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23、ホワイトアント討伐、そして鱗の価値



 フォレストエッジ西口から外に向かう。

 その際、町に入るたびにお金がかかるという旨を伝えられた。

 冒険者カードを見せれば100ゴールドだ。

 これはこの町特有の仕様で、冒険者育成の為にそうしているんだとか。

 確かに、冒険者になったばかりのGランクが、町に入るたびに500ゴールド取られていたら冒険者などやっていけないだろう。


 西口を出ると、目の前には森がある。目の前とは言ったが歩くと数分はかかるが。

 森に入ると獣道みたいなものが複数に分かれている。その一つの道を選んで進んでいっても、またすぐに分かれ道が多数あるのでこれはすぐに迷ってしまうだろう。

 一旦入り口まで戻り、最初の木に魔力の糸で結んでおく。迷ったらこれをたどって帰ればいいのだ。

 

 受付嬢は薬草採取とか簡単な依頼でホワイトアントに出会ってしまうといっていたので、そんなに奥にはいないのだろう。

 手前側を重点的に探そう。

 ……と思ってた矢先に朽ちた木を見つけた。


『リーリア』

『うん』


 リーリアは魔力探知を広げ探る。

 すると朽ちた木をたどっていった先に数匹の気配があった。

 

『5匹くらいかな?』

『油断はしないようにな』

『うん』


 気配を感じさせないようにゆっくりと移動する。

 そして気配があった場所に行くと、木をかじっているホワイトアントが見えた。


『結構大きいんだね』


 体格は大きく、長さはリーリアと同じ位だが厚みがある。小さいが強力な顎が木をいとも簡単に噛み砕いていた。

 

『木が泣いてる』

『わかるのか?』

『うん、なんとなくだけどね。悲しいって』

『そうか……じゃあ助けないとな!』

『うん!』


 リーリアはストーンランスを発動する。

 するとホワイトアントは、魔力に反応して即座にこちらへと向かってきた。


「分散させて……えいっ!!」


 ズダダダダダ!


 5本の石槍は4匹をつらぬいた。だが一匹外してしまった。


 キリィィィィィイ!


 奇妙な声を発して体を揺らすホワイトアント。

 不快な声に眉をひそめながらも外した石槍を操り、その一匹もつらぬいた。


『うるさかったね』

『リーリア!』

『────なっ!』


 突然後ろから飛び掛ってくるホワイトアント。

 鋭い口がリーリアの顔へとせまるが、それをくるりと回転して蹴りを胴体にぶちこむ。


 グギャアア!


 飛んでいったホワイトアントは木にぶつかり絶命する。

 周りを見ると数匹のホワイトアントが追加で現われていた。


『仲間呼んだんだ!』

『ああ、虫系の魔獣はこういった奴らが多いぞ』

『そうだったんだね!』


 と会話している途中も次々と襲ってくる。

 それをすべていなしながら、魔法や蹴りで倒す。


 そして終わったときには全部で13匹倒していた。


『これで終わりかな?』

『調べて見るか』


 魔力探知をさらに広げた。

 だがホワイトアントらしき反応はない。


『ふう、大丈夫そう。結構いっぱい倒せたね!』

『ああ、これはいい稼ぎだ』


 魔法で作った石のナイフで右上顎を剥ぎ取っていく。苦労したが13匹分集めた。

 帰る途中、リーリアは一本の木の前に立った。


『この木かな』

『泣いてるって分かった木か?』

『うん』


 やさしく触れるとリーリアに力が宿るのを感じた。


「ヒール」


 魔法を発動させ木を治す。みるみるうちに木は青々とした元気な姿に戻った。


『契約できたんだな』

『うん! ありがとうって思ってるっぽい』


 リーリアは付近にある朽ちた木すべてに回復魔法をかけていった。

 帰り際、木々がざわざわと揺れる。

 それが喜びの歌のように響き渡った。


 

