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SaLt  作者: 蒼海 游
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第47話 愉快な家

 結婚式からしばらく経ったが、咲良たちはもちろん、なぜか大希たちまでもが俺たちの住む家に居ることが多かった。


「面白いから私も来ちゃう」


 そう言って亜里沙も顔を覗かせることが多く、家はいつでも騒がしかった。おかげで咲良を皆で支えることができた。

 赤ちゃんの性別は男と既にわかったが、名前はまだ決まっていないようだ。呼びかけも今のところ単純に”私の可愛い赤ちゃん”で変えないそうだ。よく胎内期での名前があるというが、咲良はあまり付ける気はないらしい。悠斗も楽しそうに話しかけている。結構聞こえたりするので考えてあげるのもありな気もするが。たまに胎内で動くのが楽しいようだ。二人できゃっきゃ騒いでいる。


 智は島にいる。仕事があるからだ。申し訳ないが智の労働が今だに家計に影響している。本当にありがたい。


「さすがに孫誕生の時は呼ぼうか」


 由利がそう言うので、あまりにも蔑ろにしすぎではないかと思わなくもなかった。だが、それだけ俺が愛されているということだろうかと考えるとどうでも良くなってしまうのだった。




「ほらほら男どもは力仕事ぉ!」


 なぜか家を亜里沙が取り仕切ることも増えた。というよりか一番力が強いのが亜里沙というか……。なんやかんや強く言えないうちの家はなぜか亜里沙に従ってしまっている。


「咲良ちゃんは無理せずにね」


 そのくせ、咲良にはきちんと安静にさせてくれるので皆は文句を言えない。というよりかは皆咲良のために動いているのだが。


「初孫かあ」


 由利は嬉しそうに咲良のおなかをさすった。なんやかんやで初孫は嬉しいものだ。

 まあ、俺にとっても初孫なのだが、じいちゃんと言われる日は来ないのであまり考えないようにしていた。にしても、その笑顔が可愛いなあ……。


「ほおらあ!」


 とそこに、亜里沙がやってきて身体が引きずられていく。

 俺たちは少しずつ赤ちゃんを出迎える準備をしていた。初めての中間テストが終わり、ひと段落した仁もその労働力の中に含められていた。

 赤ちゃんが生まれてからしばらくは、そのままこの家に住むことになる。がしかし、一段落するとこの家を離れることになる。世帯を持つというやつだ。とはいっても一つ階数が違うくらいの距離であるが。

 本当はもう少し離れても大丈夫だろうが、咲良ではなくなぜか悠斗が意地でも近くにすると言って聞かなかった。

 極秘な動きはできないので、誠実性がよく見えるという点では悠斗にとってもいいだろう。これ以上裏切るとは思いたくもないが。あとはまあ、悠斗が働き始めるということや咲良が就職活動に勤しみ始めるということで、赤ちゃんの面倒を時々見る必要性など鑑みた答えなのかもしれない。もしくは……いや、そういう答えは冗談であってほしい。




「私たちもいつか考えなきゃねえ」


 亜由美さんがそう大希に言うと、大希は顔を赤くさせた。結婚したが、まだまだこういう話には初心な男だ。

「……忙しくない時に頼む」

 がしかし、ちゃんとそこ辺りも考えていたらしい。これから大学教員となる男は、今後の生涯におけるステップアップも視野に入れているようだ。

 そういう二人はすでに二人の世帯を持っている。まだ大希は大学を卒業していないが、亜由美さんはすでに就職している。高校を卒業したあと、動物園で働いているそうだ。


「私、そんな頭よくないんで」


 そうは言っていたが、そんなことはない。彼女のもつ能力は決して悪いものではなく、十分に世の中で生きていけるものだと思う。


「大学も考えたんですけどね~、もうこれ以上勉強したくなくて」


 とは言っても、たまに暇な時に動物について勉強しているのを知っている。仕事で必要とはいえ、好きなことについて勉強するのは好きなのかもしれない。お互い動物が好きなもの同士、気が合ったのだろう。


「甥が生まれたら動物いっぱい見せてあげるんですよぉ~」


 そう言って二人はせっせと動物関連のものを買ってきている。買ってきているのか、職場からもらっているかは不明だが。


『動物かあ』


 仁がふとそう呟いた。そういえばあの日も、魚などに対して興味を抱いてみていた。俺はそれどころではなかったが、仁はちゃんと見ていたのだろう。視界はずっと魚たちを含んでいた。


『興味あるのか?』


 俺が問いかけると、仁は肯定する。


『こうやって動物関連の人に囲まれるとね、どうしても気になっちゃうかな、進路関係なく』


 動物関連の人におそらく俺も含まれるのだろう。俺はあくまで捕るだけなのだが。

 とはいえ、小学校に入ったくらいに教えたことは確かにあるし、昔からそういう意識は抜けないのだろう。優秀な兄がいるとはいえ。


『いいんじゃないか? 調べてみればいい』


 やっと興味あるものが見えてきた仁の背中を、俺は全力で応援することにした。




「いやあ、出産とか久々すぎて忘れたなあ」


 置かれたノートをペラペラ見つつ由利はそう漏らす。何度か二人は両親学級などに通っているようなのだが、二人とも勉強熱心なものだからちゃんとノートをとってくるのだ。


「誰が一番大変だった?」


 咲良が冗談めかし言う。


「どうだろう……私的には、大希かな~。初めてだったし。咲良は違う意味で大変だったけど」


 大希の時は確かに大変だった。なんと言っても二人とも初めてだし、よく泣いた。あまり寝ず、何度も俺たちを起こした。母乳やミルクもやや苦戦した。

 それに比べ、咲良はよく寝てよく飲む子だった。泣きはしたが、大希に比べると少なかった。育児は比較的しやすく、たぶん困ったと言うのは……俺のことだろう。


「まぁ、仁くんはやりやすそうね」


 亜里沙がニヤニヤしながら言う。そうするように努めたので間違いないが、ニヤニヤしたその顔が腹立つ。


「ほんと、仁くんは楽だったなぁ」


 由利はそれをわかってかわからずか、そう答える。由利以外の全員がこちらを見た。

 いや、こっち見るなよ。


「でも、大希もなんやかんや二人で悪戦苦闘したりして楽しかったなぁ」


 由利がそうぼやくと、今度は目だけこちらに向けてくる。にやけてるのもいる。だからこっち見るなって。


「だから決して一人でやらずにみんなでやろうね。みんなで歓迎して、一緒に頑張ろ」


 うんうんと頷く亜里沙。亜里沙はどちらかというと協力させてそうだ。優しそうな夫さんだったので、従えてたりして。

 そう思ってたら睨まれた。なんで考えてることがバレるのだろう。




 準備を終えると、そこからは落ち着いて赤ちゃんを待つことができた。いつでも病院に連れて行けるし、いつ産まれてきてもいい。

 皆わくわくして待ち望んだ。早く元気に生まれてきてね、と呼びかけた。それは間違いなく皆の願いだった。


 待ち望まれた子どもは、冬のある日痛みによって生まれくる日が近いことを知らせた。

 慌てて病院に向かったり、色々な人をりとまたてんやわんやしていると、それを待たずして咲良は分娩室に入ることになってしまった。



 そして悠斗同伴の元、赤ちゃんは無事産まれた。やや小さいが、元気な男の子だった。


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