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中庭の透明な壁


 高台丘に入るきっかけは単純なものだった。家から近いというのもあったが、一番の理由は美少女率が高い学校であること。


 いざ入ってみたら確かに美少女が多かった。しかし運動施設が充実している学校なので、必然的に体育会系女子が多いという中々に難易度が高い現実。 


 もちろん俺のような帰宅部も存在するが……。


 普通に好きになりその人に告白。順調に付き合い出して、ウフフアハハな生活を送ることすら厳しいことを知った。


 ――そして昼休み。


「はぁぁ~BIG4の誰でもいいから付き合いたい……」

「お前の頭の中は()()()()()()ばかりか? 宗次」

「健全な男子高校生の日常だ! うちの学校に通ってる野郎どもは、みんなそう思ってる! 館山! お前もな」

「アホか! 思ってても手当たり次第告白しようとする奴なんていないっての!」


 美少女が多い学校の中でも、BIG4と呼ばれる美少女たちが存在する。頭脳明晰、運動神経抜群、スタイル良し、対応良し……挙げればキリがないので割愛。


 クラスの男子曰く微笑みスキルが高くて、微笑まれただけで惚れるらしい。   

 しかしBIG4に出会う確率は低く、滅多に出会わないようだ。


「……そういや、後輩の女子とはどうなんだ?」

「ん? 後輩?」


 俺を見捨てて帰った館山が、まさか近くに潜んでいたのか?

 

「私も見たぞ、青堀。バレーボール部の女子を諦めて年下にいくなら、私は止めないぞ」


 そうかと思えば垂水も乗っかって来た。

 あの1年女子と校門を出た時、周りには見知った顔はいなかったはずなのに。


「そんなんじゃねえよ、友美。……仮に1年女子にいくとして、情報くれるのか?」

「悪いね。後輩の情報は持ち合わせてないんだ」

「いらねーし。俺の好みは同学年か上級生だ! 今までどおり頼むぜ!」

「そう言うならちゃんと告って欲しいけど、青堀はヘタレだし期待出来そうにないな」

 

 ――くそぅ、垂水までからかうのか。

 彼女はともかく、館山には問い詰めねば。


「まっすぐ家に帰ったんじゃなかったのか? 館山」

「寄り道しないで帰るとでも? それに、長い下り坂を歩いてた途中にお前と後輩の姿を見ただけだからな。おれに罪は無い!」


 あの無駄な全力疾走中にギャラリーが紛れていたのか。何という不覚。


「しっかし、妄想ばかり言う奴かと思ってたが、いるじゃねえかよ近い女子が!」

「興味無いな。アレは追いかけっこだ。走りたそうな後輩に付き合ってあげたに過ぎん」

「その割には置いて行かれてたみたいだけどな」

「あぁぁ、うるせーな。ちょっと頭冷やして来る!」


 このまま教室にとどまっていると、興奮状態で館山に怒りをぶつけてしまいかねない。昼休みの残り時間はまだ余裕がある。


 これも早食いがなせるわざだな。


 夏一歩手前とはいえ、高台丘は地上に比べると気温が高い。教室の中こそ快適なのだが、それでも限界はある。


 そういう時こそ、3階と4階の間にある中庭に行くのが最善策。屋上も捨てがたいが、階段を上って6階に行くのは正直しんどすぎる。


 そんな事情もあって、中庭で休む奴の方が圧倒的に多い。しかもここにはストレッチをしに来る運動部の女子もいて、それ目当てに居座る男子もいたりする。


 まぁ、俺はそういう目的で来ることは無いが。

 中庭に着いた所で、教室に戻ろうとする連中とすれ違った。


 すると、


「あっ、青堀! 私の情報どおりに動いてここに来たんだな。偉い偉い」

「――何が?」

「何って、バレーボール部の蘇我中そがなかさんがいるから来たんだろ?」


 そういや、ショートメッセージにそんな情報があった気が。

 タレコミ屋の行動範囲恐るべし。中庭で垂水と会うとは思わなかったな。 


「友美の気のせいだ。俺は中庭が第2の故郷。ここに来るのは必然だ」

「どうでもいいけど。今なら周りに誰もいないし、告れば?」

「告っ、告っていいのか?」

「だって好きなんだろ? しかも、こんな機会は訪れないくらいにぼっち女子状態! 行って来れば?」 

 

 昨日の体育館では生まれなかった告白チャンス。

 中庭でぼっち女子はなかなかお目にかかれない。


 そうと決まれば行く以外の選択肢は――

 昼休みがそろそろ終わってしまうので、蘇我中さんに向けて足を動かした。


 ――のは良かったが、どういうわけか体が言うことを聞かない。まるで見えない透明の壁に遮られているような感じだ。


「な、何だ? 前に進めないってどういう原理だこれは……」


 決して頭がおかしい話では無く、前方でストレッチをしている蘇我中さんに近付くことさえ出来ずにいる。


 くぅっ、マジで透明な壁が存在するのか? 全然進めねえ……。

 足を踏み出せず、後ろから強い力で引っ張られているような気がしてならない。


「な~にしてるんですか、青堀先輩?」

「……? その声は昨日の1年女子! どこだ、どこにいる?」

「後ろですよ。こっちを向いてくれれば、すぐに笑顔をあげます!」


 まさか透明な壁に遮られていたのではなく、1年女子の怪力で進めなかった?

 いくら俺が文系男子でも女子、それも後輩に力負けするとか嘘だろ……。




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