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5、ファイアーボール



「ではまずは魔法について説明をしようか」

「えーぶれすできないの?」

「この話を聞けば使えるかもしれないぞ?」

「うん! わかった!!」


 まず魔法を使いたいのならば精霊と契約する必要がある。火の魔法を使いたいのならば火の精霊と契約を交すといった感じだ。

 というのも自身の魔力を火とか水とかに変換するには精霊の力を借りなければいけない。精霊に魔力を与える見返りに魔法の力を使えるのだ。それは与える魔力を増やせば増やすほど魔法は強力になる。


 ここで魔法の使用例を出そう。

 俺が魚魔獣の狩りをしたとき発動したアイスランスは氷魔法の初歩だが、まずはアイスランスを発動して巨大な氷の槍を作り、魔力操作でそれを分散させ、そのときに氷が海で溶けないように魔力で一本一本コーティングし、多数の魚魔獣の大まかな位置を魔力探知で特定して、そこにすべて放っている。そしてコーティング氷の矢には魔力の糸がつなげてあるのでそれを回収した訳である。


 精霊の力を借りて発動させただけではただの氷の槍にしか過ぎない。だが実戦でその一本の槍を当てる事の難しさを俺は知っている。戦いには工夫が必要だ。

 まあ兎にも角にもで精霊と契約できなければ何も始まらない。逆にすべての精霊と契約できればそれだけで戦いの幅が広がりアドバンテージとなる。


 と俺がそんなことを長々と語っていたら、


「……むにゃむにゃ……もうおなかいっぱい……」


 すっかり熟睡モードとなってしまっていた。




「じゃあ改めてファイアーボールを使ってみようか」

「うん! たのしみ!」

「木の棒を立てて置いたから、あそこを狙うんだ」

「わかった!」


 リーリアはそう言うと、右手を前に突き出し集中する。そして、


「ふぁいあーぼーーーーる!」


 気合の入った可愛い声と共に巨大な火炎球ファイアーボールが現われる。


「!!! でた! でたよおとうさん!」


 とても嬉しそうな表情で俺を見上げる。

 うん、今日もリーリアは可愛い。


「すごいぞリーリア! あとはそれを突き飛ばすようなイメージで放つんだ」

「わかった! えいっ!!!」


 リーリアからまっすぐ飛んでいく火炎球。その直線方向には木の棒がある。


 ゴオォォォゥ


 火炎球は木の棒を捕らえ勢い良く燃えた。


「やったー! あたったよおとうさん!」

「ああ、見事だ」


 …………まじで見事である。

 正直に言うと、あさっての方向に飛んでいくかなと思っていたので驚いた。

 しかもリーリアは右手のみでそれを成し遂げた。普通最初は両手で狙いを定めて放つものなのだが……。

 

 俺があまりの出来に放心していると、


「おとうさんみたいにいっぱいうってみたい!」

「え?」

「ふぁいあーぼーるとふぁいあーぼーる!」


 左手と右手、それぞれに火炎球を出現させた。


「えい! えいっ!」


 そんな掛け声と共に火炎球は放たれる。

 燃え尽きそうな木の棒に追加で火炎球が二つ、巨大な火柱がたち後には灰だけが残っていた。


「うーん、おとうさんみたくできないなー」


 …………まじで天才かもしれんこの子。

 多分俺が教えなくてもかなりの魔法の使い手になるだろう。

 だがどうせなら世界で二番目の使い手にしよう。

 もちろん世界で一番は俺だけどな! ……抜かれないよな?



 ■



 島の朝は早い。

 朝日の昇りとともにリーリアは起き出す。

 つまり=俺も起こされる。

 まあ、もう日常だから慣れたものだ。

 いつもはここで薪に火をつけるところなのだが今日は少し違う。


「リーリア、ファイアーボールを出したまま維持し続けられるかい?」


 昨日リーリアは初めて精霊と契約し、そしてファイアーボールの魔法を発動してみせた。剣に続き魔法の才能も抜群で、教える身としては大変気持ちがいい。

 そんなリーリアに新たな試練だ。魔法は発動して放つのは楽だが、持続し続けるのは魔力操作が必要なので難しい。

 

「うん! やってみる!」


 リーリアは目をとじると手のひらに魔力を集めているようだ。ゆっくりとした呼吸音がかすかに聞こえ、とても集中している様子がわかる。


「ふぁいあーぼーる!」


 手のひらに火炎球が現われる。

 リーリアはそれを地面に向けて放つが、ジュウゥゥという音と共に消えてしまった。


「あれー?」


 地面に消えた火炎球を見ながら頭にはてなマークを浮かべるのだった。


「火炎球を自分の魔力で操るんだ」

「あやつるの?」

「ああ、イメージとしては魔力の手を使って火炎球を持ち続ける感じかな」


 そう俺が言うと、なるほど! といった感じに頷きもう一度集中する。


「ふぁいあーぼーる!」


 今度は落ちずに手のひらに近い部分で火炎球は静止していた。そしていつも薪を置いてあるところにゆっくりと着地させた。


「おとうさんできた! やったー!」

「よしよし! 偉いぞ! そうしたらそのまま支えながら火炎球に魔力を送り続けるんだ」

「わかった!」


 すごい集中力だ。火炎球の威力を変えることなく同じ場所で維持ができている。


 ……実はこれ、かなりの高等技術で一朝一夕でできるものではない。


 俺がアドバイスをしたような魔力の手はイメージでは初歩的なものだ。

 手とか足とか、実際にある体の一部なのでイメージがしやすい。あとは魔力を使い具現化することなのだが、ここで躓く者が多いらしい。

 俺がこの魔力操作を習得するときは数日かかった。

 ぶっちゃけリーリアが一発で成功させたのが嬉しいんだが、少しだけ悔しくもありかなり複雑な気分ではある。

 俺はオリアスから、100年に一人の逸材だと褒められていた。だとしたらリーリアは300年に一人の逸材といったところだろうか。

  

「うぅぅ……これたいへんだよ」


 ひたいに汗をにじませながら、しかし視線は火炎球に向けている。


「これを意識せずに自然とこなせるようにするんだ、そうすればブレスまで一歩前進だぞ」

「うぅぅぶれすーしたいー! がんばる!!!」




 そして二年が経過した。



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