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75、魔竜王オルトロス2



 魔竜王オルトロスは強い。

 これは本心から思っていることだ。

 ただ……単純な強さで言えば竜王よりは弱いと思っている。

 竜王は総魔力量もずば抜けていて、戦闘のセンスもよかった。

 魔竜王オルトロスの強さは核を壊さなければ無限に再生するという所と寄生する能力が厄介という所だろう。

 魔力操作、戦いのセンス、総魔力量はどれをとっても竜王の方が一枚上であった。

 竜王が負けたのは相手が寄生する能力があるということを知らなかったことだ。

 とはいえそれも実力の一部であるためにオルトロスが弱いとは一概には言えないのだが。

 

 それを踏まえたうえで自分を分析する。


 ──俺は300年前より大分強くなった。


 さっき行った戦闘でそれがより分かったのだ。

 俺の魔力は全くと言っていいほど減っていない。

 複合魔法最強ともいえるスーパーノヴァを2発ほど放ったが総魔力量の1割ほども減っていない。

 魔力の糸でブレスを操った時、かなりの魔力を消費したかと思ったが、これは1割にも満たないほどだ。


 昔ならもう5割も残っていなかった魔力が今は8割以上も残っているのだ。つまり……余力がかなりある。

 

 そしてこれから試そうと思っている魔法は俺も使ったことがない。

 俺はちょっとした確認のためにとある精霊に話しかける。


『セレア……いるんだろ?』


 リーリアと旅をしていた時は、すっかり鳴りを潜めていたセレアに話しかける。

 するとスッと隣に寄り添うようにセレアが現れた。

 

『……お久しぶりです。ベアル』

『お前の力を使ってみたいんだがいいか?』

『…………力が欲しい時だけ私を求めるのですね』

『え……あ、いや……』


 そう言われて思い出す。

 エルサリオスの時、【セレアの種】の力を開放する際に、ろくに話も聞かずに実行したっけか。

 俺はばつの悪い顔をした。


『うふふ、冗談ですよ。あなたの困ってる顔が見たかったのです』

『まいったな』


 思ってもみなかった反撃に俺は少し戸惑った。

 

『でも、それくらいは許してくださいね? だってせっかく話せるようになったのに全然話しかけてくれないのだもの』

『いや、リーリアと一緒の時に話しただろう?』

『一対一でです』


 セレアは俺に抱き着くが、プイっとそっぽを向いてしまった。

 

 セレアは特別な精霊で意識して呼び出せばこのように実体化のように存在することができる。

 今のところ、見えているのは俺とリーリアだけだ。

 ていうか今はそれどころではなかった。


『セレア……それについては謝る。すまない。だが今はオルトロスを倒すために力を使わせてほしいのだが……』


 無意識にセレアの頭を撫でながら言った。

 セレアはこちらを向くと、『仕方ないですね』と笑ってくれた。


『状況は分かっています。私の力ならブレスも消すことができるでしょう。私の力は世界の力。そもそも竜王のブレスも私が与えたものですから』

『な! そうだったのか!?』

『はい』


 重要なことをさらっと言ってくれる。

 ていうかセレアと竜王はどんな関係だったのだろう。

 俺が思考していたら、考えを見透かしたように、


『すべては終わった後で』


 そういうとセレアの体が光り輝いた。

 同時に、体の中で光の塊みたいなものを感じるのだった。




「ふふ、そうよ! この竜王の形なんて飾りだもの! でも驚いちゃったわ……あなた魔力操作? 上手いのね……あなたを殺して吸収したらあたしも地道に練習してみるわ! 教えてくれてありがとうね。うふふふっふふ!」


 自分のブレスで頭が吹き飛んだオルトロスが復活していた。

 もちろんそんなことは予想済みであった。

 再生している間にセレアと話をしていたのだ。

 

「まあな……でもそろそろお遊びは終わりにするか」

「あらやだわ! 観念したってことかしら? 大丈夫よ……あなたを気に入ったからあたしの一部にしてあげるからね」

「それは最悪だな!」


 俺は封印を破った時のように、内にある光を外に出すようにして魔法を発動させた。


「セレアソード!」


 強烈な光が辺り一面を照らす。

 そこに日の光が一点に集中したかの如く、熱く輝き、まじまじと見てしまったらその者の目を焼いてしまうだろう。

 その光が集束すると共に一本の剣が現れた。


 俺はセレアソードを握ると、温かく優しい感触が伝わってくる。

 まるでそこにセレアがいるみたいな……そんな感触だ。


「な……なんなのよそれ!! オーラブレード……ではないわね」


 一連の出来事に混乱しているのか魔竜王オルトロスは戸惑っていた。

 

