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45、決着


  

「エクスプロージョン! エクスプロージョォォォォォンン!!!!」


 自身をウインドボールで囲い、至近距離で爆発魔法を放つことで高速で移動していた。

 

「もっと! もっと速く!!!」


 魔力消費も自身へのダメージもでかいがそんな事を言ってる場合ではない。

 リーリアが俺のことを待ってるんだ!


 その一心でひたすら魔法を連発する。

 成果は顕著に表れ、ものの数分で中央大陸が見えてきた。


「よし! あとはエルフ王国だ!」


 その場所はすぐに見つかった。

 リーリアが城を爆破して巨大なクレーターを作ってくれたおかげで分かりやすくなっていたのだ。


 あれだ!


 リーリアを掴んでいるエルサリオスが見えた。


「リーリアを放せ!!! クソやろう!!!!!!!!」

「────っ!」


 爆速で繰り出すキックがエルサリオスの顔面を捉えた。

 顔がつぶれ、体は変な方向に曲がり、バウンドしてどこかに飛んでいったが、そんなのはどうでもよかった。


「リーリア!」


 俺はリーリアを優しく抱え込んで声をかける。

 何度か声をかけると意識を取り戻した。


「おとうさああぁぁぁぁん!!!!!!」

「リーリア!」


 首元に手を回し抱きついてくる小さな体を抱きとめる。

 よかった……生きていた。

 本当によかった!


「リーリア! すぐに体の中のスライムを除去する!」

「……うん」


 俺は魔力の糸を操りリーリアの口から体の中へ糸をめぐらせていく。

 すると、スライムを発見した。

 どうやらリーリアが残り少ない魔力で体内にバリアを張り侵食を防いでいたようだ。


「リーリアの体内から消えうせろ!」


 寸分もたがわぬ正確さでスライムを糸で絡め取る。


「よし、出すぞ。苦しいかも知れんが我慢するんだ」

「うん」


 俺は一気に引っ張りスライムをリーリアの中から取り出した。


「げほっ!」


 そしてそのまま魔力を流しスライムを消滅させた。

 

「うぐ……きさまはベアル! なぜだ! 封印はどうやって!?」


 どこかに飛んでいったエルサリオスが戻ってきた。

 だが俺はやつを無視をしてリーリアに語りかけた。


「リーリア、もう痛いところはないか? 今、ヒールをかけたんだが」

「うん、大丈夫……でも安心したせいかすごく眠い……」

「ああ、ゆっくり寝なさい。あとはお父さんにまかせろ」

「…………う……ん……」


 ゆっくりとまぶたを閉じるリーリア。

 その顔はとても幸せそうな表情だった。


「貴様! 無視をするな!! 封印したはずだ! あれはそんな簡単に解けるものじゃないはずだ!」

「うるさい、だまれ」

「──っぐあ!」


 石球ストーンボールを発動させ奴の口にぶちこんだ。

 ただ勢いが強すぎて貫通してしまったが。


 俺はリーリアを抱くとディランの方へと歩き出す。


「ディラン……直接会うのは久しぶりだな」

「ベアルよすまなかった。リーリアを守れなくて」

「いや…………それよりリーリアを頼む」

「……わかった」


 ディランの後ろ側にリーリアを横たわらせる。

 そんなディランは俺の顔をじっとみて、


「ベアルよ……お主……いや、なんでもない」

「……ああ」


 多分、顔の事を言いたいんだろう。

 俺は今、リーリアの前では絶対に見せない顔をしている。


 怒り。

 

 絶対にゆるさない。

 久しぶりに相手を殺したくなった。

 こんな感情はもう忘れたと思っていた。

 だが我慢する必要はないよな?

 リーリアが……俺の娘がこんな酷い事をされたんだ。


「お前は楽には殺さない。ゆっくり後悔しながら死ね」

「──っ貴様! お前もあの娘のようにしてやるぞ」


 すぐに顔を修復させたエルサリオスは何かほざいていた。


 ああ?

