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「お忙しい中申し訳ありません、国王陛下」

「構わない。ザリエル教皇のお加減はいかがか」

「まだ伏せっておいでです。聖女の力がこの国から消えたことが原因の一つかと」


上座の大きな椅子にはホレス、その隣の椅子にハミルトンが、その対面にはフィンレーが着席していた。

まさか教皇の不調はジュリアが影響していると聞かされ、ホレスは動揺する内心を悟られないように、そうか、と短く答えた。


「私は以前から聖女はイザベルなどではなく、ジュリア様だとお話ししていました」

「し、知らない!皆はイザベルが聖女だと」


ハミルトンが焦ったように取り繕うが、フィンレーは表情を変えること無く続ける。


「ジュリア様は聖女故に、幼い頃から聖母より試練を課せられていました。

この悪魔を滅することは大きな試練であり、それを見事成し遂げられたのです。

ジュリア様がいなければ、国王陛下は病に倒れ、皇太子はあの偽聖女の傀儡となっていたことでしょう」


何と言うことだ、とホレスは額に手を当て、横にいるハミルトンは真っ青になっていた。


「ではジュリアがいなくなったあとはどうなる。

偽聖女は倒してくれたのだ、この国は大丈夫なのだろう?」


ホルスは恐ろしい事実を知らされたが、とりあえずジュリアによって難を逃れたことに胸をなで下ろす。


「いいえ、そういう問題ではありません」


静かながら鋭い声でフィンレーが否定した。


「ジュリア様は我が国の聖女。

それを聖女を殺めた悪魔などと噂されるのは大問題です。

ジュリア様は尊い立場であるにも関わらず皇太子は公然の場で恥を掻かせ、王家は救ってくれた聖女を追い出してしまった。

既に隣国エルザスでは聖女を自国最強の騎士が守り、二人が婚約したことを民は喜んでいるのですよ」

「ジュリアが?!」


居心地悪そうにしていたハミルトンが立ち上がる。


「病に倒れたジュリア様をクラウゼン郷が献身的に支え、二人は想い合ってすぐに婚約したそうです。

既にブラックウッド伯爵も認めているそうで」

「嘘だ!まだそんなに時間は経ってないだろう!」

「皇太子、あの娘と恋に落ちたのは出逢ったその日だったと伺いましたが」


フィンレーの細い目が少し開いて、冷たい視線を向けられハミルトンは言葉を詰まらせる。


「フィンレー枢機卿」

「なんでしょうか、国王陛下」

「貴族や平民に色々な噂が広がり、王家には批判が集まりつつある。

このままではハミルトンを次期国王として指名することも出来ない。

そもそも指名するには婚約者がいることが通例だ。

ハミルトンには急ぎジュリアとまではいかなくても聡い娘を用意しようと思う」

「父上!」


自分の意思は今後一切許されないということに、思わずハミルトンがホレスの上着の裾を掴む。

だがホレスは手でハミルトンの手を払い、ホレスは初めての扱いにショックを受けていた。



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