“普通の人間”
僕は少し人と違う。
みんなが笑っていないタイミングで笑い、みんなが泣くタイミングで無感情。
怒りの感情も全く無い。
だから僕は普通の人間に近づきたいといつも思っている。
普通の人間になれば、「なんでこの人今笑ってるの」という冷ややかな視線を浴びないで済む。
そこで僕は購入したのだ。
パラメータ変動薬を。
例えば、「笑い」のパラメータ変動薬を飲むと、「笑い」の感覚が普通の人間に1近づくということだ。
しかし、喜怒哀楽どの要素が出るかは、買ってみないとわからないという仕組みになっている。
おそらく大量に購入することで、”普通の人間”に近づくことができるはずだ。
毎日高いお金を払って、一つずつ薬を飲んでいく。
流石に毎日購入していると生活に支障が出始めてきた。
食生活も実家から送られてくる米だけを食べている。
そして一年が経とうとしていた頃、ネットニュースがスマホに入っていた。
「パラメータ変動薬詐欺!効果は全く無し。」という見出しだった。
すぐに記事を読むと、科学的にも効果がないと証明されているらしかった。
僕は激怒した。
今まで怒りという感情がなかったのだが、これが、「怒り」の感覚か。
僕は歓喜した。
怒りという一つの感情が解き放たれ、普通の人間に近づく大きな一歩になったと感じたからだ。
そうだ。普通の人に近づいた記念に1人でお祝いをしよう!
僕はすぐさま庭で緑のものを集めた。
カエル、バッタ、雑草を大量に。
そしてお鍋に入れてグツグツにて40度になったくらいで浴槽に入れ、カエルたちと一緒に風呂に入った。
今日は特に”普通の人間”に近づいた貴重な1日だったので安眠出来そうだ。