決断すれば・・・
まさかの一日二回更新
side:死神
昨日千夏に明日も来ると言ったんで、
有言実行とばかりに病院に昼過ぎぐらいに千夏の病室に来たんだが……。
「なんで病室に居ないんだよ」
明らかにトイレに行ったとかそういうのじゃないし、手術のための体力作りの散歩でも無い。
逃げたのか?
いや、あいつにはいつ死ぬかは言ってない。
それに千夏は俺と会うのを楽しみにしているように見えた。
「めんどくさい事をしてくれたな」
そう言いながら俺は目を閉じ、力を込め見開いた。
俺の固有能力の一つ、過去を垣間見る瞳。
魔力を少し消費するが、そんなこと今は関係ない。
病室をぐるりと視回す。
……病室から出ている。
俺がここに来てから5分ぐらい、その間に帰ってきてはいない。
そして病室から出た痕跡。
……病院から抜け出しやがったな!
早計かもしれないが、これ以外、俺には考えられない。
俺は瞳を使うのをやめた(瞳は便利だが、使いすぎると気持ち悪くなるんでな)。
そのあと窓枠に足を掛け飛び降りた。
正確には飛んだ。
漆黒の翼を広げ、力強く風を掴み、一気に上昇する。
地上で捜すよりも空から捜した方が見つけやすいだろう。
病気の、しかも入院生活の長い身体じゃ、
そう遠くまでは行けないだろう。
さっさと捜し出してやる!
side:死神 Fin
※
side:千夏
三時ぐらいに病院を抜け出して、病室からいつも見ていた空き地に着いたのが十分前。
千夏の目の前にはすごく綺麗な夕焼け空が広がっている。
病室からじゃなく、病院の外で見る、本当に久しぶりに見る風景。
これが見たかった。
しぃ兄は千夏はもうすぐ死ぬって言ってた。
多分それは手術が失敗するからだと思う。
手術までまだ四日あるけど、抜け出せるのは今日ぐらいだし、
それなら千夏は怒られても病室のお外で大好きな風景が見たかった。
しぃ兄、怒ってるだろうなぁ、先生も、お父さんもお母さんも。
でも、後悔なんてしない。
する気もないから。
! 後ろの方から足音がする、しぃ兄かな?
「しぃ兄?」
振りかえりながら言った、その先にいたのは、
「お嬢ちゃん、一人かい?」
知らないおじさんだった。
side:千夏 Fin
予想外です。
出来ちゃうなんて…