縦断する行程であるために遠く、通常、貴人の移動には空路が使われることが多い。

「ッたくよぉ、いくら中身液体スライムだって、こうも揺すられちゃあ、おかしくなりそうだ。」

 指先で小さなウィプスを遊ばせてたユリが、動きを止める。

「父……陸路、指定。」

 その声が暗く沈んだものであったことを、スライムはいぶかしんだ。

「別に責めてる訳じゃねぇぞ。ただなぁ、文句でも言わなきゃやってられ……うわっと!」

 がくんと馬車が大きくゆれ、スライムの上で小さな体がぽよんと跳ねる。

「また脱輪かよ!」

 ユリを下ろしたスライムは、ずるりとギガントの容姿をとった。

「ちょっと見て来る。お前はここに居ろよ。」

 

 堅固が売りのイマジフー材も、長旅に疲れていたらしい。ぱっくりとささくれ立つように割れた輻木スポークを覗き込んだヤヲは、渋い顔をした。

「あーあー、今度は本格的にいっちまったな。」

 スライムはギガントの大柄な体を使って、歪んだ車輪をぎしっと持ち上げてみる。

「これでは……長逗留してでも、鉄製の車輪に取り替えたほうがいいですかね。」

「ンなこと、俺に聞くなよ。ただ、一つだけ言わせてもらうなら、ユリが狙われている以上、本来なら一つ所に留まることは極力避けたい。」

「それに、長旅に耐えられるだけの車輪が作れる、腕のいい鍛冶屋を探すとなると……」

「うー、あまり頼りたくは無いんだが……でもなぁ……あああ、仕方ねぇ!」

「心当たりが?」

「この街道をそれて、2キロほど西にでかい村がある。ミジホというところだ。」

「そのぐらいは解ります。鉄鋼の加工で有名なところですよね。」

「そこにイェ=ウィ=イチという職人が居るんだが……」

「知っています! 幾振りもの名剣を生み出した、超名工じゃないですか!」

「へえ、あの親父、そんなに有名なんだ?」

「お知り合いなんですか?」

「一番上の姉の嫁ぎ先だ。」

 ヤヲが飛び切り素っ頓狂な声をあげた。

「お姉さんン!?」

「ンだよ、俺に姉が居ちゃいけねぇのかよ。」

「いえ、イメージ的に一人っ子なのかと……」

「色々と失礼だな、お前は!」

スラスラは手を離した車輪が、がたりと崩れる様に溜息をついた。

「あそこのデカイ工房なら車輪も楽勝だろうよ。俺が口聞いてやる。……取り合えず、ミジホに向かおう。」

 さらに大きな溜息がその口からこぼれた。

「ああ、面倒くせぇ……」


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