 今なんて言った?

 あの娘のように……だと?

 

 ……ああ、もうぶちぎれた。

 生きてるのを後悔させてやる。


 ゆっくりとエルサリオスに近づく。

 一歩一歩進むごとに地面がえぐれる。

 魔力が全身を駆け巡り、体から魔力があふれ出す。

 

「私に勝てると思っているのか! 私は昔とは違う! 人魔獣となり最強の力を手に入れたのだ」


 エルサリオスが魔法を発動させる。

 それと同時に俺に一本のずぶといサンダーが落ちた。

 だが俺の歩みは止まらない。

 何事も無かったかのように平然と。


「なっ! まともにくらってその程度だと!?」

「なにか今したか?」


 むしろこんなサンダー程度で止められると思ってるのか?

 

「これならどうだ!! サンダーストーム!」

「フレアバースト」

「ぐああぁあ!!」


 やつがサンダーストームを発動すると同時に重ねてフレアバーストを発動させる。

 エルサリオスは爆発に巻き込まれて、片腕が吹き飛びながらも耐えた。


「ぐっ! 押し負けただと!? ──なっ!」


 すでに俺はエルサリオスの目の前に立っていた。

 ああ……この汚い手でリーリアを!

 考えるだけでどす黒い感情がふつふつとわき出る。


 俺は手刀でエルサリオスの体をつらぬいた。


「ぐごぉ! き、きさま!」

「その口もうるさいな」

「なん──」


 腕を引き抜くと、体を回転させ後ろ回し蹴りを放つ。

 

 べちゃ


 顔面が破裂し四散する。

 顔のなくなった体がぐちゃりと地面に落ちる。


 だが俺の怒りは収まらない。

 

「ぐおぉぉぉ! ふざけやがって! 私はスライムだぞ! そんな攻撃で死ぬものか!」


 相変わらずどこからしゃべっているのか分からないその体を起こすと、植物から芽がでるように顔と手が生えた。


「ああ、わかっている。もちろんこれからだ」

「なに!?」


ドォン!


「ぐはっ! な、なにが!?」


 スライムの体が爆発する。


「これからだといっただろ? お前の体に小石・・を埋め込んだんだ」

「──っな──」


ドォン!! ドォン!!!


「ぐああああぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!」


 何度も何度も何度も何度も、連続で起こる爆発。


「きさま、何をしたぁぁ!!!!」

「だからいっただろ。小石を埋め込んだって。そこに俺の魔力を通しておいた。あとは魔力を込めれば爆発するんだよ」


 だがもちろん、本気ですべてを粉々にする気はない。

 そんな簡単に殺す訳がない。


「ぐがあぁぁ……」


 ぐちゃぐちゃに破片が飛び散ったエルサリオスがいた。


「スライムなんだしそんなに痛くないだろ? ちょっとくらいは核が傷ついたか?」

「ふ、ふざけるな……ちょっとどころじゃ……」

「そうか、失敗したな」

「なんだと……?」

「もっとじっくり壊したかったのに意外と脆いな」

「お、お前……!」


 飛び散ったスライムが再び集まりくっついていく。

 俺はそれをあえて待ち、エルサリオスの形に戻った所で、思いっきりそれを空中に蹴飛ばした。

 再生の追いついていない体は、あちこちが飛び散りながら、ぐるぐると回転し、雲を突き抜ける。


「スライムの再生速度がどれくらいか試してみるか」


 ファイアーピラーと発動させると、火柱は天まで上がりエルサリオスを包む。

 最初はお得意の風魔法でガードしていたようだが……。

 

