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小心者なケダモノ

『菜緒ちゃんの態度、まるで俺のこと好きみたいだ。何回も何回も期待して馬鹿みたいだけど、でも、確かめてみたい』

 坂田はギュッと両手を軽く握るとコクリと唾を飲み込んだ。

 そして、鈴木の方をジッと見つめた。

「ねえ、菜緒ちゃん」

 坂田が声をかければ、鈴木がトロンとした瞳をこじ開けて彼を見つめ返し、

「なに? 大和君」

 と、首を傾げる。

「俺も、菜緒ちゃんのこと触りたい」

 激しく緊張していたが、できるだけ声を震わせないようにして強請ると、鈴木は柔らかく微笑んだ。

「いいよ。おいで」

 大きく両腕を開いて、お好きにどうぞと坂田に身を委ねる。

 坂田はモフッと彼女の胸に抱き着いて、心臓付近に耳をくっつけた。

『心臓の音、早いけど安定してて落ち着く』

 トクン、トクンと鳴る癒しの音で鼓膜を揺らし、下からチラリと鈴木の顔を覗き込む。

 鈴木は坂田と同様に目を細め、安心した表情を浮かべていた。

 坂田は何となく、ブラウスのふくらみを片方だけ手のひらで包み込んで指を動かした。

「菜緒ちゃん、恥ずかしい?」

 問いかけると、ほんのり頬を染めた鈴木が「少しだけ」と頷く。

「菜緒ちゃん、ここ、直接触りたいって言ったら触らせてくれる?」

 大きなソレを下から軽く持ち上げて問いかけた。

 言葉を理解した鈴木が、みるみるうちに顔を朱色へ染めていく。

 しかし、酷く汗ばんで真っ赤になる体に反して鈴木はコクリと頷いた。

「菜緒ちゃん、開けて、出して」

 坂田自身も驚くほど甘えた声が喉の奥から漏れ出す。

 彼のかわいらしくも色っぽい雰囲気にのぼせた鈴木がコクコクと頷いて、器用にブラウスのボタンを外していった。

 前が大きくはだけて露出させられた艶やかな柔肌が、レースたっぷりの可愛らしい布の中でプルンと揺れる。

「……」

 下着も取り去った方がいいのか。

 迷う鈴木の指先が下着の縁にかかる。

 それを、坂田が上から包み込んで止めた。

「このままで大丈夫だよ」

 坂田の言葉に反応して、俯いたままの鈴木がコクリと頷く。

 それから彼女は両腕をダランと床に下ろして、酷く無防備な体勢をとった。

「菜緒ちゃん、全然喋らないね」

 元から静かで言葉も少なくなりがちな鈴木だが、それにしても黙りこくって俯いたままであるのが気になる。

 酷く不愉快な感情を押さえ込んだり、気持ち悪さを緩和したりするために、ジッと縮こまって黙り込んでいるのではないかと不安になって、坂田は鈴木に触れる前に彼女の顔を覗き込んだ。

