表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/13

プロローグ2


「いやー良かった。やっぱいいわー! 超タイプ」


 後輩のことは気にしないとして、俺と館山はファミレスに潜入を果たした。お互い金欠なので、ドリンクバーオンリーだが。


 そして日課を終えた俺たちは、店を無事に出て大人しく帰ることにした。


「宗次のお気に入り女子って、どっちかというと綺麗系だよな」

「まーな。目に飛び込んできやすいだろ? 綺麗系は」


 目の前に青い海があったとして、砂浜を歩く素敵すぎる光景(例えば素敵なお姉さんが見える)があったら、どうしても目が行くのは本能だ。


 そしてそんな綺麗な女子には、頼まれなくても応援しちゃうという心が働く。これも仕方の無いことである。


「でも確かあの女子って――」

「その先は禁句だ! 俺も愚かじゃねえぜ? 段階を追うと言ったはずだ! そんで第一段階の彼氏有り無し情報はクリア済みだ」


 俺は段階を踏む男。とある筋――恋に発展しない女子からのタレコミは抜かりない。こういう情報は自称情報屋の男よりも、女子の方が強いし信用出来る。


 それを踏まえての行動だ。たとえダチが独自に入手した情報であろうと、ウワサ的な話は信じないことにしている。


「じゃなくて……まぁいいか。告ればその時に判明するし、おれが言うことじゃねえよな」

「それが正解だ! さすが俺のメインダチ!」

「変な奴め。そういや、おれが合流する前に話してた女子は誰なんだ?」


 ぬぅ……見られてないと思っていたのに、ちゃっかり目撃していたのか。後輩に気を取られて館山の気配を感じなかったのは痛い。


 しかし後輩ということに違いないし、隠すことでも無いから白状しとこう。


「年下の女子だ。1年だな」

「後輩かー。遠目からだったけど、結構可愛かったんじゃないか?」


 なるほど。館山的には有りな部類か。


「可愛くねーけど可愛かったのは事実だ」

「どっちだよ! 可愛い後輩がお前に話しかけてたのか? それとも話しかけたのか?」

「声をかけただけで話しかけてない。何かを落としたっぽくて困ってたし、廊下を塞いでたから助けようとしただけだ」

「奥手で面倒な性格のお前が? で、脈はあったのか?」


 変なことを言う奴だな。声をかけたからって何で脈ありとか聞くんだ。その理屈でいったら、困ってる人全員に好意を持つ危ない奴みたいじゃないか。


「そんなんじゃねーし。よく分からんけど、自己解決したとかでいなくなった」

「後輩の名前は?」

「……確か習木志野だったな」


 名前を言った途端、館山はスマホを取り出し何かを検索し始めた。まさかこいつ、可愛い女子のデータベースでも持ってるんじゃないよな。


「宗次」

「何だよ? 何か出て来たのか?」


 まさか本当に検索をかけてたのか……? そうだとしたら友達解除も検討するか。


「いや、おれあっちだからここでさらばだ。じゃあまたな!」

「誤解させる真似すんなよ! ったく、じゃあな」


 何かを検索してたっぽかったが、後輩女子のことではなかったかもしれない。とにかく帰る方向が途中で変わるので、奴とは別れた。


 俺の家は単純ルート。特に学校からの場合は坂を下りればいいだけの道だから楽だ。今日に限ってはファミレス帰りなので、交差点をいくつか渡る必要があったが。


 もうすぐたどり着く手前の交差点。

 そこで何やら手を振ってる奴がいることに気付いた。


 信号が変わったらそいつがいる場所にたどり着くとはいえ、まるきり見覚えのない女子から手を振られても決して嬉しくない。


 ――のはずが、


「青堀せんぱーい! わたしですよー! 気付いてますかー?」


 俺のことを先輩呼び……つまり相手は後輩。体育会系並に声がでかいし響くので、正直言って自己アピールしたくない。


 しかし悲しいことに他に通行人もいないし、注目を浴びる可能性が皆無。仕方ないが、後輩の声に応えるしかなさそうだ。


 横断歩道を渡り後輩の待つ歩道にたどり着くと、奴はすぐに駆け寄って来た。


「ずっと気付いてましたよね?」

「手を振ってても、対象が俺とは限らないからな。気付いてもどうにも出来なかった」

「青堀先輩って、ご自宅がこっちなんですか?」

「そうなんじゃないの? 知らんけど」


 まさかこいつ――

 深く考えるまでも無いが、友達がいないタイプか?


「わたしはこっちじゃないんですよ。残念なことです」

「あぁ、そう」

「青堀先輩に伝えたいことがあったんですけど、偶然にも遭遇したので声をかけたわけなんですよー」


 偶然の遭遇か。怪しいがどうでもいいな。


「で、何?」

「好きな人っているんですか? もしいないなら――」

「答える義理は無いけど、好きな人はいる。後輩のあんたは?」

「習木です。習木って呼んでいいですから! もちろんいます! なので、()()()()よろしくお願いします!」


 よく分からないお願いをされて思わず寒気が。

 よろしくするつもりも無いので、習木が通り過ぎるのを待って、家に急いだ。


 家に入るまでちょくちょく後ろを振り向いていたのは内緒だ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