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会社での出来事。彼の結婚の目的を知って・・。

「どうするんだよ。俺、やけを起こして結婚しちまったじゃないか。」


「俺でもよかったんじゃないかよ。あいつ、どことなく俺に似ている所が余計に気に食わない。」


前田さんは私の去り際にこんなことも叫んでいた。


後日、前田さんは以前のアシスタントの女性と結婚したことを知った。




そんなある日、実家に電話がかかってきた。


中山さんからだった。


「恵美子ちゃん、会えるかな?」


私はもちろん承諾した。


季節は秋になっていた。晴れ渡る日に私達は会った。


「久しぶりだね。元気だった?」


「病気がぶり返してあんまり元気じゃないの。」


「この間、会社に来てたでしょ。あれから大変だったんだよ。」


「ヤツが狂っちゃってね・・。恵美子ちゃんのせいじゃないけど・・。」


「暴れて手が付けられなかったんだよ。それに奥さんにも当たってさ。」


「この間、前田さんちに招かれていったんだけどね。」


前田さんの奥さんは中山さんとも仲がいい同期だった。


「部屋を掃除していたら机の中から恵美子ちゃんの写真がいっぱい出てきたって。」


「それを『どういうこと?』ってとがめたら、『プライバシーの侵害だ』って殴られそうになったんだって。」


やはり写真は撮られていたのだ。つけられていたのも妄想ではなかった。


「殴ったら終わりだと思ったけど、殴りはしなかったから・・って言ってたよ。」


「恵美子ちゃんが離婚したら、(前田さんたちも)離婚するって条件で結婚したんだって。」


「信じられないでしょ。」


私は今までのことを思い出しながら、お嫁さんに同情した。


「この条件が飲めるのが彼女一人しかいないと思ったから結婚したんだって。」


彼女はクロさんというニックネームだった。私は本名を知らない。


クロさんは、アシスタントをしていた時から前田さんのことが好きだった。


そんな彼女の弱みに付け込んで、今まで利用してきたのだった。


「旦那さんとはうまくいってるの?実家に帰ってきちゃってるみたいだけど・・」


「主人には本当に申し訳なく思ってるんだけど、一人で部屋にいるとフラッシュバックがひどくてね。結婚式の時の。ほら、見学者の人が来てたでしょ?」


「恵美子ちゃんも気づいていたんだね。私たちも誰だろうって思っていたよ。」


「花嫁の控室の前にも来ていたの。」


「えぇ!?そうなの?それってもしかして・・」


中山さんも全てを察したようだった。


「ねぇ。恵美子ちゃん、クロちゃんがね、恵美子ちゃんに譲ってもいいっていってるんだよ。」


「それは困る。私、離婚する気ないもの。でも、主人から離婚を言い渡されちゃうかもしれないけどね・・。」


離れて暮らして1か月が経とうとしている。これじゃ新婚とは言えないだろう。


「ところで、最近、気になってるドラマとかある?」


「恵美子ちゃんに似たドラマがあったって騒ぎになってるんだよ。」


「R35っていうやつなんだけど、観たことある?」


「それなら今見てるよ。」


それは不倫を題材にしたドラマで、エキセントリックなOLが多分私と似ているというのだろう。


「うそ。ずいぶん古いドラマだよ。今やってないでしょ。」


「再放送で夕方やってるから見てるよ。」


「そうなんだ・・。自分に似てると思った?」


「あんないいものじゃないよ。」


「ドラマと言えばね、今度フラッシュバックを題材にしたドラマが始まるんだって」


「これは興味があるから見ようと思ってるんだ。」


私は題名とキャストを教えてあげた。


「そうなんだ。私も見てみるよ。」


私は薬を飲みながら、新居に帰ることを決めた。


母とけんかになりかけていたし、いつまでも主人を一人にしておきたくなかった。


フラッシュバックのドラマは会社のみんなが観ることとなった。


このドラマをめぐって、また騒動が起きるのだった。



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