 坂田の顔が視界に入り込んだ瞬間、鈴木の恥ずかしそうに細められていた目が大きく開く。

 それから彼女は、すぐにフイッと坂田から目を逸らした。

「俺に触られるの、やっぱり嫌?」

 心配そうな声に鈴木がフルフルと首を横に振る。

 そして鈴木は小さく口を開くと、ボソボソッと何か言葉を発した。

「何? 聞こえないよ、菜緒ちゃん」

 声を聞きとろうとして、坂田は半無意識で耳を鈴木の口元へ近づけた。

「早く、触って。その方が恥ずかしくない」

 熱をはらむ吐息が小さく、小さく懇願する。

 坂田は請われるがまま、繊細な柔らかさに触れた。

『あまくて、ふわふわで、いいにおいがする。もうすこし』

 茹だる脳が浮つきだして、坂田は興奮に身を任せた。

 恥ずかしくなって逃げがちになる鈴木を追って、仰向けに寝転ばせる。

 じゃれるような抵抗を何度も無視した。

 そして、坂田は当初予定していた以上の悪戯をトロトロと甘い心地で満足するまで繰り返した。

「ごめんね、触りすぎちゃった」

 困り眉で謝罪を入れる坂田の眼前では、真っ赤に体を火照らせた鈴木が床の上でデロリと溶けて、高熱の時のような浅い呼吸を繰り返している。

 モゾモゾとブラウスの前を片手で簡易的に閉じ、露出した肌と鮮やかについた痕を隠す鈴木は酷く色っぽい。

 坂田は鈴木の目元に浮かぶ純粋な涙や濡れた唇を激しく貪り、隠された上半身をもう一度暴いて滅茶苦茶にしたくなる気持ちを押さえ込むと、心配そうに彼女を見つめた。

「お相子だから、平気」

 一拍おいて、鈴木がかすれた声で返事をした。

 確かに鈴木もクタリと倒れ込む坂田に甘えていたわけだが、事の激しさは彼の方がずっと上だろう。

「お相子にしてくれるんだ。優しいね」

 坂田が柔らかい瞳を細めてクスクスと笑うと、鈴木はよく分かっていない様子で、

「ん? うん」

 と、返事を返した。

 すると、その様子が愛らしかったのか、坂田がさらに目元を和らげてクスクスと口角を上げた。

 ニコニコと微笑まれた鈴木が空いている方の手で真っ赤になる顔面を覆い、彼からプイッと顔を背ける。

「どうしたの? 菜緒ちゃん。気持ち悪くなった?」

 鈴木に覆い被さっていた体をほんの少しだけ起こし、彼女と微妙に距離をとって問いかける。

 坂田の中では未だに教室で抱いた疑念がグルグルと渦巻いていて、鈴木が自分のことを本当に好いているのか信じられていない状況だ。

 そのため、坂田は嬉しそうに笑う彼女がいつ本性を露わにして自分にビンタを飛ばし、怒声を上げてくるのか、あるいは、白く美しい腹の中でどんなに汚らしく自分を罵っているのか、気になって気が気じゃなかった。

「気持ち悪い? なんで?」

 キョトンとした様子の鈴木が、そのままの勢いで坂田の顔を覗き込む。

 今度は坂田が目を逸らした。

「いや、俺に触られたから。不快だったかなって」

「さっきから、なんで、そんな風に言うの? 恥ずかしくなるけど、でも、私、大和君に触られるの好き。だから、不快になんてならない。ただ……」

「ただ?」

「ただ、大和君、雰囲気変わるんだなって、思って、恥ずかしくなった」

「そうなの?」

「普段はかわいい。今は、カッコイイ」

 頬を染めてキラキラと目を細める鈴木に坂田は思わず、「そうなの?」と首を傾げた。

 すると、鈴木がシッカリ頷く。

「いつもは巣穴に潜んで外敵から身を守りながら過ごす系の小動物っぽくて、今は生肉を貪り食う肉食獣みたいな感じがする。エッチ格好良い。好き」

「よく分かんないけど、ありがとう。菜緒ちゃんは普段は動じないハシビロコウみたいな感じなのに、触られてる間だけ動揺して逃げ惑おうとするハムスターみたいでかわいかったよ」

「それ、褒めてる?」

「褒めてるよ、本当に」

 訝しげな表情になる鈴木をクスクスと笑って、坂田は彼女の決壊したブラウスを元に戻していった。

 そして、布でふかふかになった鈴木の胸に柔らかく顔を埋めた。

「ねえ、菜緒ちゃん、ちょっと質問してもいい?」

 相変わらず、自分でも引いてしまうような甘えた声で強請る。

 鈴木は「いいよ」と頷いた。

「菜緒ちゃんさ、もしかしてなんだけど、菜緒ちゃんって本気で俺のこと好きだったりするの?」

 後頭部をモフモフと温めて、ジッと彼女の顔を見つめながら真剣に問いかける。

 パキリと硬直する鈴木の唇を、坂田は判決でも聞くような硬い心地で見守った。

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