 無事町へと帰ってきたリーリアだったが、お腹が空いたというのでギルドに行く前に露店で昨日の焼き菓子を5つほど買って食べた。よほど気に入ったんだな。

 そんな寄り道をしながらギルド内へと入る。

 すると受付嬢が急いでやってきた。

 すぐにギルド長室に行ってほしいということだった。

 向かうとそこには雁首そろえて待ってる人物が数名。


 ギルド長に鑑定した髭おやじ。それに妖精の輪舞曲フェアリーロンドの面々だ。

 テーブルを囲んで座って待っていたので、足が自然とそこへ向かう。


「嬢ちゃんおかえり、そろそろ昼だから来ると思ってたよ」

「ふぉふぉふぉ、無事にホワイトアントを倒してきたようじゃな」


 妖精の輪舞曲フェアリーロンドの面々はそれぞれ、「おかえりなさい」「やっほ~」「あたしの横に座るにゃ」とリーリアを迎えてくれた。

 素直に「うん」というとジェラの横の椅子に座った。


「んで、ホワイトアントはどうじゃった? 何匹くらいいたかの?」

「13匹倒したよ」


 じゃらと袋から上顎を取り出すとテーブルに広げた。


「さすがリーリアだにゃ」


 ジェラがわしゃわしゃと頭を撫でて褒めてくれる。

 だろう? 俺のリーリアはすごいんだ。

 

「さすがじゃのう……ところで木はどれくらいやられていた? あとで治さないといけないのう」

「いっぱいやられてたけど、もう治したよ」

「ほう、木の精霊とも契約しておったのか?」

「ううん、さっき契約したの」

「それはすごいのう! 木の精霊と契約できるなんてエルフ以外では珍しいんじゃよ」

「そうなの?」


 ナルリースを見る。

 一瞬驚いたが、すぐに「ええ、本当よ」と笑顔で返してくれた。

 リーリアはその返しで少しほっと安心した。


「さて、じゃあ本題に入ろう……の前に一つ質問したいことがあるのじゃが」


 打って変わって真剣な面持ちとなる。


「リヴァイアサンの鱗はまだ取ってくる事は可能なのかのう?」


 すべてを覗くような瞳にリーリアは飲まれそうになる。

 ……これは俺に質問しているな。

 きっと、これからリヴァイアサンの鱗をどれくらい持ってくるかによって価値を決め、鱗を何に使うか決めるのだろう。

 だが俺はもう持ってくる気はない。あくまでお金を稼ぐ手段がなかったから鱗を利用したにすぎない。

 なので、俺の返答は決まっている。


『偶然に拾ったものだから、もう取ってこれないっていうんだ』

『う、うん』


「偶然に拾ったからもう取ってこれないよ」

「そうかそうか。じゃったら高額で買い取ろう」


 ディランの表情は笑顔に変わる。

 

 これはディランと俺の約束だ。

 それもそうだ。あとから何十枚と鱗を持ってきて売ってしまったらギルドは大損だ。市場価格も安くなってしまうからな。

 一点ものだからこその価値があるのだ。

 

「嬢ちゃん、これがリヴァイアサンの鱗の価値だ」


 じゃらじゃらじゃら……。


 テーブルに大金貨が無造作に置かれる。

 ええと、1,2,3…………15枚だと!?

 大金貨一枚で10万ゴールドだ。てことは150万ゴールドということになる。

 あまりの金額に驚くリーリア。


「本当に貴重な素材なんだ。武器でも盾でも物凄い効果を発揮するだろう」


 弱い水魔法ならばかき消す事ができるのだ。盾ならばウォーターボールなんて無効化にできるし、武器としても弾いたりできるかもしれない。まあ使う人の技量にもよるが。

 冒険者なら使って然るべきなのかもしれないが、俺達はお金が欲しいのである。


 俺とリーリアは売ることに何の躊躇ためらいもなく承諾した。

 最悪、武器とかを作りたくなったらこの町ではないどこかで、直接鍛冶屋に持ち込むとしよう。

 まあ、リーリアにリヴァイアサンの装備をさせるのは何となく嫌なのでさせないけどな。リヴァイアサンがドヤ顔するのが目に浮かぶ。


「商談成立! じゃあ俺は戻るぜ」


 ぺこリとディランに頭を下げると髭おやじは出て行った。

 ドアの向こうから、「ひゃっほうこの鱗をながめて酒が3杯飲めるぜー」と騒いでいたのは微笑ましい限りである。仕事しろや。


 そして沈黙が訪れる。

 妖精の輪舞曲フェアリーロンドの面々がいるということはまだ話が何かしらあるのだろう。

 こほんと咳払いが一つ。


「わしもでていくかのう。ここはしばらく使っていいぞ」


 そう言ってディランも出て行った。

 なんだ? 出て行く必要あったのか?

 

 廊下を歩く足音が聞こえなく頃、ふと三人を見たらもじもじとしていた。

 というかナルリースがそわそわしていたのを二人が何かを足すように「ほらほら」と肩を叩いている。

 すると決心したのか真っ直ぐリーリアに向き直ると姿勢を正す。

 そして、こう言った。



「リーリア! 私をあなたのお父さんの弟子にしてほしいの」


 

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