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239、ベアルvsうろつくもの2



「じゃあ今度は僕からいくよ」


 ミッシェルの姿が消えた。予備動作が無い行動。


「──ッ!」


 横に飛び片翼ブレードを寸前で躱す。

 あぶなかった。先ほどよりもスピードが増している。

 速すぎて目では追えないが霧の探知が役に立った。

 突っ込んできた瞬間、霧が四散するため、頭で考えるより早く体が反応してくれた。

 ミッシェルは一直線に移動をしているようで、かなり遠くまで移動したかと思ったら、ターンしてまた向かってきた。

 直線的な行動だ。

 わかっていれば避けることは容易。

 今度は危なげなく回避する。

 ミッシェルは懲りずにまた突進しようとしている。

 俺は目の前に大量の虹石球レインボーストーンボールを作り出し、ミッシェルの突進のタイミングと同時に発射した。

 虹石球がミッシェルの体を貫通し、穴ぼこだらけのミッシェルはその場でどさりと倒れる。


(手ごたえがない──これはダミーか!?)


 霧の探知が別の場所で動く何かをとらえている。

 それはカーブを描きながら移動して、既に目前へと迫っていた。


虹嵐レインボーストーム!」


 虹色の風がミッシェルを後方へと吹き飛ばす。

 その時、俺の前髪も一緒に飛んでいった。危機一髪だ。

 ミッシェルは回転しながら着地すると同時にまた高速で動き出す。

 どうやら圧倒的な速さで俺を翻弄させる作戦のようだ。

 はっきり言ってその作戦は的確で、スピードに関してはミッシェルの方が一枚上手だ。少しの気のゆるみで俺の首は飛ぶことになるだろう。

 しかも悪いことに、滅茶苦茶に動き回ってるせいか霧が散らされているのだ。

 元の状態に戻そうと思ってもミッシェルのスピードがあまりに速くてその作業が間に合っていない。

 

(不味い。霧の探知が役に立たなくなりそうだ)


 …………ならば逆に考えよう。

 ミッシェルの仕掛けるタイミングはいつなのかと。

 俺は霧の探知を張りなおす努力をしつつ、突進のタイミングを計った。


(──今だ!!!)


 霧の探知が機能しなくなった瞬間、俺は後方に向かって虹石槍レインボーストーンランスを放った。


「──ぐっ!!」


 初めてミッシェルの痛がる声を聞いた。


「捕まえたぞ──虹火炎球レインボーファイアーボール!」


 俺はさらに追撃をする。

 ミッシェルは虹の炎に包まれた。


「ぐおぉぉぉぉぉぉおおおお!!!」


 もがき苦しむミッシェル。

 虹石槍には返しがついているためミッシェルは逃げることができない。


「まだまだ熱くなるぞ! レインボーインフェルノ!」


 虹色の炎がさらに輝きを増す。

 神ですら焼き尽くす浄化の炎。

 ミッシェルに耐えられる筈もなく炭と化した。


「…………」


 何故だ。

 何故か手ごたえがない。

 確実に倒したはずなのに何かがおかしい。


「お父さん!!」

「──ッ!」


 ハッとした瞬間、俺の腕がバッサリと斬られた。

 いつの間にか目の前にミッシェルがいた。

 手には剣が握られている。


「くそっ!!」


 ダメージ覚悟で俺とミッシェルの間にゴッドフレアを発動させ、爆風によって二人の間に距離を開ける。


(ちぃ! いつの間に現れたんだ!? リーリアの声が無かったらやられていた!)


