異世界、おにぎりを握る
召喚されたけど捨てられた異世界人、ギルドの人たちのために『聖女様』のもとでおにぎりを握る。
「まさか、異世界でおにぎりを握ることになるなんて」
俺は呟く。
しかも、大量に握った。市場に『元の世界』の食べ物(具材、でいいのか?)があったので、おにぎりに入れてみた。
初日なので挑戦はしなかった。慣れたら『こちらの世界』の物も、入れてみたい。
カゴに入れる。
「あの人は、聖堂だろうか?」
聖堂に行く。
『聖女様』は、膝をつき、聖堂で祈っていた。
高校生だった俺より、少し歳上の、この人。
立ち上がると、
「じゃあ、行きましょうか?」
「ギルドの皆さん、今朝のおにぎりです」
聖女様は笑顔で言う。
「待ってました、聖女様!」「聖女様のオニギリ、最高です!」
「職員の分、残して下さいね?」
「「「いただきます!」」」
…、日本の文化異世界に伝わりすぎだろ。
まあ、日本人としては嬉しいんだけど。異世界に来ても、流れてる血は日本人なので。
そして、おにぎりの奪い合いがはじまる。
握った俺としては嬉しい、けどドキドキする。『俺』じゃなくて『聖女様』が握ったことになってるのが、少し、アレだけど。まあ、居候だし。
「何だ!? すっぱい! だが美味い!」「こっちは変なのが入ってる! 新しい! そして美味い!」「聖女様、今日は面白いな! そして美味いぜ!」
ジロ、と聖女様に睨まれる。苦笑で返すしかない。
梅干し、おかか、昆布を入れてみました。本当は鮭や明太子やツナマヨも入れたかったんだけど流石になかったので。
「味、大丈夫ですか?」
聖女様は心配そうにして皆に聞く。
「「「今日はいつもよりも美味い!」」」
「あはは」
「「「おにぎりに愛情を感じる! いつもよりも!」」」
「…あはは」
「これからお前が作れ」
「はい、居候なので握らせてもらいます」
「聖女様よりも捨てられた異世界人の方が愛情あるって何だよ、くそが」
「あなたの愛情がなかっただけでは?」
「あ?」
ギロ、と睨まれる。
本性隠す気ないな、この聖女様。
夜、聖堂のそばにある家に俺らはいる。
「で、何入れたんだよ。焦ったんだが?」
「昨日買ったやつです」
「ああ、ウメボシとか、コンブとかか。
おにぎりにそんなもの入れていいのか、流石ニホンジン」
感心される。
おにぎりは伝わっていても、入れることは伝わっていなかったらしい。
「ま、いいや。お前が作れよ? 図書館の利用は、私がなんとかしておくから。ギルド長の姉ってことで、なんとかしてもらえるはずだから。本当は図書館、研究者か、貴族しか利用できないんだけどな」
私のおかげだよ、私のおかげ、と言いながらバンバン机を叩く。
…、裏ではぐうたら聖女様。
人前では清楚って感じなのに。
「で、でよ。おにぎり初日、皆に全部食べてもらえたけどよ、どうだった?」
ニヤニヤしながら聞かれる。
俺はうなずき、
「よかったです」
ありがとうございました。
少年がこちらの世界へ帰れますように。




