表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/194

13

 空は既に薄明け始めている。

 町外れの下水の出口に集まっていた護衛団の兵士達は、黒い甲冑を引きずるようにして現れた『大人の姿』の主を助け起こし、ほっと安堵の溜息を漏らした。

「なんじゃ、わしには誰も手を貸してくれんのか。」

 次いで這い出してきた紫甲冑のデュラハンに、全員が最敬礼を捧げる。

「畏まる必要はない。ただ、その辺のかわゆいおねーちゃんに手を貸してもらえれば、この年よりは満足なんじゃが?」

 その虚しい軽口に、隊員の一人が痺れを切らした。

「ヤヲ隊長は? 一緒じゃないんですか!」

 脇に抱えた首が、渋い顔で舌打ちする。

「ああ、あいつらは……」

 突然、ユリがガバッと膝を付き、隊員たちの前に額をつけた。

「お願い、一つ。」

「ユリ様、なにを!」

 主の土下座に一同は騒然に包まれ、駆け寄った女兵士がその両から手を伸べてユリを抱え起こす。

「魔法、ダメ。助ける、出来ない。ヤヲ、スラスラ……」

 表情の無いユリの頬を、涙が伝い落ちた。

「……スラスラ……」

 足りない言葉よりも、たった一筋の涙がその心情を雄弁に語る。

「あのスライムを……助けたいのですね。」

 頷くユリに、不満の声が上がった。

「無理だ! あのスライムは信用できない!」

「ユリ様だって、ひどい目に遭わされたんでしょう!」

 ユリが喉も裂けんばかりの大声を上げる。

「しない!」

 初めて聞く無口な彼女の怒号に、一同が凍りついた。

「エロい、ちがう。トレース。スラスラ、身代わり!」

 涙に濡れた瞳が一人一人の顔を見回す。

「お願い、一つだけ。」

 取り縋るような涙を見上げて、クアネの首が大きな溜息をついた。

「お嬢ちゃん、それはずるいぞぉ。」

 がちゃり、と、紫の甲冑が動く。

「隊長を助けたい者はついて来い。小童はそのついでじゃ。」

 がちゃり、がちゃりと装備のこすれ動く音があちこちで起こった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