「これはお前を殺す……いや、世界を救う剣となるだろう」

「あんた何を言ってるの!? もしかして化物カオスを倒せるっていうの!?」

「ああ」


 何の確証もないが、この剣の力は何となく分かる。

 少なくとも……目の前のこいつは難無く殺せるだろう。


「はったりもそこまで言えるなら才能だわ! 人なんかで勝てるはずないのよ!!」


 魔竜王オルトロスはそう言うと、先ほどよりも大きいブレスを5つ連続で吐き出した。


「さっきのような小細工は通じないわよ! どこまでも追いかけてやるわ! そしてあなたの魔力が尽きる頃、ゆっくりと味わって喰らってあげる!!」

「さすがに学習しているようだな、偉いじゃないか」

「その余裕がどこまでもつかしらね!!」


 5つのブレスが方面に散り、さまざまな角度から俺めがけて襲ってきた。


 ──だが。


「ふんっ!」


 セレアソードを一振りすると、ブレスは真っ二つになって消滅した。

 次々と襲ってくるブレスも、すべて切り伏せた。


「なっ! 何故なの!? 消滅のブレスは魔力でのガードでしか防げないはず!! なんでなのよ!!!」


 怒り狂った魔竜王オルトロスはさらにブレスを量産する。

 もう形も大きさもバラバラである。

 それをただただ俺に向かって撃ち放っていた。


「そんな攻撃効かないって言ってるだろうが!」


 俺は剣に魔力を込めた。

 するとみるみるうちに長く巨大化していく。

 雲を突き抜けるほどに伸びたセレアソードをそのまま振り下ろした。


 すべてのブレスをかき消し、魔竜王オルトロスも両断。勢い衰えず地面までもを切り崩した。


「ぐああぁぁぁぁぁぁ!!!」


 叫びながらも真っ二つになった体を両手ですぐにくっつける。だが、すぐに癇癪を起したかのように叫んでいた。

 

「ふざけるなあぁぁぁぁぁぁぁ!!!! あたしのブレスが消滅させられるなんてこと!! あってはならないわ!!!」

 

 魔竜王オルトロスは魔力を口に集めていた。

 またブレスを放とうというのだろう。懲りないやつだ。


「いいだろう。完封無きまでに叩きのめしてやる」


 俺はセレアソードを構え、魔力を剣に集中させる。

 その時、オルトロスがニヤリと笑った気がした。


 集束した魔力を解き放つ。

 オルトロスから放たれたのは──消滅のブレスではなかった。

 火炎のブレスである。


 俺は瞬時に判断し水盾ウォーターシールドを展開する。

 水盾ウォーターシールドはすぐに蒸発してしまうが、何度も水盾を発動することで耐えしのぐ。

 ようやく終わったかと思った時には魔竜王オルトロスの姿は消えていた。


「なっ! まさか逃げたのか!?」


 やられた!

 勝てないと踏んで逃走したのか!

 奴の目的である竜王はすでに手に入れている。

 俺と戦うメリットはないのだ。

 となるとさっきの激怒も演技だったのか!


 オルトロスを甘く見過ぎていた。

 いや、まだ遠くには行ってないだろう。

 急いで追うんだ!!

 奴を野放しにするのは危険だ!




 ──────────




 時間にしてちょっと前、リーリアとプリマはレヴィアと合流していた。

 立ったまま寝ていたレヴィアにヒールをして傷口を癒し起こしたのだった。


 その時、遠くの戦地で光り輝く何かがあった。

 光は強く、戦場すべてを照らし、リーリア達の横長い影を作る。

 

「あれは何かな!?」

「ふむ、不思議な光だの」

「あれは……」


 リーリアには何となく胸の奥に感じるものがあった。

 あれはお父さんだ。お父さんが戦っているんだ!

 しかも先ほど、同じ方向からは恐怖をおぼえるほどの魔力を感じた。

 おそらくその正体は魔獣を率いるボス『オルトロス』だろう。


「お父さんが戦ってるんだよ! すごいよ!」

「うむ、そう考えるのが妥当なのだな」

「ふえ~、もう別次元だね」


 しばらくその光を見つめていた3人だったが、急に光が収まるのを目視できた。


「終わったのかな?」


 プリマがそうつぶやいた時だった。


「まずい! みんな逃げて!」

「えっ!」

「ベアルめ! 打ち損じたのか!」


 リーリア達が動き始めるより前。

 そいつは目の前にいた。


「うふふふふ! かわい子ちゃんたち! あたしのためにエサとなってね!」



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