 俺はさらに火力を高めた。

 エルサリオスは耐え切れず魔法が解除されてしまい、それでも核が燃やされないように必死で再生した。


「ちょっと強かったか。もっと弱火でやれば丁度いいのか」


 威力を弱め、やつの再生を待つ。

 そしてまた強めてじわりじわりとあぶり続けた。


 バーベキューが終わりファイアーピラーを消す。

 するとエルサリオスが地面に落ち、こげくさい臭いが漂ってきた。


「ぐ…………ゆ、ゆるさんぞ」

「それはこちらの台詞だ。リーリアの苦しみの半分もまだ与えていない……楽に死ねると思うなよ……」

「……なぜだ……私は強くなった! ……人魔獣となり完全体となったはずだ……」

「エルサリオス……お前、勘違いしてないか?」

「なんだ……と!?」


 はいつくばっているエルサリオスを踏みつけながら真実を伝えてやる。


「そもそもお前は300年前から実力はカスだった。俺が苦戦したのは竜王と勇者だけだ。お前は最後に何らかの方法で弱っている俺を封印しただけだ。だから勘違いしたのかもしれないが、実力が少し上がったところでカスはカスなんだよ」

「──っな! ふざけるな!!!」

「ふざけてるのはお前だ。うぬぼれるなよ」


 思い切り、ぞんざいに蹴飛ばす。


 エルサリオスはふらふらと立ち上がると、俺に向けて怒りの形相を向ける。


「私をこけにしやがって……もうゆるさんからな! ここ一帯全てが範囲だ……そこの娘もじじいも全て殺してやる! 後悔しても遅いからな!!」


 エルサリオスは狂気じみた笑顔になり、


「ふふふ、終わりだ! すべて壊しつくせ! ────テンペスト!!」


 強烈な嵐と稲妻が当たり一面をなぎ払う。

 それが過ぎ去った後は草一本も残らない。


 ……本来ならな。


 だが魔法は発動しなかった。


「な、何故だ!! なぜ発動しない!!!」


 エルサリオスは何度も、「テンペスト! テンペスト!」と必死に言っているが何も起こらない。


「……お前、気がついていないのか? 自身の核をよくて見てみるんだな」

「核だと!?」


 エルサリオスはスライムの形状へと変化させ、その透き通る体の中心にある核を確かめようとする。

 そして、


「な、なんなんだこれは!!!」


 核は黒い炎で覆われていた。


「この黒い炎はいったい! 貴様! 何をした!!」

「今度は俺が封印してやろうと思ってな」

「なんだと! どういうことだ!?」


 指をパチンと弾くと、黒い炎が強く燃え上がった。


「ぐああああぁぁぁぁぁ!!!!」


 再びパチンと弾くと、炎は小さくなる。


「この黒い炎はこの世のものではない。ゆえに魔力をほぼ通さない。 ……そうだな、お前が使える魔力量はすでにゴミレベルとなっている」

「なっ!?」

「気がついてなかったのか? 最初に手刀で貫いたときすでに細工しておいたんだがな……」

「あ、あの時にだと!?」

「そして、こうすることで」


 パチン


 指を弾くと同時にスライムの全身を黒い炎が包む。


「ぐががあああ」


 スライムは必死に再生するが、すぐに再生部分を燃やしてしまう。


「この炎は相手が死ぬまで消える事はない。そして魔力をほとんど使えないお前には消すすべもない。そして再生をするお前は死ぬ事もできない。 ……未来永劫、苦しみ続けろ」

「ぐああぁぁぁ!!! 消せ! 消してくれ!!! たのむ!!」

「だまれ、リーリアも苦しんだんだ……なのにお前はやめなかった。自身の犯した罪とその腐った性根を永遠に反省してろ!!」

「熱いいぃぃ! あああぁぁぁ!!! すまなかった! ゆるしてくれ!!」


 スライムは這いつくばるように何度も何度も地面に体とこすりつける。

 だが────


「ゆるさん。じゃあな」


 俺は土壁ストーンウォールで何重にもスライムを囲む。

 

 叫び苦しむ声が程なくして聞こえなくなった。

 

 

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