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234、リーリアと再会



「おとうさーーーーーん!!」


 丁度、百着目の服をナルリースに着させたところで、とても聞き馴染んだ可愛い声が耳に届く。


「リーリアか!」


 手を休め声のした方を向くと、リーリアが俺の胸に飛び込んできた。


「はふはふ。お父さんの匂い」

「よしよし、階層攻略は順調だったみたいだな?」

「うん。ここのモンスター程度なら余裕だよ! ……あれ? ナルリース疲れてるみたいだけどどうしたの?

「修行を手伝ってもらってたんだ」

「ふーん、そうなんだ」


 リーリアがジト目で俺を睨む。

 これは完全に疑っているな。

 

「……本当だからな?」

「ふーん」

 

 ちなみにミッシェルは少し前からセレアの元へと行っている。

 なので俺とナルリースは二人っきりで訓練していたが本当にやましいことは何もしていないのだ。

 俺だって真剣に訓練することもあるのである。

 視線が痛いので話題を変えることにした。


「……ところでシャロは何をしているんだ?」 


 かなり後方で仰向けになって倒れている。

 距離としては大したことはないが、それでも走っていくならば1分はかかる。

 目を神霊力で強化して、やっと視覚として捉えられる距離だ。

 

「あとほんの少しだったのに、疲れた動けないーってブーブー言ってたから置いてきちゃった。徹夜で移動したから疲れたのは分かるけど、私は一秒でも早くお父さんパワーを吸収したかったからしょうがないよね?」

「お父さんパワーって……いやまあ嬉しいんだが」

「パワー吸収ーーー! うー! 元気になるー!」


 胸板に顔をぐりぐりと押し付けてくる。

 リーリアの頭を撫でながら、体をチェックしてみたが怪我とかはないようだ。それどころか服が全く汚れていない。

 苦戦どころか本当に楽勝モードでここまで進めた様だ。だからこその強行軍だったのだ。

 それに比べて倒れてるシャロを見たら服はボロボロになっていた。

 やはりシャロにとってはここは地獄のようなところなのだろう。


「偉いぞリーリア。よくぞシャロを守りながらここまで来た」

「えへへ! 褒められたー! 嬉しい!」

「ああ、リーリアは凄いぞ!」

「うん!」


 実際、かなり神経をすり切らせたに違いない。

 夜も寝ずに強行軍をしたのは心配で寝られなかったからだろう。

 リーリアの実力ならば神力の力を存分に使って警戒し、夜も十分に休憩できたはずなのだ。

 だからこそ俺も安心していたのだが、リーリアの精神が耐えられなかったのだろう。

 何かあったらどうしようというプレッシャーで押しつぶされたのだ。

 その証拠に抱きついた時はかなり強張っていた筋肉が、今はかなりほぐれてきている。俺に抱きついたことにより緊張が解かれたようだ。

 なんだかんだ言ってリーリアは子供だ。

 まだまだこういった経験は少ない。

 今回の事は良い経験になったはずだ。


「よしよし、でもそろそろシャロを迎えに行ってやろう。さすがにあそこに寝かせておくのは可哀そうだ」

「うん、パワーもらったから私が迎えにいくよ」

「いや、どうせなら一緒にいこう。新たな力を手に入れたから見せてやる」


 俺はそう言うや否や、レインボーフェニックスモードになる。

 昨日よりも巨大な虹の翼が広がった。


「す、すごいよお父さん! もしかしてこれがワープの謎なの?」

「ワープ? ああ、ナルリースを迎えに行ったときのことか。これは物凄く速いからそう見えても仕方ないな。ではいくぞ!」

「おぉ──ってはやっ! これ本当にワープしてないの?」


 シャロの元まで一瞬にして移動をした。

 距離にしては大したことがないのだが、本当に一瞬だったため瞬間移動したと思われても仕方がない。


「ああ、神霊力といってな。神力を極めるとこうなるんだ」

「凄いっお父さん! そんな力いつ手にしたの!?」

「うろつくものが使っててな。見たら使えるようになったんだ」

「えぇー!! すごい!!」


 嘘は言ってないぞ。

 実際解析したのは自分だし、見せてもらったことでわかったのも事実だ。

 リーリアにだけはカッコつけたい親心なのである。


「あのぉ~僕のこと忘れてないよねぇ?」


 シャロが口をとがらせていた。


「もちろん忘れてない。シャロもよく頑張ったな」

「ぶーなんかオマケ感が半端ないよ~」

「そんなことは無い。お前が頑張ったことは服装が証明している。生き残るために必死だったのだろう?」

「そうなんだよ~! リーちゃんと合流するまで本当に大変でもう少しで死ぬところだったよぉ」


 その台詞にリーリアもうんうんと頷く。


「ユグドラシルの中に閉じこもってたよね。モンスターにボコボコに殴られながらも必死に耐えてて」

「もう少しで神力が切れちゃうところだったんだよぉ。本当に危なかったんだから~」

「シャロはもう持ってきたポーションはすべて使っちゃったしね」

「そうなんだよ~! べーさんからもらったやつも使っちゃった! ごめんねべーさん」


 シャロは仰向けになって寝ころんだまま、俺の足を掴むとグイっと自分の顔を近づけて頬ずりしてきた。

 体が小さいこともあってかまるで猫のようである。

 可愛かったので思わず頭を撫でると、シャロはとても喜んだ。そしたら何故かリーリアも寝転んで俺の足にまとわりついてきた。うん、可愛いな!

