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いわゆるジュリアは転生者。

だが、悪役令嬢とかそういう小説ではない。

転生した先は、勇者が主役の冒険物だった。


ストーリーは、リネーリアが魔王に支配され国内は混乱、周囲の国に逃れてきた難民問題と同時に、多くの国で魔物が現れるようになった。

エルザスは難民、魔物の増加による被害、その上リネーリアが侵攻してくるという情報を受け、リネーリアに攻め込む決断をエルザス国王は下す。

魔王城と化したリネーリア城へなかなかエルザスは進軍できずに悪魔と膠着状態が続く中、エルザス辺境の田舎町に住んでいた青年が立ち上がる。

彼の名はルーク。王都にも彼が勇者たり得るほどの能力を持つことは届いていた。


ルークは国王に命をかけて直訴し自らが魔王を倒すことを告げ、国王は近衛騎士団団長で国最強の剣の使い手であるオスカー、そして白魔術師に同行を命令し、ルーク達は魔王城へと向かった。

剣術や体術も素晴らしく人間的にも器の大きなオスカーに、家族全員を魔物に殺されたルークは兄のように慕い、オスカーは小さい頃流行りは病で亡くなった弟の存在を重ねて二人の信頼関係は深まっていく。

だが魔王城での戦闘でルークをかばいオスカーは倒れ、オスカーの思いに答えようと悲しみに打ちひしがれながらも満身創痍で魔王を討ち滅ぼした。


冒険物で友情物。

その小説の熱心なファンだった前世のジュリアは、オスカーへ恋に落ちた。

たまたま友人が話していた本を本屋で見つけて買い、暇つぶしで読んでいたはずが思い切りオスカー沼にはまった。

沼に落下したのは一瞬だった。そして深かった。


最初読んでいたときは、強く自分に厳しいのに器の大きなところはなるほど人気なのは納得だと思っていたが、ふとした弱さや可愛さなどのシーンを読んで乙女心をわしづかみにされたのである。

前世のジュリアのような同士は多く、オスカーが死んだ巻が発売されたときはネットが荒れた。


何故殺した、彼がいるからこそのパーティーだろう、オスカーがいないのならもう読む意味は無い、それはそれはネットのトレンドで上がり続けるだけでは無く、一部の熱心なファンによって葬式まで執り行われ、それがまたニュースになった。


ジュリアは前世で待ちに待った新刊を読んで、推しの死に目が腫れるほど泣いた。

既に会社員だったが、親族が亡くなったのでと会社に有給申請し休んだ。

泣いている声を聞いた電話口の相手は、沈鬱な声でご愁傷様ですと言ってくれたのを覚えている。


もしも、あの敵に気づいていたのなら。

もしも、パーティーにはいっていなければ。

もしも、国一番の剣士でなかったならば。

もしも、悪魔がリネーリアを乗っ取っていなければ。


オスカーが死ぬことは無かったのに。


前世のジュリアも自分がたかが小説の登場人物に、ここまで溺れるとは想像していなかった。

でもオスカーの存在は仕事で疲れる毎日に潤いを与え、この小説を愛する人達とのオフ会まで参加して充実した日々となった。

だからこそオスカーの死による衝撃は大きく、小説内でどれだけ前に戻ればオスカーが助かったのかと考え続け、そんな中で帰宅中、横断歩道を渡っていたら信号無視をした車にひかれ死亡した。


そしてこの世界に転生したわけだが最初ジュリアは、自分が小説の中に転生したことを気づけなかった。

ある程度自分の置かれている状況が理解出来るような歳になったころ、この世界があの小説そっくりなのでは?と疑問を抱き、そもそも小説が始まる時間よりも前に生まれていることがわかった。

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