第25話 父の葛藤
高校生になった二人はより関わりを持つようになり、周りもはやし立てるようになってきた。二人は今までと違う周りを少し気にしているようだが、お互いの間に戸惑いがなくなって、以前と同じような離れずな二人となった。しかし、以前の二人とは大きく異なる点があった。
それは、二人の関係性であった。
以前の二人はどちらかというと支えてもらっていた、といった感じだろうか。仁は緋夏に対し頼りなく、褒めてもらおうとしていたり、構ってもらおうと必死であったが、今となっては仁も成長し、頼ることはなくなったに等しい。緋夏も、以前はあまり頼るタイプでもなく、自分でほとんどのことをしようとする大人びた子だったが、今となっては少しずつ頼りにすることがでてきた。
つまりは、対等な関係になったのだ。
これはいい方向に向かっているぞと俺は密かに思っているのだが、二人の関係はこれ以上全く進展する様子がない。よく、邪魔やライバルが現れると関係が進みやすいというが、その気配が全くと言っていいほどないのだ。
仁は相変わらず謎の人気があるようだが、周囲の二人を応援する雰囲気もあってか告白するような人間は減ったし、あっても無意識にかわし続けている。緋夏はもとからあまり男友達をつくらないタイプであるため、仁以外の男子から言い寄られるような関係になりづらい。女子の支持を集めるのもそこにあるのかもしれない。
そして気が付けば夏を迎え、緋夏は16歳となった。女性の結婚可能年齢である。
まだ仁が18歳にならないので、いくら緋夏が16歳になったところで二人は結婚できるわけではないが、同じころすでに付き合っていた俺たちはそのあたりから意識し始めていた。それがまだ付き合ってないと言うのか…。
ま、時代が違うっていうのもあるんだろうな。
だが、二人は一度付き合ってしまえば離れない気がしている。
それに、俺にとってもちょうどいい相手でもある。相手の親に理解がありすぎる。反対されるかどうかは置いといて、俺は極めて居やすい。仁としても昔からの仲であるし、居辛さはあまり感じないだろう。運命と思えるような相手が親子して近くにいすぎるのもどうかと思うが、これは偶然でなく必然だと信じている。俺についてはともかく、仁については恐らく生前の俺の意志だかなんだかが引き付けているのだろう。
こうして生きる人間の身体にどういうかたちだか分からないが存在していたり、その人間が俺の関係している人間まみれだったり、もし俺が生まれ変わることがなかったら意味のあるか分からないようなことが行われていたり。
それだけ俺の意志はこの世に影響を与え、運命の糸をぐちゃぐちゃに集めてしまっているのだろう。もしかしたら誰やらの心さえも知らないうちに操ってしまっているのかもしれない。
とにかく、俺にとって都合のいいような展開が続き過ぎている。そしてそのことに最近俺は疑念を抱いている。これは何かの因果があるに違いないと、そう思っているのだが…。
話が違う方向を向いてしまったが、そういうことだ。つまり、二人は結ばれる運命にあるはずなのに、進もうとしない。それを俺は見ているしかできなくてもどかしく思っているのだった。
「ただいま」
家に帰ると、由利が迎えてくれる。
「おかえり」
そういえば仁の反抗期っていうやつはまだだったなと思った。必ず迎えなければならないわけではないし、迎えて利益を与えるものなのか分からないので、あまり気にしていないのだが。
反抗期はホルモンバランスが乱れることで起きるらしい。つまり本人の意志とは関係なく起こってくるのだろう。いや、本人の思考回路だってホルモンによるものではないだろうか、そこあたりを考えてみるとよくわからなくなるが、そういえば大希には反抗期があった。
というかあいつは長い長い反抗期というやつだったのかもしれない。それを生んだのは俺ではあるが。咲良はそういえばその気配がなかった。ほんとうになんというか、できすぎた子で、彼女が壊れたら家も壊れるのではないかと密かに恐れていたのだが、本当に何も起こさなかった。それも俺のせいだろうか。
まさか、そうなると仁にも影響を与えているんじゃないだろうか。
付き合わないのも?
接近しないのも?
いや、そんなわけがない。向こうが動いていてこちらが動かないならまだしも、どちらもが動かないのだ。これは本人たちの問題だろう。
気にしすぎだ、いったい俺は何を焦っているんだ。
わからない。今こうして焦っていたり落ち着かなかったりするわけがわからない。
きっと俺の思いを仁が知ったら余計なお世話だって思うだろう。
一回落ち着こう。二人はこれから大学受験などで忙しくなってくるのだ。いつか必ずその日は来るのだから今は落ち着いていよう。
二人の恋愛模様も落ち着きを見せていた。
※この時代の女性の婚姻年齢が16であるだけで、時代による変化の影響はありません。




