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4


アンキーロの意識をそらそうと他の者達が戦っている。

せめてあの兵士が隠れているままならまだなんとかなるかもしれない。

オスカーが急いでバルドリックを避難させようと手を自分の肩にかけて立たせようとした時、アンキーロの暴れる音とともにオスカーの近くへ木々の折れたものとともに部下が二人飛ばされてきた。

自分を覆う陰に気づき、バルドリックをかばいつつすぐさま剣を掴んだが一歩遅かった。


(しまった)


自分を潰そうとするアンキーロの足が、スローモーションで迫ってくる。

だが、その足はオスカーの顔から少し離れた場所で何かにぶつかった。

アンキーロも驚いたのだろう、自分の力がそのまま跳ね返ったようで足を踏み外したかのように倒れた。

オスカーはすぐにその理由に気づく。

自分の胸元から強固な防御魔法が展開されたことを。


「隊長!」


その隙にと他の者達がかけより、倒れている仲間を助け起こす。

オスカーはそれを呆然と見てしまっていた。

魔法による防御壁は一定距離に展開されるが、彼らはその防御壁を難なく通り過ぎてオスカーの側へ来た。

防御壁は展開した者などを守る盾。

その盾があるのに外から人が入ってくることなど聞いたことは無かった。


「隊長、今のは一体」


バルドリックが身体を起こしオスカーに問いかける。

オスカーは答えようにも理解出来ていないことを答えられるわけが無い。


アンキーロは大きな身体をなんとか起こすと、今度は長い尾を振り回し土埃が舞う。

オスカー達がその尾を防ごうと剣を構えたが、オスカー側の一番端にいた隊員の前でやはり尾がはじかれる。

一番先に耐える覚悟をしていた隊員は、剣を持ったまま目を見開き固まっていた。

アンキーロも自分の攻撃が効かずに腹を立てているのか、暴れる度に地響きが届く。

だが石も土も一切オスカー達には届かない。

そしてふと気づいた。

この中が異様なほどに浄化されていることを。


(剣が、魔力を溜めていく)


オスカーは剣に魔力を溜めて攻撃するが、大きな魔法を使うのと比例して魔力を溜めなければならない。

そのチャージには通常時間がかかるうえに集中力が必要だ。

それが意識せずに勝手に溜まっていく。


「身体が、動く」


座り込んでいたバルドリックが呟きながら立ち上がっていた。

頭から流れていた血は、固まったのか止まったのか顎から流れてはいない。

立ち上がることも出来なかったバルドリックは立ち上がり、先ほど魔物に怪我を負った隊員達も自分の手を信じられないように見つめていた。


地響きが足の裏に伝わり我に返った

未だに暴れる魔物を前に、防御壁があったとしてもこのままではこの場所から動けない。

ここから逃げるにはこの魔物を倒す必要があるのだが、防御魔法は外からは強くても中から外に攻撃をすればその防御壁は解かれる。

通常は魔物が他に気を取られている際に防御魔法を解いて攻撃するのだが、オスカーが展開した魔法では無くても取る方法は同じだ。

攻撃するのなら他の者が被害に遭わないように一撃で倒さなければならない。


「一撃で片付ける。

他の者達は負傷者を守りつつ後退を」

「しかしお一人では」


他の隊員が声をかけたがオスカーは再度同じ命令を伝え、隊員も表情を引き締め頷いた。


彼らが一定程度後退したところで、オスカーは自分の剣が今までに無いほどの魔力に満ちていることを感じていた。

特別なこの剣だからこそ、魔力がここまで溜められたのだろう。

オスカーは危機的な状況ながらも、この剣を振るったときにどうなるかという好奇心に知らずと口の端が上がる。

恐らく一度で弱点をつけるだろう、そう確信できた。


剣を握り、暴れるアンキーロが上を向いた瞬間、オスカーは下から喉に向けて切り上げる。

弱点といえどもある程度のうろこで覆っているはずなのに、あっけないほど剣は喉元を切り裂いていく。

巨体が地面に倒れ、その魔物の首と胴体は二つに別れていた。

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