はじめては・・・
一度消してしまった…
side:死神
「さて、さすがに病院に戻らないとまずいだろ。
先生やお前の両親も心配してるだろうからな」
「あ……、忘れてた……」
おいおい、忘れんなよ。
「怒られる……よね?」
「絶対な」
てか、怒らないほうがおかしいだろう。
「俺も一緒に謝ってやるからよ」
「すっっっごく帰りたくないんだけど……」
俺に何とかしてよ的な目線を向ける千夏。
「諦めろ。
こればっかりは俺にもどうにもならん」
「…………」
「さっさと帰るぞ、
これ以上遅れたら俺自身もタダじゃすまん」
現在時刻は六時半だ。
辺りを見渡すと完全に闇に包まれほんのりと街灯の光が照らしている。
小学生なら家にいる時間だな。
そんな時間に俺は病人の、ましてや脱走者を病院に連れて行くんだ。
大目玉で済めばいいが……。
「帰ろっか、しぃ兄」
「ああ」
俺は千夏の手を握り林から出た。
「あ、そうだしぃ兄、
目をつぶって座ってくれる?」
林を出たあたりで千夏が言う。
何でまた、と思ったが口には出さなかった。
いや、出せなかったというほうが正しいだろう。
千夏の言葉一つで俺は本気で警察の世話になる可能性がある…。
少しでも機嫌を取っとかないとな。
「ん……、まぁいいけど」
俺は目を閉じ地面に腰を下ろした。
腰を下ろすと言っても片膝を立てた状態だ。
「えへへ、しぃ兄助けてくれてありがとう♪」
なんか唇に温かい風、というか吐息がかかったと思ったら。
チュッ
「!?」
俺は思わず目を見開き、器用にも座った状態で摺り足で後退した。
今俺の顔を見たらゆでだこの様に真っ赤になっている事だろう。
顔が熱い。
「な、ち……千夏。
何をした!」
右手で唇を押さえながら言った。
さっきの行為は明らかに…。
「えへへ、チューだよ、キスって言った方がいいの?」
そんなこと知ってるわ!!
て、俺の問いに答えただけなのに逆ギレしてどうする。
やっべ、混乱してる……。
「ふふふ、千夏の初めてあげちゃった」
そんなうれし恥ずかしい様に言われても……。
時間にして一秒に満たない事、
触れるだけの所謂ソフトキスだ。
それだけで俺の精神力は半分以上削られた。
俺って自分でも薄々気づいてたけど初心だな……。
「何で俺にキスしたんだよ!」
感謝を行為に表したらそうなったのか?
そんなバカな……
「乙女の秘密だよ」
その言葉は二回目だぞ。
「ほら、そんな事より早く病院に戻ろうよ」
そういって千夏は歩き出す。
「お、おい。待てって」
あわてて立ち上がり、千夏を追う。
俺達は光の元に戻っていった。
side:死神 Fin
死「………」
………
「どうしてこうなった?」
俺に聞くな、千夏が勝手に動いたんだ。
「プロトと全然違うぞ!!
勝手に動いたとかそういう問題じゃねぇ!!」
ちくしょおおおおお、キャラに嫉妬する俺が嫌だああああああ。
「壊れたか…」
壊れてるのは元からだ。
とりあえずコメントして下さったなつほさまどうもありがとうございます。
友人以外でのコメントは二回目なのですがこの感動は当分忘れられません。
「いきなり正気になるなよ…
まぁいいさ。
次回、閑話~千夏のファースト~
お楽しみに」