 

「──って俺は修行しないといけないんだった」


 数分後その事実に気付く。

 これが俺の恐れていた事である。

 皆が周りにいると修行が捗らない。


「修行ってその神霊力だよね! 私も一緒にやりたい!」


 リーリアがそう言ったが俺は首を振った。


「すまないリーリア。今はお父さんだけで修行がしたいんだ」

「えー……お父さんと一緒に修行したかったのに……」


 しょんぼりとするリーリア。

 胸が締め付けられるように痛くなったが、今は大事な時なんだ……!

 この場で二人に詳しい事情を話した。

 すると二人は信じられないような顔をした。


「お父さんが勝てない相手だなんて……とても信じられないよ」

「だが事実だ。今日と明日で仕上げなければ俺達に未来はない」

「……うん、わかった。そう言う事なら仕方ないもんね。私は一人でモンスターと戦ってくる。シャロは頼んでいいよね?」

「ああ、ナルリースと一緒にいてもらう」

「うん! よーし! なんか私もじっとしてられなくなった! 戦ってくるね!!」


 リーリアはもう一度、俺に10秒間抱きついた後、モンスターを探しに出かけていった。


「いやぁリーちゃんは元気だねえ……若い証拠だよ」

「お前も十分若いだろ」

「いやいや、そんなことないよぉ~僕は身重ですから~」

「何をいってるんだお前は」

「青春ってことだよ~」


 何をいってるか全くわからない。

 シャロはシャロで遠い眼をしている。

 こいつは頭でも打ったのではないだろうか。

 心配になってシャロの頭を探るように撫でた。


「あぁ~べーさんに撫でられるの気持ちいい~」

「頭に異常はなさそうだ。まあおかしかったのは元からか」

「えー酷いー」

「さっさとナルリースの元へと戻るぞ。掴まれ」

「わかった~」 


 また一瞬にして戻り、ナルリースと合流した。

 二人は再開を喜び抱き合っている。

 

「感動の再会の途中で悪いんだが時間が惜しい。修行を再開する」


 俺がそう言うとナルリースが少しだけ嫌そうな顔をした。

 

「ナルリースどうしたの~? ってそういえば服が違うね?」

「ええ、実は──」

「──へえ~面白そう~! 僕もやってくれるの~?」


 俺は頷く。


「もちろんだ。今度は二人同時に別々の服を作る」

「すごーい!」

「だからシャロも裸になってくれ」

「うんわかった~」


 シャロはその場でボタンをはずしていく。


「……抵抗はないんだな」

「あ、もしかしてベーさんは嫌がった方が燃えた~? じゃあ、えー恥ずかしいよぉ~ベーさんのエッチー」

「いや、お前はそれでいい。恥ずかしがるのはナルリースだからこそ燃えるんだ」

「僕もそれは同意~」

「二人して私をからかわないでくださいっ!」


 こうして楽しい修行が再開された。


 ─


 夜の時間になるとリーリアが戻ってきた。


「お父さんただいま!」

「おかえりリーリア」

「わっすごい! 立派な家が建ってる!」


 俺の後方には豪邸があった。

 今日の修行の集大成として俺が作ったのだ。

 各設備はもちろん装飾にまでこだわっている。


「リーリアの部屋も作っておいたからな」

「ありがとう! でも今日はお父さんと一緒に寝たい」

「リーリアが言うならそうするか」

「うん!」


 ちなみにナルリースとシャロは疲れたのか部屋で爆睡中。ミッシェルはまだ帰ってきていない。

 俺は今日訓練した内容を反復練習していたところだった。


「リーリアの服も作っておいたから明日はこれを着ていきなさい」

「わっ! 可愛い! すごい!!」


 リーリアに似合う白を基調とした服だ。所々にレースを編んでおり女の子らしさも兼ね合わせたやつだ。


「これは……下着だよね?」

「ああ」


 もちろん下着も作った。

 これもレースを編んで作った自慢の作品だ。


「………………」


 リーリアは下着をまじまじと見つめている。

 そして俺の顔をジト目で睨んできた。

 なにか問題でもあったのだろうか?


「お父さん……なんで私のサイズを知ってるの?」


 なんだそんなことか。


「しょっちゅう抱きついてきてるだろ? それでサイズなんて簡単にわか──」

「──お父さんのエッチーーーー!!!」


 思い切り下着を投げつけられた。

 バチンと俺の顔に当たる。

 リーリアはドカドカと家の中へと入っていってしまった。


「………………女の子って難しいな」


 俺はぼそっとつぶやいた。

 もちろんその日は一人悲しく寝ることになったのだった。



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