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1話 モヒカンが欲しい

 これまで俺は、順風満帆な人生を送ってきた。


 大国であるセリオン王国、その王都の端にある孤児院に捨てられていたという俺は、シスターからボイル・スパイクと名付けられた。


 その孤児院は貧しく、設備もボロっちいところだったけど、俺は生まれが不幸だとは思っていない。

 むしろシスター達は親みたいに優しかったし、ほかの孤児達とも兄弟同然に育った。

 胸を張って幸せだったといえる。


 十二歳になり、そんなこんなでハッピーに暮らしていたある日、俺には魔法の才能があることが判明した。


 火だの水だの風だの、急にいろんなものが体から出てきて止まらなくなったのだ。

 魔法のお漏らしが止まらなくなったのだ。


 魔法使いは数が少ない割に需要が高く、基本的にその才能は祝福される。

 うちの孤児院のみんなも喜んでくれて、俺がお漏らし魔法するたびに褒めてくれたものだ。

 俺は将来魔法使いとして大成し、孤児院に恩返しをすると誓った。


 それから魔法の才能を伸ばすことになった俺は、王都にある王国魔法学園に通うことになった。


 魔法の鍛錬だけでなく、語学や算術や地理、貴族のマナーなんてのも教えてくれる、とても親切な学校施設だ。


 俺は油断すると魔法が漏れちゃう体質だったが、学園に通う事で魔力操作を完璧に仕上げられた。

 特におねしょ魔法が酷かったからな。死ぬほど努力した。

 寝ている間に火属性魔法が漏れた時なんて死んだと思った。


 そして十五歳になり学園を卒業した後、俺は宮廷魔法使いとして国に就職することになった。


 宮廷魔法使いとは、国家に帰属する最高峰の魔法使いのことだ。

 その数は百名ほどしかおらず、毎年数名ほどしか追加されないエリート中のエリートである。


 当時、成績はそこそこ優秀だったもののパッとしない性格だった俺は就職先が決まっておらず、宮廷魔法使いの国家試験がやっていたので自暴自棄になって受けてみた。

 するとなんの奇跡が起きたのか合格した。


 それからはとんとん拍子で出世していくことになる。


 危険な魔物の討伐に参加して活躍したり、魔法研究で成果を出したり、とにかく努力した。

 すると俺は、気付けば宮廷魔法使いの中でもトップクラスの実力を誇るネームドの一員になっていた。

 それも二十歳で。

 平均年齢が四十歳を超えるネームドの中では異例の出世といえる。


 その際、国王陛下から〈黒子(くろこ)〉とかいう二つ名を戴いた。

 俺の髪が黒色だから〈黒子〉らしい。


 ……とにかく、俺の人生は順風満帆だった。

 超超超エリートって感じの最強経歴だ。


 宮廷魔法使いは給料がたくさん出るし、地位も名誉もそれなりにある。

 女性にだってモテる。

 同僚()モテてた。


 ただ、それでも俺は調子に乗ることはなかった。

 周りの同僚が金やら酒やら女やらにうつつを抜かしているのを傍目に、俺だけは真面目で勤勉、実直な人間であり続けた。


 他のネームドの先輩方がイカれていたからだ。


 例を挙げよう。


 頭が超ハードなモヒカンの〈モヒカン〉のおっさん。

 顔面にドラゴンの刺青を入れている〈顔面龍〉のおっさん。

 革ジャンに意味不明な執着を見せる〈革ジャン〉のおっさん。


 こんな感じのおっさんばっかりだ。


 王への忠誠心はみんな総じて高いものの、各々頭がイカれている上におっさんばかり。

 こんなんじゃ調子に乗ろうにも乗れないだろ。

 俺だけでも真面目でいなきゃって謎の使命感に駆られちゃうだろうが。


 ……まあ、別にそれはいい。

 そんなことはどうでもいいのだ。


 重要なのは、()()()()()()()()()()()()ということだ。


 そのせいで、俺の順風満帆な人生は終わりを告げることになる。


 俺もモヒカンにして顔にドラゴンを彫り革ジャンを着込んでさえいれば……。

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