第40.5話 彼女の本音
番外編です!!今までの話がざっと振り返れるようになってます!!
小さい頃から、まるで弟のように着いてきてくれた仁。そんな仁の存在がとても愛おしくて、私はどこにでも連れ回した。仁の視界に私以外の誰もを入れない勢いで、私は仁の全てになった。
できるようになったこと。成長したこと。
それらを仁が報告してくれるたびに、私も追い付かれないようにと頑張った。おかげで成績もトップを維持したし、好き嫌いもないし、器用な人間になった。
だけど逆に、私は面白げのない人間なのではないかと思い始めた。見本にならなくてはとの思いから、日々の生活をまるでノルマのようにこなす私は、本当に子どもだろうかと。かつて暴れん坊だった私の性格は、知らぬうちにおとなしくなっていた。
仁はどこまでも私についてくる。だけど、私は面白い話ができず、思いっきり笑わせたことがない。
仁は他の友達と笑い合っているのを時々見かけるようになった。
仁の人生を私が縛り付けるのは果たして正解なのか、楽しいことなのか、分からなくなっていた。
成長につれ、私の身長を仁は追い越した。無邪気な声も、声変わりを迎えた。男性としての性徴が顕著に現れ始める思春期を迎えたのだ。
友達同士との会話でも自然と恋バナになる。そうなると自然に近くにいる異性は仁くんになる。頭ではわかっていた、だけど、そう改めて認識したのはその頃だった。
次第に、異性として意識するようになった。きっかけがあったわけでもない、ただ近くにいたのが仁くんであったというのが大きいが、それだけに具体的な妄想などに抵抗を感じた。
何より、そんな自分が汚れているようで、私は仁の視界にいるべき人間ではないと思い始めた。私は仁くんから離れることにした。きっと仁くんなら笑わせてくれる可愛らしい女の子を捕まえて彼女にするだろう、そして幸せに暮らすだろうと。
だけど、やっぱり目が離せない。無邪気に笑うその笑顔、成長しても可愛さが残る少年のような君。それでもどこか、儚げな印象のある君。
明らかに、他の男子と比べて私の目には特別に映ってしまう。君は私のことをどう考えているのだろう、君の視界の中にはまだ私はいるだろうかと私は私のことばかりに夢中になっていた。
一度ペンをきっかけにもう一度話しかけたりもした。嬉しそうな仁の顔に、たまらなく私の胸がときめいて、目の前の仁を抱きしめたいような衝動に掻き立てられた。私は浮かれた毎日を送っていた。
そんな中で、大切な友人が死んだ。
人の心なんて全てわかるはずがない、そうわかっていたはずなのに。
大丈夫だと笑う友人のことを、私は見捨てた。
命なんて儚いものだ。一度絶ってしまえば元には戻らない。いくら足掻いても悔やんでも元に戻りやしない。
自分勝手なことはわかっていた。勝手な罪滅ぼしであることもわかっていた。
だけど、私は、何もしないまま友人の死を悼むこともできなかった。
まるでジェットコースターの急落のような人生を送る日々。足掻いてもがいて苦しい日々。
そんな時、隣に仁くんが居てくれた。
仁くんは私に似て不器用だ。口を何度か開いては閉ざしているのを知っていた。何か声をかけようとして、だけど傷つけないようにと下手なことを言わないようにと思っていてくれているのかもしれない。
そんなふうに思っていてくれているだけで、どれほど私は嬉しかっただろう。
私が仁くんを汚さないようにと離れたように、仁くんは私のことを精一杯大切に扱ってくれた。
そんな仁くんが儚く消えそうなのは、何か秘密を隠しているからだろうか。友人のように、この世から消えてしまうような何かを。
思わず尋ねると、仁くんは否定した。この世から消えるようなものではない。だけど何かは答えなかった。
それでも、離れたはずの距離が再び近づくことによって、根拠のない安心感が再び生まれていた。何を考えているか全てはわからないけど、隣にいていいこと、そして実物大の仁くんを実感できるようになったこと。仁くんには彼女はいないようだった。
仁くんは、度々の告白を断っていたらしい。
可愛らしい子から、明るい子まで。幅広い層から愛された仁くんはそれでも断っていた。そのたびに苦しそうにする仁くんを、私は離れたところから見ていた。
もしかして私のことも恋愛対象などではなくて、もし告白なんてすれば離れてしまうのではないかと思えてしまった。
高校進学からしばらくして、仁くんが学校を休みがちになった。不登校などではなく、家庭の事情だという。嫌な予感がしていたら、終業式、それは見事に的中した。
仁くんが家庭の事情で引っ越すことになったのだ。
少し遠い親戚であるだけに話は伝わってきた。だけど、その全てを本人から聞かないと私は滅茶苦茶になってしまいそうで、何もかもが考えられなくなっていった。
終業式のその日、何事もないまま終わりを迎えようとしていた。私はやはり仁くんの何者でもなくなったのだと落胆した途端、涙が出た。その時だった。
靴箱に、小さな手紙が入っていた。
いつも以上に丁寧に、そして何度も消された跡のあるその手紙は、もう一度仁くんと向かいあうチャンスをくれた。
そして、向かった先で、仁くんは、私に告白してくれたのだ。思いもよらないその気持ちに、私は驚きと込み上げる嬉しさでどうにかなってしまいそうだった。涙が零れ、自分でもよくわからなくなって。
仁くんは、私と付き合いたくて、今まで色んな人の告白を断ってきたのだ。
私なんかにこだわってくれた。
意味がわからない、けど嬉しくて仕方ない。
仁くんが言うような素敵な女ではない、けど、そう思ってくれるならそれでいい。私は幸せなのだから。
離れ間際に、私たちの距離は一気に縮まった。どんな環境にあっても離すまいと、仁くんは私の手を握りしめてくれた。
そんな幸せな女は、きっとこの世で私しかいない。
ここで一旦区切りとなります!どうでしたでしょうかー?
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