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230、ミッシェルの好奇心





 目が覚める。

 両腕に柔らかい感触があった。

 ……ん? 両腕?

 俺はまず左側を確かめる。

 可愛い寝顔をしたナルリースが気持ちよさそうに寝ていた。

 次、右側を恐る恐る確認してみた。

 するとそこには知らない女が寝ていた。

 だが……よく見るとその女はナルリースに似ていた。

 金髪の髪にエルフの耳。整った顔立ちに可愛い寝息。

 ……あれ? むしろナルリースとまったく同じじゃないか?

 寝息も共鳴してるかのように同じ。体の形も、胸の大きさも、さらにはほくろの位置まで全く同じ。

 むしろ違うのは中身だ。魔力量が全く違う。

 ていうかこの魔力……いや神霊力は……。


「おはようベアル。驚いた?」


 まるで俺が驚くのを楽しみにしていたといった風に、急にぱちりと目を開けてニヤリと笑った。

 ああ、ナルリースが悪戯っぽい顔をするとこんな顔になるのか。

 俺は別の意味で感心していた。


「驚いたぞミッシェル……そんなこともできるのか」

「僕は一度は神を超えてるからね。人がどうやってできてるとかはわかってるんだよ」

「そうか……なるほどな」


 神霊力が神の力というのが納得できた。

 そしてその力の万能さに震えた。

 極めるという事は神になることと同位なのだと。

 

「…………んで、いつまでそうしてるつもりだ? もう十分驚いたから元に戻ったらどうだ?」


 はっきりいって今ナルリースが起きたら都合が悪い。機嫌が悪くなるどころではないだろう。


「昨日の行為に興味があるから僕にもしてくれない? その子がすごい気持ちよさそうにしてたから体験して見たくて」

「断る」

「ええ、なんで? ベアルも気持ちよさそうにしてなかった?」

「それはナルリースだからであってお前では無理だ」

「見た目は同じにしたけど?」

「中身の問題だ」

「中身? ……君より強い者はダメなの?」

「そういうことじゃない」


 そもそもコイツミッシェルに恋愛という概念がないからか話が嚙み合わない。

 ただただ興味があるからやってみたいってだけなのだ。


「人は恋をして互いに認め合って初めて行為に及ぶものなんだ。だからお前とはできないんだ」


 夜の街に遊びに行っていた俺がいうのは説得力がないのだが、こいつに納得してもらうためには仕方ない。


「恋? それはどういったものなの?」

「お前にそれを教える必要があるのか?」

「僕は神霊力を教えてあげたよ? ならベアルも僕に教えるのが道理じゃないかな?」

「…………」

「別に恋じゃなくて、昨日の行為をしてくれてもいいんだけど?」

「わかったよ……訓練をしながら説明してやる」

「うん、それでいいよ」

「じゃあ、起きるからどいてくれ」


 両腕の温もりを若干惜しく思いながらもベッドから抜け出す。

 するとそのタイミングでナルリースも目が覚めた。


「ん……ふあぁぁぁ……ベアルさんおはようございま……」


 あ、やばい。ミッシェルがまだ……。


「きゃあああぁぁぁぁぁ!!! ドッペルゲンガーがまた!!!!」


 ああそうだった。ナルリースは以前ドッペルゲンガーに捕まったんだったな。


「落ち着けナルリース。こいつはドッペルゲンガーではない」

「えっ!? でも私と同じ姿をしていますよ!!?」

「いや、こいつはだな……」


 俺は朝からとても面倒くさい説明をすることとなった。

 ナルリースは不満そうな顔をしていたがどうにか納得してくれた。


「事情は分かりました……ミッシェルさんその姿をやめてくれませんか? 裸でいられると私もいやなんですけど」

「服なら作れるよ」

「えっ!?」


 次の瞬間にはナルリースと同じ服を身に着けていた。

 あっという間の出来事であった。


「……すごい」

「服を作るなんて造作もないことだよ」


 本当に神霊力ってなんでもありなんだな。

 俺も早く極めたくなってきた。体がうずうずして仕方がない。


「──ってそうじゃなくてですね! 私と同じ姿をされるのが嫌なんです!」

「何故だ?」

「え……何故って言われても……えっと……」

「説明できないならいいよね?」

「ううぅぅぅ……ベアルさぁぁん!」


 ナルリースが俺に泣きついてきた。

 よしよし可愛い奴だ。

 本当ならこのやり取りをもっとしていたいのだが、いかんせん俺もさっさと修行がしたい。


「とりあえずお前は元の姿に戻れ。じゃないと気が散って修行ができん。恋について知りたいんだろ?」

「わかった」


 ミッシェルはあっさりと元の姿に戻った。

 その素直な様子にナルリースは何か言いたそうにしていたが、相手がミッシェルなので言葉を飲み込んだ。


「では本日の修行を始めるぞ」

 


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