 しかし考える暇はない。

 ミッシェルは猛然と突進してきていた。

 もちろんゴッドフレア程度ではミッシェルにダメージは入っていない。

 むしろ俺にダメージが蓄積された。ただのフレアでは何の障害にもならないのは分かっていたが、さすがにゴッドフレアはやり過ぎたか。

 混乱する脳を必死で抑え、現状を把握する。


(スピードは何故か遅くなっている……だが、あの剣はなんだ)


 両腕を回復させながら距離を取りつつミッシェルを観察する。

 虹色に光る剣を持っていて、体系は若干大きくなっているようだ。そして背中の片翼は無くなっている。


(翼を剣にしているのか)


 そうとしか考えられない。

 しかしスピードといい同一の存在とは思えなかった。

 俺は一定の距離を取りつつ観察に徹していた。

 しばらくそうしていると追いつけないのが分かったのかミッシェルは動きを止める。

 そしてゆっくりと剣を両手で上段に構えた。


「スキル『光速剣』」

「なっ──」


 光の刃が俺の体を通り抜ける。

 理解するのと同時に強烈な痛みが俺を襲う。


「ぐああぁぁぁぁ!!!」


 運よく顔と心臓は回避できたが、肩口から足にかけて綺麗に真っ二つにさせられた。


「ようやく捕まえた。これなら通用するみたいだね」


(スキルだと!? 今まで温存していたというのか! くそっ! 痛みで思考が鈍る。光速剣の攻略法は──)


 この一瞬のスキがミッシェルの追撃をゆるしてしまった。


「『光速剣』」


 ミッシェルの剣が横に薙ぎ払われる。


「がッ──!!」


 もう痛いとかそういう次元は超えている。

 光速剣は俺の上半身と下半身を分断する。

 どさりと物が落ちる音がした。

 いや、落ちたのは俺自身。

 視線が真っ暗なのは地面を見ているからだ。

 もはや意識を失うのは時間の問題。

 消えゆく意識の中、力を振り絞って顔を上げる。

 視線は自然とリーリア達がいる方へ向いた。


 リーリアが必死で何かを叫んでいた。

 俺の耳にその言葉は届かなかったが、リーリアの瞳には涙が浮かんでいるのが分かった。

 ああ、くそ……また泣かせてしまった。

 俺が不甲斐ないばかりに。

 体の痛みがなんだ。

 そんなものリーリアが感じている心の痛みと比べればクソみたいなものだ。

 光速剣の攻略法など後で考えろ。

 今は心配させないように笑みを浮かべろ。

 こんなの大したことないとすぐに立ち上がり安心させるんだ!

  

「うおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」


 俺の力の限り叫んだ。

 よし、口は動く。

 なら大丈夫だ!


「レインボーヒール!!」


 体全体が虹色に輝く。

 失った部分が全て再生されていく。

 しかし、再生を待ってくれるほどミッシェルは優しくはない。再生中もミッシェルによる光速剣が俺の体を斬り刻んでいた。


「あああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 ヒールの力を全開にする。

 常にヒールを保つことによって、斬り刻まれた瞬間、俺の体は即座に再生する。


「凄いね。でもそれがいつまでもつかな?」


 ミッシェルの攻撃が速くなる。

 無数の光速剣が俺の腕を、足を、頭を、心臓を通り抜ける。

 即座に再生することによって致命傷を防いでいるのだが、同時に大量の神霊力を失っていった。


(くそっ! このままではじり貧だ!)


 ミッシェルもそれが分かっているから光速剣を連発する。

 今の俺には光速剣を躱す能力はない。

 ならば躱さずにどうにかするしかないのだ。

 

(光には──闇だ!)


 ある閃きが浮かぶ。

 上手くいくか確証はないが、それにかけるしかないだろう。


「はあああぁぁぁ!!! ブラックノヴァ!!」


 目の前に盾のようにしてブラックノヴァを展開する。

 全てを飲み込む漆黒の闇。

 その闇に光速剣が吸い込まれていく。


「よし! 光速剣を無力化したぞ!」


 あまりに嬉しくてそう言わずにはいられなかった。

 今の俺はどや顔をしている自信がある。


「……へえ。唯一の弱点がわかるなんてやるね」

「ふふ、これで形勢逆転だな」

「さてどうかな?」


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