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こっちはこっちで!


「ハァ、ハァフゥ……も、無理……」

「え~? もうですか? 全然まだまだ余裕なんですけど~。先輩が動かせないなら、わたしが勝手に動きますからね?」

「ど、どうぞ……」


 認めたくは無いが、俺は後輩女子よりも体力が無かった。そんな俺を気にすることなく、後輩の習木はランニングマシンに乗って勢いよく動き出した。


 習木は最初、俺が調子よく走り出すところをジッと横で見ていた。ところがすぐに息が切れ出したことで習木も動きたくなったらしく、絶賛ランニング動作中だ。


 くそぅ、これが文系と体育会系の差か。歩いてるだけで十分だったのに、普段女子に見つめられることが無いからか無駄にやる気を出してしまった。


「フゥー……いい汗かいて気持ち良かったです」

「しょっちゅうなんだろ? 汗をかくのは……」

「そうですけど、いつもは1人じゃないですか~。だからそれはまた違うんですよ。今日は青堀先輩が横にいるので、気分がいいなぁと!」

「そりゃあそうだろうな」


 すぐにくたばった俺を横目で見ながらの余裕なランニングは、さぞや優越に浸っていただろう。


「青堀先輩って――」

「……ん?」


 だいぶ息がマシになって来たかと思っていると、マシンのバーの上に寄りかかるようにして、習木が俺のことを不思議そうに見ていた。

 

 これはあれだな。何でこんなに体力が無いのが先輩なのだろう……などと思われているに違いない。


「先輩って、部活は入らないんでしたっけ?」

「体力が無いのは事実だ。部活? 入ってるぞ」

「え? いつの間に……あ、文系でしたね。一応聞いときますけど、何部ですか?」

「帰宅部」

「……だから、そういうのはどうでもいいですって! 真面目に答えてください!」


 至って真面目な回答なのに、何を真面目にしろというのか。そもそも2年で帰宅部になっている時点で帰宅部確定だろ。


 いくら高台丘が文武両道で運動の強豪学校と呼ばれていたとしても、帰宅したい奴だって少なくない。その内の1人が俺だっただけの話だ。


 ――まぁ、習木はメガネに関わらず活発に動きたい女子なんだろうが。


「俺は好きになった女子に告るという活動があるからな。運動部に所属する余裕は無い」

「あ、そうでしたね。それで蘇我中せんぱいのことは諦めたんでしたっけ?」

「……そうなるな」


 何せ昼休みを目一杯使ってストレッチをしている女子だ。ぶっちゃけ、そんなことをしたくない俺とは合いそうも無い。


 未遂で終わったとはいえ、習木主導で告白しようとしたことがいかに恥ずかしかったか。告白以前の問題だ。


 それに、どう考えてもこいつ(習木)といる時間の方が多いし、蘇我中さんに会いに行っても間違いなくついて来るのがオチだ。


「清楚系ギャルはどうなんですか?」

「あん? ギャルはアレだ。俺のクラスの奴が余計なお節介をしてるだけであって、あのギャルに好きとか嫌い……嫌いはあるとして、感情は無いと思うぞ」

「じゃあ、他に好きな人がいるんですか?」


 今までは館山とともに、ヒャッハーな気分で女子を捜し歩いていたからまだ良かった。だがあんな爆弾発言するようなギャルがまとわりつくと、そうもいかなくなる。


 ギャルは別としても、まずは他の女子とも積極的に話をして、それから告ることにして行く必要がありそうだ。


「候補な女子はたくさんいる!」

「先輩は同学年か先輩が好きなんでしたっけ?」

「まぁな」

「ふーん……それは変わらないんですね」


 好き候補の女子の他にもBIG4なる女子を攻略してみたいし、都市伝説じゃなければ是非お近づきになりたい。


 もし部活に所属してるとしたら絶対会えそうに無いが。


「そういや、蘇我中さんを諦めたら告白チュートリアルってのは終了か?」

「いえ、継続中ですよ」

「相手がいないのにか? 告るにしたって相手がいないとしようがないぞ」

「それはそうなんですけど~……」


 ――といった話をいくらひと気が無いとはいえ、トレーニングルームでするのはどうなんだ。


 それにそろそろ家に帰って横になりたいんだが……。

 ――などと心の中で愚痴っていたら習木がメガネを外して、


「先輩、先輩。これを取ったら、わたしはどう見えます?」


 サイズオーバーなメガネを外した習木の顔は――

 ああ――まぁ……。


 まともに正面から眺める機会が無かったが、可愛い女子だろう。

 性格と態度と運動が得意なことを外せば、モテるといって差し支えない。


「メガネを外して見えてるのか?」

「……いや、青堀先輩がわたしを見るんですよ! どうですか?」


 くっ、分かってるのにこいつには冗談も通じないのか。

 この反応を見る限りでは、俺の顔もまともに見えてないようだな。


 それならば、超至近距離まで迫って脅かすというのも面白い。


「……ふぅー」


 さすがに見えてない奴の顔に近付くだけではつまらないので、息を吹きかけてみた。


「――っ! 何ですか、変態行為ですか? それと、そういう行為はわたしだからいいのであって、他の女子に……あのギャルにだってやらない方がいいですよ?」

「やらねーし!」


 間違ってもあのギャルに同じことをやったら、また何を言いふらされるのか。


「でも、よく分かりました。先輩は()()()()()わたしに対して、そういう行為を平気でして来るタイプなんですね」

「嫌がらせじゃないぞ」

「分かってます! でも、先輩がそういうタイプなら、()()()()()()()()やらせてもらいますからね?」


 何だ……? 怒りでも無さそうだが、少しだけ寒気を感じたのは気のせいか――

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