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「下女として紛れ込んでもよろしいのですか?」

「ジュリアにそんなことをさせる訳がないだろう。

貴女に不自由などさせない」

「しかしそれでは」


オスカーが酷く心配性で、それがジュリアは自分に向けられていることが不思議だ。

ブラックウッド家は心配だが、エルザスと関わる方がおそらく安全だろう。


この国から出て、小説の舞台となったエルザスにいけるという最高の聖地巡礼が出来る可能性があるだなんて思ってもみなかった。

フェルディナントがいて、側にはオスカーがいて、勇者もどこかで生きてくれる。


未だにイザベルを刺し、そして滅した瞬間短剣のグリップから伝わった手の感覚が消えない。

何故か最後笑みを浮かべた意味もわからない。

でも目的は達成できた。

必死に努力し何度失敗しても諦めなかった意味はあった。

そんな自分が報われるようだ。


この後は慎ましく平民として生きて、彼らが生きていることを遠くから知れれば良い。

ジュリアの願いはささやかな物だ。

前世は一般人、転生して貴族の贅沢を味わったとしてもおそらく平民に紛れられるとジュリアは思っていた。


「ジュリア」

「はい」


真剣な声にジュリアは少々ぼんやりした頭を切り替える。


「俺の婚約者になってはくれないか」


ジュリアの脳内に、クエスチョンマークが漫画のように浮かんだ。

ん?とジュリアは首をかしげる。


「あの、今、なんと言われたのでしょうか」

「俺の婚約者になってほしい。

あのような事が置きたばかりで急な話だとはわかっている上で言っている。

それとも、誰か思う相手がいるのか?」


思う相手はいます。目の前の人です、とジュリアは内心ツッコんだ。

部屋には推しと知らずに推しとされている男と、偽聖女を滅した前世庶民の女が二人きり。

オスカーは身体を前に倒し、ジュリアを見る。

表情からは婚約者と言ったのは冗談を言っているようには思えない。

だが信じられず、戸惑いを隠さない目でオスカーに答えた。


「思う相手は、いない、のですが」

「なら俺はどうだろうか。

ただ王子という立場ではないし、近衛騎士団にいながら手に負えない魔物が出たときには俺が出ることも多い。

危険な任務で不安にさせるかもしれないが、妻は君だけしか迎えないことを誓おう。

今すぐに答えて欲しいとは言わない。

だが俺の婚約者になれば、ブラックウッド家にこの国も簡単に手出しはしないだろう。

それに」

「それに?」


口を開こうとしたオスカーは何かに気づき、ため息をついた。

ドアからノックの音がして、オスカーは面倒そうな声でどうぞとドアを見ること無く言う。


「やぁ、お邪魔して悪いね」


にこにこと手を後ろに君で入ってきたのはフェルディナントだった。

すぐに兵士が礼をするとドアを閉める。

ジュリアがすぐに立ち上がろうとしたのを、フェルディナントは座るように言った。

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