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不器用な純情


「宗次。あんた、後輩に遊ばれてんの?」

「遊ばれ……追いかけっこに告白未遂に……そうとも言える」

「口も態度も悪いのに、不器用すぎじゃね?」

「ヘタレな純情野郎だからな、青堀は。だから頼むんだけど、これ(青堀)についてやってよ」


 くっ、何でこうなった。


 昼休みを大幅に超え、クラスの見世物になったとはいえ、何故に無関係な女子に同情されねばならないのか。


 課題のことは問題無いとして。休み時間になると、垂水が女子を数人ほど引き連れ、俺の机の前に現れた。


 そして言われたのは、


「からかう後輩のことがムカつくんなら、彼女たちがお前を鍛えてくれるからそれで上手くやりなよ?」


 タレコミ屋の友美は、俺には全く恋愛感情を(いだ)かない。だからこそ長い付き合いでもあるが、余計なお世話とお節介は半端なかったりする。


 そしてまさに今、余計なお節介が本領発揮。


「――つまり、後輩に舐められないように女子に慣れろと。そういう意味でいいのか?」

「だよ。あと、ヘタレが好きな女子に告白出来るように、彼女らを青堀につけてあげるから、そうすればあの後輩を見返せるだろ?」


 一見するとクラスのイケメン男子を放っておいて、ハーレム形成。しかし、これはそういう甘いものじゃない。


 俺が垂水に、1年女子にやられっぱなしで悔しい……などと口走ったのが原因だ。


「んじゃ、宗次って呼ぶから。今からよろ! あたしのことは八積(やつみ)で!」

「ん? 下の名前で呼ばないのか?」

「そういうのは好きな女子に言ったらいんじゃね? あたしはあんたの女じゃねーし」


 これだから口の悪いギャルは、俺の中でいつまでも好感度最下位から変わらない。

 他にも数人の女子が控えていたが、1人目はこいつ(八積)らしい。

 

 俺のクラスの女子とは恋愛にはならない女子ばかり。とはいえ、疑似恋愛みたいなものをやる羽目になるとは思わなんだ。


「……その黒い髪は偽か? それとも染め直しなのか?」


 俺の机を椅子代わりにして、太ももを見せながら偉そうに俺を見下ろしているギャルは八積という女子だ。


 下の名前は不明だが、そういう関係になるでも無いので教えてくれないらしい。

 

 クラスには何故かギャルが3、4人ほどいて、そいつらがまとまっているだけで目立つ。俺の『告白』候補には挙がりそうに無いが、全員整った顔つきをしている。


「はぁ? 宗次ってDT(ドーテー)?」

「さぁな」

「最初に聞くことがそれっぽいんだけど。てか、これは清楚系だし。好きなんだろ? こういうの」


 ギャルに清楚系って矛盾してるだろ。


「知らん」

「あー、あんたはアレだ。不器用で面倒で、顔の割に純情野郎だ!」


 不器用なのは認めるが、純情なのか? 


「ま、とにかくあんたにつきまとってる1年女子から守るから、そう落ち込むなよ! な、宗次!」

「…………適当でいい」


 垂水にお節介をされてからの助っ人女子。付き合うでもなく、仲良くなれるでも無い意味不明な関係で、1年女子習木に対抗出来るのだろうか。


 館山は俺に近付けなくなったし、何ともやりづらいな。


「――トイレに行くだけだからついて来なくていい」


 さすがに自然現象な用程度には、ついて来ないようで少し安心。廊下に出た俺は、猛ダッシュでトイレに向かった。


「ふー……だるいな」


 トイレを出て教室に戻ろうとすると、そこには奴の姿があった。

 

 ここは間違いなく2年の廊下であり、1年には用のない廊下のはず。それに確か早退をしたとかほざいてたような……。


 俺の姿を見つけた奴は、何故か嬉しそうに駆け寄って来た。

 そして、


「青堀先輩っ! おめでとーございます!!」

「何がだ?」

「彼女出来たんじゃないんですか? 窓から見えてましたよ~? 清楚系ギャルでよさげじゃないですか!」

「アホか! 告白もしてなくていきなり彼女になるわけないだろーが! ってか、お前早退したんじゃなかったのか?」


 何を言うかと思えば、早速噛みついて来るとは。


「あぁ~、体調不良とかじゃないので、この後に帰りますよ。それはそうと、ギャルって話しやすそうじゃないですか。それに、別に告白にこだわらなくてもいつの間にか付き合うもんだし」


 本当に帰るのかこいつは。

 また放課後に追いかけっこするんじゃないよな。


「そんなんじゃない……」

「気になってもいないのに付き合ってもらうんですねー。面白いことしますよね~」

「気になるわけ無いだろ」

「じゃあ、今一番気になってるのって何ですか?」


 ここで嘘を言っても仕方が無いし、隠すことでも無い。

 正直に言うだけだな。


「今? 今はうざい1年女子がいて、そいつが何をして来るか気になってるな」

「そうなんですね~。対策はどうするつもりなんですか?」


 本人を目の前にして対策もクソも無いが。


「ギャルに学ぶ」

「……あぁ~、なるほどです。じゃあ帰る時もギャルが一緒なんですか?」

「知らん」

「分かりましたっ。じゃあ、わたしも学ばせてもらいますね! それじゃ!」


 いやにあっさり引き下がったな。

 

 まぁさすがに帰るだろ。早退と言っておきながら校内を自由に徘徊とか、校則違反になってもおかしくない。


 とにかく放課後になったら、ギャルである八積とどうするか……だな。


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